人間ドックにおいてメタボすれすれ(にメタボ側)と言われ、何か運動をしなければならないだろうかと、人生の中で初めて考えている。
 この私の考えは、福田総理が解散総選挙を見据えて戦略を練っているのと同じくらいのレベルと言えるだろう。

 何か苦痛を伴わないで健康になる方法はないだろうか?
 人の健康のことを考えて、健康に効果がある商品のバナーを貼ってきたが、人さまのことを考えてる場合じゃなくなったのだ。

 ところで、これまでいろんな健康法がブームを巻き起こした。

 私が中学のときは紅茶キノコなる、ひどく気味の悪いものが流行っていた。
 これは紅茶の味がするキノコはなく、紅茶の中で栽培するキノコである。まるでクラゲのようだ。
 必修クラブでなぜか「キノコクラブ」に入った私は、紅茶キノコをみんなで飲みましょうという活動方針になったらどうしようかと、思い悩んだ。幸いそのような健康志向の部員は居なかったので助かった。

 一時期は皆が皆、ぶら下がっていた。専用の器具まで売られていた。「ぶら下がり健康器」というものである。
 でも、あれで健康になった国民はいたのだろうか?今ごろコートかけになっている家庭も少なくないはずだ。

 尿を飲んでいた人もいた。
 尿愛飲健康法という名前ではなかったのは確かだが、でも、尿をありがたがって飲んだのだ。あれで健康になった道民はいたのだろうか?
 そもそも尿は人間の老廃物である。それを飲んだら健康になるなんて、人間の体をお造りになった神への冒涜ではなかろうか?私はハチに刺された場合でも、その箇所に尿を塗るのはイヤなくらいである。

 パンツを履かない健康法というのもあった。
 スッポンポン健康法だかノーパン健康法というものである。ノーパン喫茶では満足しない人が考案したのではないかと思われる。でも、あれで果たして健康になった市民はいるのだろうか?
 私の家の近所には、それを夫婦で実践しているうちに魔が差してしまい、計画外に3人目の子どもができてしまった家がある。この健康法を取り入れたせいで、不健康になったとまでは言い切れないが、ある種の不幸に見舞われたのは間違いない。
 この夫婦のその後の口癖は「子どもを育てるには金がかかる」である。上の子2人は、なるべく早く就職するように、と両親から強い期待を受けている。

 健康法とは違うが、音楽による胎教というのがある。
 私の妻が妊娠しているときに、部下の女の子たちが、胎教に良いとされるクラシック音楽の入ったCDをプレゼントしてくれた。CDのタイトルは「ママ、待ってろよ」みたいな感じだったと思う。
 それにしても、私がクラシック音楽ファンだということをじゅうぶん知っているにも関わらず、このようなCDを贈ってくれるなんて、自分たちの善意に満足して何も考えていないか、あるいは私の趣味のあり方を根幹から揺るがす相当な嫌がらせである。
 そのCDを果たして腹腔内の胎児が耳にしたかどうかは知らないが、1つだけ間違いなく言えることは、その後のウチの子は、他のウチの子に負けないくらい父親を平気で無視するような子に育ったということだ。

 やはり健康法とは違うが、音楽療法っていうのもある。
19a61a66.jpg  かなり昔のパンフレットだが、東芝EMIの「クラシックは身近な音楽健康法」というのが手元にある。もしかすると選曲・監修者はこの企画のことを思い出したくもないかも知れないから、その人が渡○○夫さんという某研究所の所長だということについては詳しく触れない。
 でも、能書きを信じてこのCD集を買った人もいるはずだ。幸せになったのだろうか?

 例えばこの中に、「精神的ストレスによる胃腸障害に悩む時」に効く音楽として、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番があげられている。
 でも、この曲をこれまでも、そして今も聴いている私は果たしてどうなのだろう?
 私は先週金曜日のドックで、胃のびらんで引っかかり、再検査を受けるように言われてから、急に胃の調子が悪くなったような気がしないでもないような気がしてきているのが、気のせいではないように思えるのだ。まさに、精神的ストレスによる胃腸障害に悩んでいるのだ(それにしても、胃に異常がある人間がメタボになるくらい肥えるものだろうか?トータル的な診断をしてほしいものだ)。
 でも、効かない。効く兆しもない。他にも同じ効能を持つ音楽として7曲書かれているが、どうも信じがたい。

 だいたい音楽でいろんな異常が治るなら、私なんか未だに青春真っ只中のビンビン小僧でいられるはずなのだ。結石でもんどりうつことも、脂漏性湿疹で悩むことも、二日酔いで苦しむこともないはずだ。

