リムスキー=コルサコフ(1844-1908)の組曲「クリスマス・イヴ」は、1903年に作曲者による同名の歌劇から編曲したもので、歌劇そのものは1895年に初演されている。
 この歌劇はチャイコフスキーの歌劇「チェレヴィツキ(小さい靴)」(1885初演)と同じ物語で、台本のもとになっているのはゴーゴリの「ディカーニカ近郷物語」というものである。物語の筋は「オクサーナから女王様と同じ靴を持ってきたら結婚すると言われたヴァクーラが、悪魔の助けを借りて大公の宮殿で靴をもらう」というもの(この書きっぷりから、私がそのチャイコフスキーの曲やリムスキー=コルサコフの歌劇そのものをまったく知らないことが白日の下にさらされる)。
 それがどのようにクリスマス・イヴと結びつくのか私は知らないが(曲を知らないのだから当たり前←秘技「開き直り」)、とにかくあと6日でクリスマス・イヴである(←妙技「すり替え」)。
 リムスキー=コルサコフのこの歌劇も、そして組曲の方もマイナーな存在であるが、この組曲、魅力あふれる旋律に満ちている。さらにそれは、R=コルサコフの色彩豊かな管弦楽法によってじゅうぶんに楽しめる作品となっている。ただし「シェエラザード」のような重厚さはない。そのあたりが「名曲」と成りえないところなのだろうが、躍動感あふれる音楽からしっとりとした音楽まで、絵巻物を見るかのように音楽場面が繰り広げられていく(私は実際のところ本物の絵巻物というのを見たことはないが……)。終わりの曲ではロシア国歌が題材となって出てくる(チャイコフスキーの序曲「1812年」で冒頭に登場する旋律である)。

 作曲者自身が組曲化したわけだが、私がこれまで聴いた3種の演奏は、どうしたことかいずれも曲の数が違う。参考までに記しておくとその3種とは、①アンセルメ/スイス・ロマンド管弦楽団、②Maga/Bochum交響楽団、③ゴロフスチン/モスクワ交響楽団である。おそらくは指揮者によって割愛などがなされるのだろう。
 私がこの曲を最初に知った演奏は①のアンセルメ盤だったが、現在は廃盤となっている。②のCDはVOXBOXのもので音が良くないし、たぶんこれももう売っていない。
 ということで、お薦めは消去法により③のゴロフスチン指揮6a94a02a.jpg モスクワ響のCD。ナクソスの8.553789(1996年録音)。この「クリスマス・イヴ」では9曲が収められている。右のタワーレコードのオンラインショップで購入でき、価格は1,190円。
 このCDには他に「ムラダ」から「トリグラフ山の一夜」(この曲も魅力あふれる作品。この曲と「クリスマス・イヴ」ではオーケストレーションにおけるフルートの活躍が目立つ)などが収められている。
 タワーレコードのページを観ていると、この作品のCDでは他に、ヤルヴィ/スコティッシュ・ナショナルo(シャンドスCHN10369)やバケルス/マレーシアpo(BIS 1577)なんかもでている。輸入盤ではそこそこの品揃えになっているということか。それと、マレーシアのクリスマスってどんな感じなのだろう?

 イヴちゃん……(←まったく本文と関係のない独り言)

§

 ところで食品偽装事件が相次いでいるせいか、今年のクリスマス・ケーキは例年のような作りだめの動きがないらしい。以前なら、大手菓子メーカーはスポンジ台を大量に作っておいて冷凍保管し、クリスマス直前や当日にデコレーションしていたのは周知のこと(小さなケーキ屋さんは違うけど)。それが、いまや何か起きたら大変とばかり(あるいはそんな悪いイメージを払拭したくて)そういうことはしていないらしい(相変わらずやっているところもあるんだろうけど)。
 ということは、当日にたたき売りしているケーキなんかも見かけなくなるかも知れない。
 夕方あたりに店先で大量生産のケーキを山積みして売りさばいていた光景の方が異常だったんだろうけどね。