これまで私は、吹奏楽のジャンルの作品は、例えばスーザの行進曲のようなものを除いては、ほとんど聴いたことがなかった。唯一、ひじょうに好きな曲として、ホルストの「吹奏楽のための組曲第1番」が例外的にあっただけだ(対位法が快感!)
ところが、次男が中学生になって吹奏楽部に入ってから、その発表会(演奏会というべきか)に「親の務め」として何度か「ご臨席」するようになって、これまで聴いたことのないような吹奏楽のためのオリジナル曲を知ることになった。
考えてみれば、この世界、新しい作品が次々と生まれているジャンルなのだろう。いくつもの団体が出場するコンクールになると、演目にはクラシックの編曲モノに負けないくらいのオリジナル曲が並んでいる。
私はクラシック音楽の中でも、ゲンダイオンガクが好きな方だから最近作曲されたであろうオリジナル作品にさほど抵抗感はないが、ご子息・ご令嬢が吹奏楽団に所属していて、今日は晴れ舞台ということで「見学」に来た親御さんたちの多くは、ステージ上の我が子とその他大勢のメンバーが吹き出したとたんに、「なんざんすの、この騒音のような音楽は?」なんて思っているに違いない。決して耳に心地よい曲ばかりではないから。
私も最初は「クラシックの名曲のアレンジものの方が聴衆のウケも良いだろうし、吹くほうも楽しいのではないだろうか」と思ったのだが、やってるほうはそういう軟弱な思いはないらしい。それに審査されるとなると、チャレンジ度も重要な要素になるのだろう。
もっとも、指導者が自分の好きな作曲家のものばかり取り上げるので、部員たちが閉口しているケースも少なからずあるらしい。
先日もしょうがないから、札幌地区予選・中学生の部のコンクールをキタラに聴きにいった。
感心するのはステージの入れ替えの速さ!みんな明日にでも引越し屋のバイトを機敏にこなせそうだ。若者がきびきびと動き回る姿は良いものだ。
我が子はホルンを吹いているが、ホルンという楽器は音がひっくり返りやすい。そのことは、過去のオーケストラ・コンサートでも十分に私は承知している(昔、札響定期でブルックナーの4番をやったときに、第2楽章でホルンの音が出なくなり静寂に包まれたときは、心からホルニストに同情した)。そういうわけで、冷静さを装いながらも、息子が息の長いソロの旋律を吹いている時には、「なんとかひっくり返らないでくれ。お前は酸欠でひっくり返ってもいいから、音だけはひっくり返さないでくれ!」と祈った。なんて良い父親なのだろう!自分でも感心してしまう。
幸いソロを含め、ホルン・パートは大きなミスもなく演奏終了。
帰宅した息子をさりげなく褒めてやろうと思ったら、審査員の講評でホルン・パートがずいぶん褒められたと、すっかり顔が天狗である。まったく、これだからダメだ。いろいろな教育方針があるだろうが、次男に関しては「褒めて伸ばす」というのは適していない。すぐに調子にのる。私には似ていない。
なお、団体の成績としては金賞を逃した。
親としては、もうそろそろ高校受験に向けてお勉強をして欲しかったから、正直ほっとした。でも、その後も相変わらず勉強はしていないという事実が確認されている。
ところで、今回息子のいる中学の吹奏楽部が取り上げた曲名だが……忘れてしまった。曲名の断片は解るが……。確か新しい曲と言っていた。山野楽器でCDが出てないか探してみよう……。
ついでにいうと、高校生の長男は天狗になりやすい次男とは対照的。しかし、音楽は「いま流行り」の、お父様にはわからないものを好んでいるようだ。
宮部みゆきの「模倣犯」を読み終えた。最後は終わりに向けて急いでたたみかけすぎじゃないか?