 そのパンフに添って文句をつければ、「朝の目覚めに適した」モーツァルトの「トルコ行進曲」のせいで、私は自分が早起きだとは思わないし(単に年をとっただけだ)、「牧神の午後への前奏曲(ドビュッシー)」を聴いたって「心の疲れ」はとれないし、マーラーの第1交響曲を聴いたからといって「劣等感にさいなまれている」ことが解消されるかといったら、全然ブブーッ!である。
 「イライラ、欲求不満があるとき」に効果があるという「くまばちは飛ぶ(リムスキー=コルサコフ)」を聴いたらかえってイライラは募るばかりだし、同じ効果があるという「春の祭典(ストラヴィンスキー)」を聴いたところで、バレエの筋を思い出すとかえって欲求不満が高まる。だって“いけにえの乙女”が踊るんですよ!
 「剣の舞(ハチャトゥリアン)」を聴いたからといって、どうして「怒りの心がおさまる」というのだ!?
 「憂鬱な気分から抜け出せない時」に、モーツァルトの交響曲第40番を聴いて、果たして私は憂鬱な気分から脱出できるだろうか?「不安な気持ちが強い時」にラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の、それも第1、2楽章(という指定つき)を聴いて、不安を払拭できる自信は私にはない。
 「自殺を考えるほどの深刻な悩みがある時」は、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」が良いそうだが、これを聴いて「お父さん、お母さん、ごめんなさい」と涙を流して、すっごく高い場所から飛び降りちゃう可能性は払拭できない。「身内の死、親しい人の死に伴う悲痛」には、アルビノーニのアダージョが効果的だとさ。でも、ある葬式でこれが流れていたが、悲痛倍増って感じだった。
 まあキリがないからこれでやめとくけど(ってじゅうぶん書いたけど)。

 このパンフとは別だが、モーツァルトを聴くと脳内にα波だかが出てきて良いらしい。
 でも、モーツァルトをさんざん聴いてきたはずの、この私のベータ的人生とどう整合性がとれるのだろう?ソニーだってベータで負けたのだ。
 私の場合、α波どころか、妻には毒波を浴びせられ、妻から逃れて家を一歩出ても、電磁波と世間の荒波を浴びているではないか!

 ちょっと冷静になろう。
 モーツァルトのヴァイオリン協奏曲イ長調K.219「トルコ風」は、1775年、モーツァルトが19歳のときに書かれた。タイトルは、終楽章(第3楽章)4aefd40e.jpgのロンドにトルコ風の楽想が用いられていることから付けられた。トルコ風の楽想って何だ、というと、まぁトルコ風である。場を壊すようにガチャガチャと鳴り始めるのである。

 前にも取り上げたが、しつこく他人の過ちをネチネチ と取り上げると、この「トルコ風」のCD広告でとんでもない間違いを犯したのが徳間ジャパンである。
 “レコード芸術”という由緒ある(ということはマンネリ化している)クラシック雑誌の掲載広告でやってしまったのだ。
 見よ!右下の勇気ある表現を!
 いくら「ソープランドと言わなきゃトルコ人に失礼だ」と騒がれる前の古い録音の再発売とはいえ、なかなか大胆かつ効果的な認知度向上を図っている。
 どうしてこれがミスと言えようか!広告主と広告代理店がそろって見逃すなんてことがあるだろうか?飢えた男ばっかりの職場ならともかく、そうではあるまい。
 私は確信犯と踏んでいる。

 それは良いとして、私がふだん聴いているのはヘンリック・シェリングの独奏、アレグザンダー・ギブソン指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団のCD。この5番の録音は1966年と古いが、何て言うのかなぁ、味があるんだなぁ。もちろんモダン演奏。
 なぜか、ほっとする演奏。

 さて、健康志向のサプリや食品は右のバナーから買えるとしても、問題はどう肉体を引き締めるかと、血液をさらさらにするかだ。
 幸い現在は夏休み中だから、毎朝近所の公園で小学生と一緒にラジオ体操をすることはできる。しかし、もうラジオ体操の振付も忘れてしまった。
 本当に福田総理並みに考えているのだ。
 つまり真剣さには欠けるという意味でもあるんだけど。

 そういえば、男性は1回の射精で1,500mを走ったくらいの体力を消耗すると、どこかの本(エロ本)で読んだことがある。
 なるほど、若い男の方が中年よりもデブが少ないのは、自慰行為でたくさん体力を消耗しているせいなのかも知れない(自慰行為でなくて本番行為でも構わないが、若い男がそんなにモテてほしくないと個人的には思う)。
 これは新しいダイエット法として研究の余地があるかも知れない。名づけて“Gダイエット”。少なくとも、尿を飲んで健康になるよりは、人の道から外れていないだろう。1日に5回も出せば、あっという間に頬はこけ、全体的に痩せてくるのではないだろうか?

 ただ、私ぐらいになるとこの方法は危険だ。
 全体的に抵抗力が弱っているから、房事過度は尿道炎になるリスクが高い。右手の腱鞘炎も心配だ。いや、それ以上に心臓麻痺を起こすかもしれない。ダイエット作業中に下半身丸出しで、だらしのない顔のまま死にたくはない。
 その前に糖尿病になってしまったら勃起すらしなくなるんだろうけど……

 燃えてしまった江戸城も
 昭和のころは
 トルコ風呂