55a3bad7.jpg  メレディス・モンク(1943- ,ペルー→アメリカ)の「近ごろの婦人」(1973)。
 この曲については、1年前にも投稿しているが、もう1回書かせていただく。あの頃は未熟者だったので……(今が完熟しているという意味ではない。物理年齢的には過熟であるが)。

 この作品の原題は“Our Lady of Late”である。
 私がこの曲の存在(というよりもモンクの存在)を知ったのは、“レコード芸術”誌の記事を見てであった。連載記事で世界のCDレーベルを紹介するコーナーがあり、Wergoの紹介のなかで、このCDも紹介されていたのである。
 執筆者は忘れたが、この作品について「遅れてやって来た我らがお嬢さん」という邦訳をつけていた。どうもしっくりこない。
 CDを買って聴いてみた。「遅れてやって来た我らがお嬢さん」だかなんだか、どうもピンとこない。いや、どんなタイトルであってもピンと来ない感じの曲だ。

 それから数年後。
 とある、今や化石的存在のクラシック名曲喫茶に寄ったときに、古びた輸入CDのカタログがあるのを見つけ読んでみると、「近ごろの婦人」って書いてあった。
 少なくとも「遅れてやって来た~」よりはまともなタイトルのような気がする。だいいち、全然意味が違うことになる。画期的衝撃的羞恥的誤訳だ。「近ごろの婦人」が正しいとして、だけど……

 18曲からなる「近ごろの婦人」は、声と打楽器、グラス(ガラス)で演奏される。CDで声を務めているのは当然のことながらモンクである。文句あっか?
 ここでは「声」はあくまで「声」であり、「歌」ではない。「声」という楽器である。その楽器は実に幅広い表現をしている。
 このすごさ、不可解さ、ときに恥ずかしさは、聴いてみなきゃ分からない。

 CDはヴェルゴ(Wergo)のSM1058-50。
 演奏はモンクの声とグラス、ウォルコットのグラスとパーカッションである。

 でも、構成する各曲のタイトルを見ても「遅れてきた」って訳はおかしいなって躊躇すると思うんだけどなぁ。