私の家がある地域はもう10年以上前に売られ始めた分譲地であるが、未だに空き地が多い。よく言えば閑静な自然に恵まれた地区であるが、端的に言えば田舎である。
 そういうわけで、今の季節はヒバリが上空でピヨピヨ鳴きながら、細かく羽ばたいて空中静止している姿をよく見かける。

 「ねじまき鳥クロニクル」第3部のタイトルは「鳥刺しa7e60e44.jpg男編」というタイトルがついている。
 その61pには、「どこかに埋め込まれたスピーカーからはハイドンのカルテットが小さな音で流れていた」と書かれている。

 こう書かれているのを読むと、ハイドンの弦楽四重奏曲のなかでも、おそらくは「皇帝」(第77番)とか「ひばり」(第67番)なんかが聞こえてきてるんだろうな、と思ってしまう。どう考えても「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」(第50~56番)なんかじゃないんだろうなと考えるのが自然と言えば自然であろう。

 「やがてハイドンの曲が終わった。今度はバッハのハープシコード曲らしきもの(たぶんバッハだと思うのだが、やはり100パーセントの確信はない)が始まった」(同63p)

 これはなんとなく「ゴルトベルク変奏曲」あたりのような気もするが、“僕”はなかなかクラシック音楽に詳しいようだから「ゴルトベルク」ならすぐにわかっちゃうだろう。とすると、平均律のなかのどれかか、「前奏曲とフーガ」(BWV.894~902)なんかだったりするのかも知れない。

 「スピーカーからは匿名的な古典音楽が流れていた」(同71p)

 「匿名的な音楽」。はて、そのかわいそうな作曲家は誰なんだろう?

 で、可能性は低いと言いながらも、ハイドンの弦楽9659676b.jpg 四重奏曲「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」(前振りの「ひばり」の話はなんだったんでしょうねぇ)。
 この曲は1787年の作。もともとは1785年に作曲した同名の管弦楽作品であったが、四旬節にスペインのカディスで演奏するために注文を受け、弦楽四重奏曲に編曲したものである。
 さらにこの作品は1794年にオラトリオにも編曲されている。

 以前このブログでルジツカの「ハイドンの音響領域による変容」(1990)なる作品を紹介したが、この作品は「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」を元にしているらしい。

 で、ハイドンの弦楽四重奏曲の方のCDだが、お薦めというわけではないのだが、私が聴いているのはナクソス盤のコダーイ・カルテットによる演奏。1989年の録音。
 すいません、あんまり力が入っていなくて。
 私にとってはハイドンはちょっぴり“匿名的”な音楽なのです。