小方厚著「音律と音階の科学―ドレミ…はどのようにして生 まれたか―」。講談社のブルーバックスのシリーズ。
ブルーバックスのシリーズは高校、大学のときにずいぶんと読んだ。一応、理科系の私だったので、このシリーズのコンセプト「科学をあなたのポケットに」ではないが、興味があるテーマのものを次々と読んだ(次々って、ちょっとオーバーか……。ぼちぼち読んだが正しい)。「怪談の科学」とか「超常現象の科学」とかが主体だったけど。
著者の小方氏の専門はビーム物理だそうだ。ビーム物理という分野自体、私にはちっとも知らない世界。ゴジラが出てきたときに、自衛隊が攻撃用に使う光線の研究みたいなものかなと思ってしまう。
「まえがき」には、音楽と数学・物理学の関係の深さに触れたあと、《今回はブルーバックス編集部の注文によって、数式は全部削除されてしまったのは残念である》と書かれている。
これは真っ赤なウソである。著者は物理学者のくせに被害者意識が強い、あるいは大げさだ。物理学者たるものは、そんなことで愚痴を言ってはならない。ある日突然、世の中のすべての摩擦係数がゼロになっても、悠然と構えながら滑りまくるくらいの尊厳さが欲しい。私は特に物理学者の生態に詳しいわけではないけど(理科系といっても私は生物だったもん)。
というのも、けっこう数式は出てくるのだ。もっとも、x,y,zが威張りくさっている方程式とか、logとか∫なんかは出てこないから、著者にしてみれば本書に掲載してある分数式なんかは数式のうちに入らないのかも知れない。12乗根はあったけど。
本書では純正律とピタゴラス音律、そして現在広く一般的に使われている平均律が生まれた経緯や、問題点をわかりやすく解説してくれている。
とはいえ、やはり数学的というか物理学的というか、その視点からの説明は避けて通れない。避けて通れないのは解るが、そのあたりになると読んでいてけっこう挫折しかけてしまった(難しいのではなくて、どうでもいいやって感じで)。
でも数字を見せられることによって、初めて「へぇ~」と思うこともけっこうあった。まあ、数字を示されるっていうのは、どんなときでも説得力があるものだ。
私は70%ぐらいしか熱中できなかったが、音楽理論書のように無味乾燥に記述されているわけではないので(音楽理論書にワクワクする人もいるんだろうけど)、私よりももう少し忍耐強い人なら、きっと全編を通じて楽しんで読めると思う。特にジャズの事例が多いので、ジャズが好きな人は特に興味深く読めるかも。それとも、「そんなんどーでもいい。ジャズは即興だぁ」って言うのかもしれないけど(でも、その即興のルールが書かれている)。
私にはドビュッシーの「全音音階」(全音階ではない)の話と、12音音楽の話、そしてバッハの平均律クラヴィーア曲集は平均律用に作曲されたわけではない(らしい)という話が興味深かった。知っているつもりで、やっぱり知らなかったことがたくさんあるということも確認できた。
まあ、音楽理論を学ぶつもりはないけど、知ってて損することはないと思うから。
ただ、私の欠点はすぐに忘れること。これは自信をもって言える。
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バッハの平均律クラヴィーア曲集と言えば、昔NHK-FMで日曜日の朝に放送されていた「名演奏家の時間」という番組のオープニングで、この曲集の第24番ロ短調BWV.869の冒頭が使われていた(と記憶している)。
といっても、ふつうのように音楽が流れるのではなく、アナウンサーが時報のあと唐突に、「これからステレオ放送受信のためのテストを行ないます」みたいなことを、さも厳粛そうに言って、この曲のリコーダー編曲版が流れるのである。最初に向かって左側のチャンネルから、続いて右から。そのあと、弦楽合奏でその両チャンネルから音が「ステレオ」で流れるのである。右の頬をぶたれたなら、ついでに左の頬も出しなさい。最後は顔面強打よ、って感じだ。
まだ、ステレオ放送が一般的でなかったのだろう、あの頃は。あのもったいぶったアナウンスがけっこう快感だったなぁ。
まあ、私のラジカセからは右も左も関係なく、一個のスピーカーから全部が出ていたわけだけど。
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日曜日にラディゲの「肉体の悪魔」について書いたら、これまでないくらいの反響があった。
どんな反響かって?
トラックバックの数がすごいの(いきなり主婦的語尾)。予想はしていたけど、これほどとは……
「人妻××」「○○人妻」……。あんまり書くと、あたかも奥多摩山中で電球を1個だけつけたときに寄って来る蛾のように、またキーワードからトラックバックされるから書かないけど、なかには感心しちゃうネーミングもあった。すごいなぁ。H産業は元気だ。
お金があれば、それを持って私も元気になりに行きたいなぁ。
