《私の第12交響曲はそれほど成功しなかったと考えている。いわばひとつの創作課題をもって、つまりレーニンの肖像を描くつもりでわたしは作曲をはじめたのだが、最後には結局、まったく別のものになってしまった。最初に考えたことが実現されなかったのである》

 これは「ショスタコーヴィチの証言」(S.ヴォルコフ編、水野忠夫訳。中央公論社)の208pに書かれている文章である。

 彼の第6交響曲の稿でも書いたが、果たして本当にこのような意気込みで作曲を始めたのかどうか、かなり疑わしい。それに加えて、この書が噂どおり偽書だとしたら、ますますである。でも偽書だとしたら、ショスタコーヴィチらしく表現している点ではたいしたものである。

 交響曲第12番ニ短調Op.112「1917年」(1960-61)。
 10月革命を題材として、レーニンに捧げられた曲である。

 この1917年にどういうことが起こったのかというと、

 4月 亡命先のスイスからレーニン帰国。
   彼は、国家権力をソヴィエト(労働者、兵士、農民会議)に移すよう主張した
    「4月テーゼ」を発表。
 10月 軍艦アウローラの号砲を合図に蜂起。
    26日までに冬宮殿や各官庁を占領、無血で革命の勝利をおさめる。

 って、ずいぶん簡単に書くと、このように簡単になる。
 

 私がこの曲を初めて聴いたのは浪人中。廉価盤のLPを買ってみたのが出会い。指揮はスヴェトラーノフであった。

665641ac.jpg  重厚な曲の開始のあと何かに突き進んで行くような第1楽章。
 ほっと息をつく場面のような第2楽章(でも、あとに書くように、レーニンが隠れ潜んでいた場所を描いているのだが)。
 「うぉ~!モダン!カッコいい」と唸らせる(私を)、迫力満点の第3楽章。
 伸びやかに「結果」を歌い上げる、これまた力強い第4楽章。
 特に第4楽章にしびれきってしまった。
 あぁ、若いって感受性が豊かなのね。

 冒頭の旋律(掲載した譜。楽譜は全音楽譜出版社)が曲全体を支配するような形になっており、4つの楽章は続けて演奏される。
 各楽章につけられれている名前は、

 第1楽章 革命のペトログラード
 第2楽章 ラズリフ (ペトログラード北部の湖の名。レーニンはここのほとりで革命のプランを練った)
 第3楽章 アフローラ (革命行動の合図の号砲を打った巡f075b968.jpg 洋艦の名前)
 第4楽章 人類の夜明け (コケコッコー!←すいません)

 有名な第5交響曲でもそうだが、曲尾ではショスタコの特徴でもある効果、大太鼓とティンパニが重ねて強打され、私をしびれさせる。

 「ショスタコーヴィチの証言」でも「それほど成功しなかった」と言われてしまっている第12番。一般の評価も低い。
 しかし、「親しみやすさ」という点では捨てがたいし、音響面も刺激的である。
 もっと評価してあげていいんじゃないかと思う。

 私が推薦するCDは第6番と同じようにハイティンク盤(デッカ)である。

 ところでね
 今日はプンプン
 腹が立つ
 だって
 みんなが私を
 責めたてる