昨日に続いてレスピーギの作品。それも超有名曲である「交響詩『ローマの松』」(1924)である。
近代イタリア復古主義の一翼を担ったレスピーギであるが、その代表作が「ローマの噴水」(1914-16)、「ローマの松」、「ローマの祭」(1928)の三部作で、レスピーギがローマに寄せる深い愛着を表現したものである。
レスピーギの音楽は華麗なオーケストレーションと甘く美しい旋律を特徴とするが、三部作ののなかでも「ローマの松」はリムスキー=コルサコフから影響を受けたオーケストレーションが光っている(「ローマの祭」も華麗で、「松」よりもダイナミックだが、トータル的には「松」の完成度の方が高いと思われる。丼物の話みたいだけど)。
「ローマの松」は、ボルゲーゼ荘の松の木立の間で遊ぶ子供たちの姿を描いた「ボルゲーゼ荘の松」、ローマ帝国時代に迫害を受けたキリスト教徒たちに思いをはせた「カタコンブ付近の松」(グレゴリオ聖歌の旋律が用いられている)、満月の夜の光景を歌い上げた「ジャニコロの松」、古代ローマ軍の進軍道路だったアッピア街道での軍の行進を描いた「アッピア街道の松」の4つの楽章から成る。
第2楽章では舞台裏からトランペットのソロが郷愁を誘う美しい旋律を吹く。また、終楽章では舞台外(だいたいは客席上方)から6本の金管群(バンダ)がオーケストラと掛け合う。まあ、こういった手法はさして珍しくないが、第3楽章の終わりには鳥の声のレコードを流すように指示されている。当時としては画期的なアイディアである。
その部分が写真の楽譜(楽譜はRICORDI社のもの)。 第3楽章の終わり13小節分であるが、“Grf”とあるのがレコード。“Grf”が何の略かというと、グラモフォンの略である。見づらいかも知れないが、ページ下部には★印で注釈があり、6105というレコード番号が記されている。
画期的ではあったかも知れないが、レコードっていうのは廃盤になったり、規格番号が変わるってことは頭になかったのだろうな……
もっとも、こういう作品、しかも人気曲となった作品に使われてしまった以上、グラモフォンも廃盤にはできなくなったに違いない。素朴な疑問だが、現在演奏する場合、どのような音源を使っているのだろうか、ということだ。レコードの音源からとったテープなのか、CDになっているのか解らないが、これまで生で聴いたときも、レコードのノイズなんて入っていなかった。はてさて?
生といえば、私がこの作品を生で聴いたのは大学2年のときだった。いやぁ、しびれたね。
で、もう一度聴きたくてじっと待っていたら、その3年後に取り上げられるのを知った。演奏会の名は「金子由香利 on 札響」とかいうもの。金子由香利には興味はなかったものの、前半の札響のみのプログラムを聴きたくて、通常の演奏会より高かったけど行ってみた。
クラシック以外のコンサートなんて初めてだったので、まずステージの反響板が取り外されているのに驚いた。客席は孔雀みたいに着飾った年配婦人 が多いのにも驚き桃の木ピーコックであった。
そして「ローマの松」は……マイクとスピーカーを使っていやがる!
ああ、失望!
後半は見ないで帰ってきた。だから金子由香利のコンサートなのに、金子由香利を一目も見ずに会場をあとにした。やれやれ……
さて、私が好んでいる演奏だが、意表をついて(?)、マゼール指揮クリーヴランド管弦楽団のもの(1976年録音)。これはLP時代から愛聴している。デッカ・サウンドもまたすばらしい!
「ローマの松」にはよい演奏のCDが少なくないが、まずはマゼール盤を推したい。
CDはロンドンのKICC9383~84。ただし現在は廃盤(ロンドン・レーベルっていうのがもうないもんな……)。
新館入口(2014.6.22~)
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