ヤナーチェク(1854-1928・チェコ)の、3曲から成る狂詩曲「タラス・ブーリバ」(1915-18)。
この作品は「シンフォニエッタ」(1926)とともにヤナーチェクの代表作であり、CDの数も彼としては多いほうだが、なかなか生で聴ける機会は少ない。
それが昨日の札響定期演奏会で取り上げられたの
で(しかもいきなりプログラムの1曲目)、会場に足を運んでみた(同様のプログラムで本日12日15時からも公演が行われる)。
CDで聴く以上にとても面白い作品だった。エコーのようにホルンが掛け合ったり、ティンパニとベルのリズムの絡み、弦楽群の旋律の受け渡しなど、CDではその効果がなかなか伝わらないものが、ステージを観ることではっきりとし、この作品の魅力をあらためて知った次第。もちろん演奏もたいへんすばらしいものだった。
指揮は、この4月に札響の首席客演指揮者に就任したラドミル・エリシュカ。
私は初めてこの指揮者を知ったが、年齢の割になかなかエネルギッシュな動きをする指揮者であった。彼はヤナーチェクの高弟ブジェチスラフ・バカラに師事したということなので、就任第1曲目として「タラス・ブーリバ」を選んだのかも知れない。
「タラス・ブーリバ」はゴーゴリの「ミールゴロド」という小説の中の「隊長ブーリバ」から題材をとったもので、ブーリバはウクライナ地方のコサックの指導者。ポーランド人と戦って英雄的な死を遂げた。ヤナーチェクはチェコが独立を果たしたのを機に、この同じスラヴ系民族の英雄を題材にした狂詩曲を書いたのであった。
狂詩曲といっても3部から成る25分ほどの大きな曲で、独特の調性というか、旋律線が印象的である。
第1部は「アンドレイの死」。アンドレイはブーリバの長男で勇敢な戦士。しかし、敵軍ポーランドの司令官の娘と恋に落ち、ブーリバに殺される。
第2部は「オスタップの死」。ブーリバの次男オスタップも戦士だが、ポーランド軍に捕らえられ拷問を受け死んでしまう。
第3部「予言とタラス・ブーリバの死」。ブーリバもついに捕らえられ、火を放たれて亡くなる。
このように「死の3部作」のような作品であるが、全体に悲愴感に満ちているというような曲ではまったくない。民俗的で特徴的な素朴な旋律とリズムで曲は進み、ときにはユーモラスさえ感じる。その響きは、あるときはとても美しいロマンチシズムに満ち、またあるときは金管の荒々しい咆哮がこだまする。
オルガンが薬味的に加わるのも効果的(私は昨日、初めてキタラのオルガンの音を耳にした)。
なお、当夜のほかのプログラムはモーツァルトのピアノ協奏曲第24番(独奏・伊藤恵)、ドヴォルザークの第6交響曲。
ドヴォルザークは所用があって私は聴けなかったが、モーツァルトの演奏も力演だった。昨日のモーツァルトを聴いていて感じたのは「モーツァルトの演奏も変わったなぁ」ということ。つまり、ピリオドではない通常のオーケストラでも、甘ったるさに陥らずにきびきびとしたピリオド風の演奏になってきたということ。これは私には好ましいことである。こういった傾向は指揮者の指示ももちろんあるのだろうが、ホールが良くなったせいもあるだろう。例えば同じような演奏を昔の北海道厚生年金会館みたいな響きの悪いホールでやったら、ブツブツと音が途切れ途切れになってしまい、曲にならなかっただろうから。
伊藤恵の独奏も、過度に力を入れない好感をもてる演
奏。第1楽章のカデンツァは私は初めて聴くものであった。
「タラス・ブーリバ」のCDでは、古くはクーベリック盤が定評ある演奏だし、ノイマン/チェコpoの演奏(スプラフォンCOCO70411)も名演である。
しかし、ここではクリスティアン・アーミング指揮ヤナーチェクpoのCDを紹介しておく。輸入盤でARTENOVAの74321 67524 2だが、現在は廃盤のよう。とてもきびきびとした歯切れのよい演奏。昨夜の札響の演奏もこちらに近い傾向の演奏だった。
先に書いたとおり、今日の15時からもB日程の演奏会がある。
プログラムが地味なせいなのか、昨夜の客席には空席が目立った。
しかし、「タラス・ブーリバ」だけでも一聴の価値あり、と私は思う。
新館入口(2014.6.22~)
御多分にもれず参加中・・・
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