ショスタコーヴィチの「ニュー・バビロン」Op.18。日本語に訳せば「新バビロン」。訳す必然性はないか……。

 この作品は、G.M.コジンツェフとY.トラウベルグの共同監督による無声映画「ニュー・バビロン」のために書かれたものである。作曲年は1928年から29年にかけてで、ショスタコーヴィチが22歳の頃ということになる。

 タイトルの「ニュー・バビロン」はパリのデパートの名前で(変な名前……)、映画のあらすじは、このデパートで働く少女がパリ-コミューンの戦士として処刑され、政府軍にいた恋人がプロレタリア意識に目ざめるというもの。
 何か時代を感じるなぁ。コミューンだって。これは自治行政区のこと。すでに死語か?
 で、どうして戦士の処刑によって恋人がプロレタリア(無産者、賃金労働者)意識に目ざめるのかも、よく解りません、私。
 それに戦士なんて聞くと、私は美少女戦士「セーラームーン」を想像しちゃうなぁ。「月に代わっておしおきョ!」。

 この筋を読んで私が疑問に思うのは、この少女はいったい何売場で働いていたのかということ。だって、真の姿は“戦士”なんだぜ。とても地下1階の饅頭売場にいるとは考えにくい。

 いつもいつも昔の話で恐縮だが(真剣にそうは思っていないけど)、今から30年くらい前にこの曲のLPが初めて発売された。
 そのときに「レコード芸術」誌に載っていた広告には、某音楽評論家が(名前を伏せているのではなく、単に忘却)「ニュー・バビロンのレコードが出ると聞いて驚いた。実際に聴いてみてもっとたまげた」みたいなメッセージを寄せていた(あくまでイメージ表現)。
 このセールス・コピーに引っかかった素直な私は、すぐにLPを購入した。この演奏はロジェストヴェンスキーが改訂・抜粋したもので、LP1枚に収まっていた。

 確かになかなか新鮮な音楽で、おもしろい。けど世の中には、たまげることがほかにもっとあるんじゃないか、とは感じた。
 音楽そのものは、若きショスタコーヴィチの作品に共通9a4ae35b.jpg する活き活きとしたもの。「天国と地獄」の引用があったり、童謡「赤い靴」にそっくりな旋律が出てきたりして、楽しめる。

 私が持っているCDは、全曲盤でジャッド指揮ベルリン放送交響楽団の演奏のもの(1989年録音。カプリッチョ10 341~342。輸入盤)。このCDは現在販売されていないようだが、同じ音源はカプリッチョの「ショスタコーヴィチ映画音楽集」に収められていて、今でも販売されている(カプリッチョ49533(7枚組。輸入盤)。タワーレコードのネットショップで6,500円)。

 映画のための音楽なので、曲だけを全曲聴きとおすにはちょっと辛いものもあるが、聴いてみたら、もしかするとあなたも「おったまげる」かも知れない。保証はまったくしないけど。