ヤナーチェク(1854-1928)の「シンフォニエッタ」(1926)。
 私がクラシック音楽を聴くようになってから半年ほど経ったときだったろうか。NHK-TVで放映されたN響によるこの演奏、オーケストラの後ろにずらりと並んだトランペット群を観て、「すごいなぁ。なんかゴージャス」って思ったものだ。そのとき、曲そのものはまったく頭に残らなかったけど。

 ヤナーチェクはモラヴィアの国民主義を代表する作曲家。その音楽は他のどの作曲家とも異なる独自の響きを持っている。彼はムソルグスキーに深く傾倒したという。
 私が初めて「シンフォニエッタ」を生で聴いたのは、岩城宏之指揮による札響の定期演奏会。
 ところがどっこい、12本のトランペットが居ない!どういうアレンジか知らないが、オケ本体の中のトランペットですべてまとめあげられてしまった。がっかり……。

 その後も私は似たような経験をした。
 それは大学の学食でチャーシューメンを頼んだら、善良そうな調理のおばちゃんが、「ごめんね。今日はもうチャーシュー切れちゃったの」と言いながら、プレスハムを5枚トッピングしたラーメンを出された経験だ。この衝撃、困惑、落胆、失望、屈辱は、ラッパ隊のいない「シンフォニエッタ」を目にしたときに似ている(しかも“プレスハム”ですよ!)。
 実際その「シンフォニエッタ」を耳にしても全然良くなかったし、「プレスハムラーメン」を口にしても、やっぱり全然良くなかった。当たり前だけど。

 その後、札響では正しい編成の「シンフォニエッタ」を聴くことができた。確か指揮は秋山和慶だったと思う。12本のトランペットが整列している本来の編成であったという圧倒感とは別に、演奏自体すばらしいものだった(このステージはNHKで全国放送されたはずだ)。

 この作品の第1楽章は、ソコルの第8回全国大会の開会ファンファーレとして書かれたものである(その大会がどういうものだったのかを私に尋ね48a4bc7a.jpg るのは、罪というものだ)。その後、5楽章からなる「シンフォニエッタ」となったわけだが、12本の金管群は第1楽章と第5楽章のみに加わる。オーケストラ本体のみによる中間の3つの楽章も、民俗色にあふれた魅力的なものだ。 

 今回紹介するCDはノイマン指揮チェコpoのもの。スプラフォンのCOCO70411。1982年録音。初出のときは「レコード芸術」誌の特選盤に選ばれた演奏である。タワーレコードではオンライン・セール中で945円。
 私がもう一つ好きな演奏は、クーベリック指揮バイエルン放送響のもの。ノイマンよりも土臭いところがなかなか良い。ミミズが間違って寄ってきそうだ。1971年録音でグラモフォンUCCG3961。