
昨日のことだ。
どっちに向かっていようと関係ないといえば関係ないのだが、私はチカホをサツエキから大通方向に向かって歩いていた。
チカホはそこそこの人通りだった。みんな陽に当たらないでビタミンD不足にならないのか憂慮するところである。
向かいから上品な感じの、そしてややかわいらしい20歳代と思われる女性が歩いてきた。
その女性は私を見るなり、笑った。
その笑いはスマイルではなかった。思わず笑いをこらえられないという感じだった。ニコリではなく、“うふっ、ニヤリ”ってものだ。
思いがけずすごいハンサムな人が向かいから歩いてきて喜びを隠し切れない。そんなものでは全然なかった。
私はすぐに疑った。
ズボン中央部の“窓”が開放状態になっているのではと。
瞬時にして、さりげなくズボンを上げる振りをして確認するが、YKKはしっかりとかみ合っていた。
その間に、もう彼女は私の背後へと歩き去っていた。
私はなぜ笑われたのだろう。
頭の上を触ってみる。髪は山姥状態になっていないようだし、知らないうちに鳩がとまっているということおなかった。
彼女は私を見て笑ったのではなく、私の後ろを歩いている人を見て笑ったのだ。
そう思うことにした。
間違えたらそれこそ笑い者に……
simile。

音楽用語で、“前の小節と同様に”という意味だ。
例えば、サティの「ジムノペディ」では“ペダルを使え”という指示に続き出てくる。
演奏中にいきなりにやける奏者がいたら、指示を間違って演奏していると思って間違いない。