シュニトケの交響曲第1番(1969-72)は、親しみやすいような、さっぱり解らないようなごった煮的な作品だ。

 鐘の響きからはじまり、なんだかドヨーンとしてよく解らない第1楽章。退屈だなぁと思っていると、ベートーヴェンの交響曲第5番の第4楽章冒頭なんかが出てきて、「おぉ、ドイツの伝統音楽的響き!なんて耳になじむのだろう!」と郷愁を覚えさせてくれる。

 第2楽章の前半(というか、最初の4分半くらい)は、めちゃめちゃ楽しい。わくわくする。
 軽快な行進、あるいは踊りだ。
 私はこの部分を聴いていると、サーカス小屋の中で象が見事な演技を披露している光景を想像してしまう。サーカスで象なんて見た経験なんてないが、想像してしまう。
 でも、その象は言うことを聞かなくなって、ピエロたちを追い回すのだ。だんだん凶暴になって、笑っていた観客たちも逃げ惑うのだ。
 パォ~、パォ~、パォォォォォ~ッ!
 象の演技の後で、上半身裸になり、超重量級の鉄の玉を持ち上げるサーカスを披露する予定だった、その名も「怪力ボリス」だって歯が立たないのだ。ボリスもワーワー言いながら逃げる。
 この音楽はそんな場面を想像させる(私には)。すっごくよい曲(部分)だ。
 そのあとは、いきなりチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番が現れたりして(ここはアドリブのようで、CDによって音楽が違う)、うそっぽい深遠さみたいな音楽になる。そのため「あれあれ象さんはどこに行っちゃったの、ママ?」って、子供心を不安にさせるが、最後にまたリズムが刻まれ、フニャァっと終る。

 第3楽章、第4楽章も重いんだけど真剣でないような音楽。
 これを生で聴いたら楽しそうだ。あるいは、早く終ら2524d324.jpgないかなという観念に取り付かれそうだ。

 シュニトケの作品は多様主義とかなんとか言われているが、この曲ももちろんそう。
 でも、「象の行進」の部分がいちばん彼の特徴が現れているように思う。

 写真のCDはロジェストヴェンスキーがロシア国立響を振っ たもの。1988年録音。シャンドスのCHAN9417(輸入盤)。録音が少し悪いが、「象の行進」が元気で(凶暴で)楽しい。残念ながら廃盤のよう。
 他にはセーゲルスタムがロイヤル・ストックホルムpoを振ったCDがある(おそらくこれも廃盤だけど)。BISのCD577で1992年の録音。こちらは録音は良いが、ちょっと優等生的な演奏。
 この2種のCDでは、第2楽章のアドリブ部分はまったく別な音楽になっている。

 サーカス……
 昔、札幌の中島公園に「ボリショイ・サーカス」が来て、私も見に行った。
 あのときの「怪力ボリス」、今は何やってんだろう……Amen