§3. 気づき。崩れゆく確信。 

 私はこれまで、生命保険に入るとするならば、最大手のニッセ4ddd2753.jpg イ以外は考えたことがなかった。

 特に外資系の生保は、ソニー生命に加入していた知人がトラブルにあったことを耳にしてから(セールスの説明がきちんとしていなかったのだ)、信用できないと考えていた(こんなことを書いていたら、11月16日付け日経新聞の夕刊にアリコの「広告不当表示」の記事が出ていた。「元気によくばり保険」についてだった。それにしても「元気によくばり」って、嫌われ爺さんみたいだ)。
 私自身は社会人になって最初に加入したのが共済。数年後に、より充実した内容の第一生命に替えた。妻も第一生命のものに入った。しかし、その後の担当セールスレディ(ぬらりひょんのような風貌のオバサンだった)の説明がいまひとつ頼りにならなかったので、何年か後にニッセイに替えた。もう退社してしまったが、そのニッセイのセールスレディは良い意味で「やり手」だった。保険に関しては知らないことはないというくらいであった。
 私は妻の第一生命の保険もニッセイに替えようかと思ったが、この人は「これはとても内容がいい保険ですよ。ニッセイに入りなおしても、今の商品では同じような保険料ではここまで網羅できません。そのまま入り続けた方がいいです」とアドバイスしてくれた。

 

 さて、一つのことが気になりだすと病的にこだわる妻は、独自に作戦を開始した。
 第一生命をやめるやめないは別として、最初にがん保険の加入を検討した。どっちにしろ、加入している第一生命の保険にはがんの特約がついていなかったからだ。「これから先、がんへの備えをしていないようでは不安だ」と言っていた。私が思うに、彼女にはがんだって寄り付かないと思うが……。
 アフラックのがん保険を検討し、どういう道筋か知らないが、どこかの保険取扱代理店を呼びつけ加入した(インターネットで調べたらしい。昔はパソコンに触れなかった妻は、“OCN光”に替えてから、さかんにネットをやるようになった。自分は行動が鈍いのに(下手に買い物に付き合わされると、永遠とも思われる待機を強いられる)、ネットにはスピードを要求するのだ。“OCN光”についての詳しいことは右のバナーをクリック!)。最もシンプルなタイプで、掛け金は月3,000円にもならない。保険料は死ぬまで払い続けるタイプである。どうやらがん保険には、途中の何歳になったら払い込み満了というものはないらしい。


 一方、第一生命が最初に自宅に訪問して来た数日後に、ニッセイも我が家に保険の内容確認と説明に来た。私の保険である。
 妻が言うには「第一と違ってとても丁重に質問に答えてくれ、感じが良かった」という。
 私が加入している保険については、今の保障は十分なものだが一生涯部分がずいぶん低いですね、と必ずしも完璧だとは言ってくれなかったようだ。しかも、5年後の更新時期には保険料が45,000円以上になって負担が大きいことにも頷いていたという(そうだそうだ!もし自分が入ったとしたら、と考えてみてほしい)。こちらが頼んだわけではないが、後日、新しい商品からプランニングしてくると言って帰ったそうだ。
 その話を聞いても、まだ私は自分の保険を見直す必要はないと、頑固な耄碌爺のように考えていた。しかも、保険証書を入れる立派なケースを置いていったというのだ。どうしてニッセイを裏切ることができるというのだろう!(あぁ、ものに弱い私)。


 たまたま休みをとって自宅に帰ったとき、妻は私に言った。
 「あさっての日曜日、保険の相談に行きたいの。私の医療保険と、それからあなたの保険。あなたのもこのままじゃとっても払えなくなるわよ。いや、そうなったら払わないから」
 有無を言わさず、妻は保険相談窓口に行くことを私に命令した。それは市内の大きなショッピングセンター内にブースを構えている保険代理店で、いろいろな保険会社の商品を扱っている(妻がインターネットで調べ上げた)。つまり、何社もの保険を比較することができる。加入を強要することもないらしい。すでに予約もしてあった。私としては自宅に来てもらったほうが楽だったのだが、仕方ない。ふだんはドン臭いのに、金がらみになると妙に妻は段取りがいい。私が死んだときなど、きっと自ら葬式の会計係をかって出るのではないかと思ってしまう。

 妻は自分の医療保険について、がん保険に加入したときにアフラックの商品(エバー)も良いと思ったが、パンフレットで比較するとオリックス生命の方が保障内容と掛け金の兼ね合いが、我が家の家計には良いような気がすると言う。私はすでにどーでもいい感覚、麻痺状態。


 ところで、ニッセイもすでに新しいプランを持ってきていた。
 新しいプランについて細かくは書かないが、死亡保障は3,000万円、終身保険が200万円、入院特約は一生涯保障で日額10,000円(さらにがん起因の病気入院なら+5,000円。これも一生涯保障)というものである。月々の掛金は39,000円弱。
 入院の一生涯保障というのはこれまでの保険になかったもので賞賛に値する。でも、おいおい!今の我が家に、この私だけの保険にこんなにかけられる金はないよ。それは経済的観念に乏しい(他のすべてのことにおいては完璧なのに)私にでも解る。
 そしてこの保険もやはり更新タイプで、60歳で更新。そのときの保険料は月77,000円強になる。そんなの払えない。それほどの金銭的価値などないと、私は毎日罵られ続けるだろう。「頼むから病気になってくれ」と言われかねない。もちろん、死亡保障は72歳の払い込み満了時に消滅する。
 ニッセイや第一には、なぜこういう更新型しかないのだろう。そして、死亡保障や医療保障がすべてパッケージになっている。一方、アフラックやオリックスなどは、非更新型・非パッケージ型であることがわかった。
 ニッセイの新しいプランは検討のテーブルにも乗せられなかった(我が家にテーブルがないということではない)。
 では、今のニッセイの保険が更新時を迎えたときに、死亡保障を下げたら保険料は下がるのだろうか?
 今回の訪問説明の資料には、現行の保険の保障ごとの掛け金額が載っていた。更新後は保険料が2倍ちょっとになるので、そこから大まかに計算すると更新後の保険料約45,000円のうち、死亡保障(三大疾病特約の死亡保障なども含む)4,000万ほどの掛け金は、27,000円ほどになる。つまり、死亡保障をゼロにしたとしても、月々の保険料は20,000円になるのだ。これは現実的な選択ではない。保障を落として継続するという私のかねてからの主張は、現実的にはかなり難しいことがわかった。

 私は初めて絶対と思っていた自分の保険への確信が揺らいだ……
 いや、保険も人生のステージに合わせて替えていかなくてはならないものなのだと知った。いま入っている保険が、一生そのままで良いという性質のものではないのだ。オムツからパンツ、トランクスにふんどしというように、年とともに切り替えていかなくてはならないものだ。
 これまでと違って、もう「ふんどし世代」の保険にしなくてはならないようだ。
 妻に負けたような気がした。屈辱感に襲われた。

 

 テーブルの隅には、がん保険に入ったときにもらったという、小さなアヒルのぬいぐるみが置いてあった。背中を押すと「よーく考えよう、お金は大事だよ~。アフラック」とCFと同じ歌声が出る。
 「う~ん。本腰を入れて検討しよう。またアヒルがもらえるかも知れないし」と、私が決意した瞬間であった(ホントにものに弱い私。だが、それだけではない。アフラックのCFに宮崎あおいが出ているのも大きな要因であった)。                To be continued.


 ※写真は本文とはまったく関係ありません。何となく彩りのために載せました。パット・オースティンというバラです。