ストラヴィンスキーの「兵士の物語」(1918)。2部から成る「語られ、演じられ、踊られる物語」である。
 一人の兵士が故郷に帰る道の途中で悪魔に会う。この悪魔によって一度は幸福をつかむが、最後に悪魔の呪いによって連れ去られてしまうという物語である。
 台本はスイスの文学者C.F.ラミュによるが、その元になっているのはアファナシエフのロシア民話「脱走兵と悪魔」である。この民話は、ニコライ1世の時代のロシアとトルコとの戦争のときの強制徴兵の物語で、脱走した兵士とその兵士の魂を奪う悪魔の冒険を主題とする悲劇である。

 この曲は第1次世界大戦中の経済情勢を反映し、小規模な編成となっている(オーケストラは7名)。また、ストラヴィンスキーの新古典主義への移行を示す作品としても重要視されている。
 また、室内オーケストラ以外では、語り手と兵士役、悪魔役が必要とされる(舞台上演では王女役も必要らしい)。

 曲の多くの部分が語り手や兵士、悪魔の語りであり、全曲をCDの前でボーッと聴いているのはちょっとおバカというか、時間の無駄という気もしないわaae2952c.jpg けではない。しかし、やはり一度は全曲を聴いてみたいもの。
 それがどうしても耐えられないという方もご安心あれ。
 ストラヴィンスキーは1924年にヴァイオリンとクラリネット、ピアノのための組曲(5曲)を作っているし、さらには原曲と同じ編成による8曲の組曲版を作っている。

 全曲盤で、なんといっても私が推すのがブーレーズ盤。ブーレーズのあの意地クソ悪そうな表情が悪魔を連想させてgood!(冗談です)。語りのプランション、兵士役のシェロー、悪魔役のヴィテーズのそれぞれが、とっても上手い!オケはアンサンブル・アンテルコンタンポラン。1980年の録音。エラートのWPCS11544。
 と、ここまで書いておいて申し訳ありませぬが、現在廃盤中。再発売を待つべし!
 と、書いたあと調べたら、下に掲出したfamimaでは在庫があるようです。急ぐべし!価格は1,575円。

 私は浪人中にこの曲を知った(武士だったわけではありません)。
 兵士が悪魔に追い詰められていく様子を聴きながら、自分の気持ちも追い詰められていったのを思い出す……