昨日から出張で東京に来ている(といっても今日帰るが)。
 今回はどうしても「きくかわ」と「小松庵」に寄りたいと思ってやってきた(と言っても食のルポルタージュを仕事にしているわけじゃない。単に私の欲望。仕事はちゃんとやっています。でも、腹が減っては戦はできぬ、って言うでしょ?)。

 昨日の昼は「きくかわ」日比谷店(帝国劇場地下)へ。帝国劇場のあたりには若い女性たちが大挙して待っていた。私が鰻重を食べにやって来ることをどこかで嗅ぎつけた、歓迎のための「喜び組」かと思ったら、その集団は完全に私を無視した。誰を待っていたんでしょうね?ふん!
 ここのうなぎはやっぱりおいしい。いやな臭みがない。札幌ではこういう鰻は食べられない。
 「原価高騰につき、鰻重の2尾を1尾半にさせていただきます」といった内容の貼り紙が貼られていたが、それがなんとなく微笑ましかった。それに1尾半でも私には十分なボリュームである。

 夜は、深刻ではないがかなり真面目な話を、初対面の方としながらの食事。場所は丸の内オアゾの中国料理店。
 この店は雰囲気もいいし料理も美味しい。ただ、強いて言うなら、食事をしていてもどこかくつろげる感じにあまりなれない。これは昨日の私が置かれたシリアスな状況とは関係ないだろう。以前来たときも同じように感じたからだ。私は緊張するラマ教徒のような顔をしていたかも知れない。小型マイクを装着しながら業務連絡をとりあっている店員たちに、「業務的な臭い」を感じてしまうせいかもしれない。
 でも、料理は美味しいし、一品一品のボリュームも少人数で行ってもいろいろ頼めるくらいでいい。三人くらいで中華を食べに行って二品くらい頼んだら、もうそれだけでご馳走様ってことになった経験ないです?酢豚と青椒肉絲だけで呆然。一品にそんなに盛るなよ、って。この店はそれがない。こういうメニュー作りって嬉しい。

 生真面目な話を終え先方と別れたあとに、くつろいだ気分で少し飲み直そうと、部下と一緒同じオアゾの中にある「小松庵」へ。さきほどの店でいくらあまり食べなかったとはいえ、中華のあとそば屋に寄るという気持ちは、私の国際度の高さと相関関係に……ない。どうしても、今日の昼食まで待てなかったの、私、ここのおそばが。
 「小松庵オアゾ店」は以前にもこのブログで私が紹介した店。私はここのそばがたいそうお好きであられるのである。転勤で東京を離れるときは、頼まれもしないのに、私は別れの挨拶を店長にしに行ったくらいだ(断っておくが、私はそば屋ストーカーではない)。
 昨夜は店長はいなかったが、前回挨拶できなかった女性店員さん(お名前は解らない。ここでは便宜上、庵子さんとする)は店にいた。私は庵子さんにオーダーしながら、最近のそば粉相場について二~三、言葉を交わしたが、彼女は元気そうであった(半分虚偽報告)。
 ここは一品料理の「さつま揚げ」もとてもふっくらして(私のほっぺたのように)美味しいのだが、部下が先に板わさを頼んでしまったので、練り物ダブルは無理と断念。めそめそ……
 そして仕上げにせいろそば。やっぱり美味い!
 めんの洗いがいい。
 水切りがいい。
 しゃきっとしている。
 そばの一本一本に緊張感があるって感じだ。

 目的を達成し、幸せな気分でホテルに戻った私であった。その足取りは緊張感がなかったけど……
 そば以下の私……
 
 ※「庵子さん」は文中に二回しか出てこないので、あえて仮名をつける必要はなかったかも知れない。しかも一回は命名のいい訳だ。でも、私なりにかなり考えぬいて(12秒くらい)つけた名前だからそのまま使った。小松 庵子……。すいません……