D.ショスタコーヴィチ(1906-75)の交響曲第15番イ長調 Op.141(1971)の第3楽章について。
まずは、毎回ご紹介している森泰彦氏の解説(エラートWPCS5539)。
《第3楽章は、きわめて醜悪なスケルツォ。ふいごつきのドローンの上で、クラリネットが吹き上げる角張ったスケルツォ主題はまたしても12音列で、下行するときは丁寧に正確な転回形。「交響曲第5番」でと同様、17~32小節、53~72小節、98~126小節、147~168小節は、その直前の楽器の編成を変えたほぼ正確な反復で、スケル ツォのダ・カーポでは、反復の省略まで作曲されている。12音音列、マーラーのレントラー、打楽器アンサンブル、変拍子。さまざまな楽器のソロからなる手の切れそうな鋭利な音楽は、出発点と同じg音できっぱりと終わる》
第3楽章、アレグレット、2分の2拍子は、第2楽章のから休みなく続けて演奏される。
骸骨の踊りを思わせるようなスケルツォで、雰囲気的に第1楽章の主題をも思い起こさせる。前楽章のファゴットによるffの3音からアタッカで始まるこの楽章だが、いきなりクラリネットによって第1主題が吹かれる。これは上行する12音と続く下行する12音でできている(譜例14。掲載したスコアは全音楽譜出版社のもの。以下同様)。 鋭いが、しかし気の抜けたようなトランペット、トロンボーンのファンファーレによってトリオ(中間部)に入る。ここでソロ・ヴァイオリンが新しい主題を弾く(譜例15。新しい主題は矢印の部分)。
そのあと再現部に入るが、冒頭主題は管ではなく弦、それも中間部と同様にソロ・ヴァイオリンが主役となる。
それにしても、この交響曲は楽器がソロで歌う部分がひじょうに多い。
再現部は短いが、ここでは終楽章の終り、つまりこの交響曲全体の終りで執拗に繰り返される無機質な打楽器によるリズムの“予告”が行われる(譜例16)。この打楽器の不思議な刻印は、ショスタコーヴィチのメッセージのようなもので、第4交響曲やチェロ協奏曲第2番にも顔を出している。
また、第3楽章自体もこのリズムで終わる(譜例17)。 ここでは、別なCDも紹介しておきたい。
ショスタコーヴィチの演奏ではとても良いと私が思っている、ハイティンク指揮ロンドン・フィルによる演奏。
15番の演奏も、良い意味で教科書的な整然とした演奏。スコアが読めない私が言うのはほとんどオオカミ少年的だが「スコアが見えるような演奏」である。録音も良好。
面白いことに第3楽章のトラックは、第2楽章の最後の3小節、すなわちファゴットのffの3音から始まっている。確かに、この3小節は第2楽章というよりは第3楽章の性格が強いと思う。ただ、こういうトラック分けは混乱のもとかもしれない。
DECCAの417 581-2(輸入盤)。国内盤もかつて出てい たが、現在は廃盤のよう。良い演奏なのになぁ。このCDには「ユダヤ民族詩より」も収録されている。
新館入口(2014.6.22~)
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