ストラヴィンスキーのバレエ「ペトルーシュカ」。師・リムスキー=コルサコフ仕込みの、絢爛豪華な響きが快感な曲である。
この曲が初演されたのは1911年(4管)であるが、1947年に改訂され(3管)、今日では改訂版が演奏されるほうが多い。
ストーリーは「1830年代のニコライ1世統治下のペテルブルク。謝肉祭の人形芝居小屋で、バレリーナの人形に恋した人形のペトルーシュカが、ムーア人の人形に殺される」というもの。
最初に書いたが、この音楽の冒頭のきらびやかさ!
これを初めて耳にした当時の人たちは、驚きをもって迎えたことだろう。
私にはわからないことだが、この曲のある楽節にはハ長調と嬰へ長調という2つの無関係な和音が結束していて、その効果はヨーロッパの若い作曲家たちに影響を与えたという。
「2つの無関係な和音の結束」って、水の中にサラダ油が突然溶けてしまうようなものなのだろうか……。てんぷら油でもいいけど……
もう少し詳しくストーリーを述べると(和音の結束については詳しく述べることができないからです)、まず市場のにぎやかな場面で始まり、そこに人形使いが現れて、ペトルーシュカ、ムーア人、バレリーナの踊りを見せる。3人の人形は人間の息を吹き込まれ、恋愛劇が始まる(第1場)。ペトルーシュカはバレリーナの気を惹こうとするが失敗し、自分の醜さを呪う(第2場)。ペトルーシュカは、彼女とムーア人の愛の場面を目撃して嫉妬し、妨害を企てるが勝ち目はない(第3場)。そして謝肉祭の喧騒が頂点に達した夜更け、ペトルーシュカはムーア人に戦いを挑むが、逆に群衆の目前で剣で切られる。人々は驚いて集まるが、死体が単なる人形とわかるとその場を立ち去る。人形使いは死体を片付けるが、ペトルーシュカの亡霊が人形芝居小屋の上に亡霊となって現れ、人形使いや群集を嘲笑し、恐怖の底に叩き込む(第4場)。こういう具合だ。
このストーリーは何か意味ありげである。
ペトルーシュカという名前が当時の大帝の愛称をもじったものだ、ということをどこかで読んだことがあるが、このバレエは政治的な風刺を含んでいるのだろうか?
ところで、私がこの曲を初めて聴いたのは、札響の定期演奏会においてであった。確か1975年。
札響がこの曲を取り上げるのはこのときが初めてで、指揮は岩城宏之。彼が札響の常任指揮者に就任した第1回目の演奏会だった。それまで札響のプログラムはドイツ音楽が主流だったのだが、この曲を耳にしながら、私は何か時代が変わるような気がした(“ませた”少年だったのだ)。
そういえば、前任の指揮者(ペーター・シュヴァルツ)が送別演奏会で振ったのが「火の鳥」。いま思えば、なんかいやらしい感じもする。「オレは先へ進むんだぜ」みたいな……
なお、送別演奏会での「火の鳥」は組曲版で、プログラムの2曲目に演奏。シュヴァルツの最後はやはりドイツ物、ベートーヴェンであった。
岩城宏之常任指揮者就任演奏会で初めて耳にした「ペトルーシュカ」だが、実のところその場では、とにかく新しい響きが次々と出てきて旋律線が よく解らなかった。耳までは“ませて”いない少年だったのだ。親しみやすいロシア民謡が引用されていたりするのにね……
私がけっこう気に入っている演奏は、インバル/フィルハーモニア管弦楽団の演奏(1990年録音)。新譜のときにすごい話題になったCDではないが、そこそこは話題になったらしい。で、私はこの演奏が好きである。録音もいい。
4管編成の1910-11年版による演奏で、テルデックWPCS21037(掲載した写真は旧盤のもの)。タワーレコードのインターネットショップで在庫あり。1,050円。カップリング曲は「春の祭典」と「花火」である。
この曲、「春の祭典」では「これでもかっ!」って続く変拍子の芽がすでに現れているのだが(芽というよりは、若木と言うべきか……)、居心地が悪い感じはまったくしない。
新館入口(2014.6.22~)
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