豊川悦司が主演した映画「男たちのかいた絵」(1996)。先日あらためてこの映画を観て、ふと、くだらないことを思った。
それは、自分のこと(主として振る舞いにおいて)を「私、二重人格だから」と、不都合を正当化しようとする人は少なくない、ってことである。
言われたほうも、「そっか、病気ならしょうがないな。やれやれ。大目にみるか」という風に捉える。でも実際のところは本気では受けとめてないだろう。慈悲深い表情を浮かべながらも、「なぁに言ってんだか……。単にわがままなだけだろうが。そう意味じゃ、オレだって負けないぞ」と思ってるってわけだ。
今まで見せていた表向きの“顔”が崩れ、本来の姿、つまり“地”を見せてしまったときの、「背負わされた運命」的言い訳である。そのままメッキがぼろぼろに剥がれ落ち、挙げ句の果てに開き直る人もいるくらいだ。「私、性格悪いから……」ってなると、もう賛同の声しきり。かえって正直でたいへんよろしい。
友人関係や恋愛関係で亀裂が入るのは、長く一緒にいる機会が増えることで、まさに“表向きの良い顔”を演じ続けるエネルギーを維持できなくなり、相手の“地”を垣間見、さらにむしろ良い顔の方を垣間見ることが定番化することで生じるのだ。恋愛関係においては、性格などのメッキが剥がれる以前に、化粧が剥がれた真の姿を見せつけられるという洗礼を受けることもある(よっぽど化粧が濃い女性に限るけど)。女性からの場合だと、彼氏が実はシークレット・シューズだったとかね。あら外で抱きしめられたときは、私の顔は彼の胸に埋まったのに、お座敷だと彼の顔が私の胸に埋まるわ、なんてね。お座敷……(靴を脱いだ状態という意味です)。
とにかく、二重人格と人が言う場合は、たいていは自分のわがままや虚構の装飾をもっともらしく言っているだけ。こういう人は私の周りにもたくさんいる(残念ながら私も含む)。
その“本当の意味での二重人格”(というのが的を得た表現かどうかは解らないが)を描いた映画「男たちのかいた絵」だが、原作は筒井康隆。主人公である男は、気弱な杉夫と凶暴な松夫が自分の意思に関わりなく切り替わってしまうというもの。
これを観て、不思議なもんだなあと感じたのは、切り替わると性格だけじゃなく筋力も変るってこと。松夫になると喧嘩は強いし、セックスだって強い。肉体まで変るものなのだろうか?とすれば、精神力によって体力も変化するということなのか?タバコもお酒も飲むようになる。肺や肝臓まで切り替わるのか?
松夫にサディスティックに犯される役の夏生ユウナ(杉夫の元彼女で、杉夫をふった高慢ちきな女)。昔この場面を観たときは、なかなか興奮するシーンだと思ったのだが、あらためて観ると、そんなに興奮するようなものでもなかった。
前回観たときと今回とで私の人格が切り替わったわけではないと思うが……あっ、単に加齢によって枯れただけか。
でも、その暴力的セックスに快感を覚えた彼女が、再び抱いてほしいと彼に会ったとき、そこに現れたのは杉夫。「こないだのように、ぶって」と言っても、杉夫にできるわけがない。そのときのやるせない物悲しさを演じる夏生ユウナは、なかなか上手だった。
ラストは、やっぱこういう風になるのかってもの。
この終わり方が、作品全体の質をちょっぴり落としているような気がする。
あっ、これジャンルとしてはヤクザ映画です。
新館入口(2014.6.22~)
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