かねてより「こんなものがあれば便利なのに」と思っていたものがある。
 掃除機のホースの先につけて、ごく小さな隙間まで入るような「管」である。イメージとしては、胃カメラみたいな掃除機用のホースである。

 なぜそんなものが必要なのか?

 例えばトイレの換気扇。
 我が家のトイレの換気扇は常時換気用の小さなもので、羽根とモーターが一体となっている。ビスをはずして壁から取り外そうとしても、中で直接電線がつながっているので、本体を引っ張り出して「よっこいしょ」っと腰を据えてキレイキレイしてやることは無理である。
 天井近くにある換気扇の羽を掃除するのは大変である。歯ブラシで羽にこびりついたゴミをこすりながら、奥(つまり換気扇よりも外壁側)にゴミがいかないよう掃除機のホースを当てる。そうでなければ羽より外側にゴミがたまっていくだけだ。これは重労働だ。片手には掃除機本体をぶら下げながらの作業になるからで、歯科のベッドに横たわっている患者のよだれをバキュームするのとは違うのだ。踏み台代わりの椅子に乗って作業になるから危険でもある。

 あるいは、セントラル・ヒーティングのパネル。
 細かなひだのなかには埃がたくさんたまっている。よくはわからないが、埃がたまると暖房効率も悪くなるような気がする。
 このラジエターみたいな迷宮の掃除にいちばん効果的なのは、パソコンのキーボードの掃除などに使うエアダスターだが、あれを噴霧すると部屋中に埃が舞い、かなりの健常者でも(例えば妻)くしゃみが止まらなくなる。

 こういった狭いところに直接差し込めるような、掃除機ホースのアタッチメントがあれば、この世の中、かなりハッピーになれるのにと、ずーぅっと思っていた。
 自作することも考えた。サランラップの筒を円錐状に加工して、片側を掃除機のホースにはめる。反対側の円錐型の先には細いビニール・ホースをつける。そのビニール・ホースをこういった秘境のようなところに差し込んで、ゴミや埃をチューチュー吸い取るのだ。これなら、ボイラーやCDラックの下、テレビ台の下、本棚など、あらゆる細かなところに効力を発揮できそうだ。
 しかし、私はサランラップの芯の筒を自由に加工できるほど力がないし、何よりも面倒くさい。ということで、このすばらしいアイデアは頭の中にしまったままでいた。

 そんなとき、新聞に画期的なアイデア商品が紹介された。
 その商品は、率直に言えば、私が考えていたものをそのまま具現化したかのようなものであった。
 名前がすばらしい。「超すきまノズル」。いかなる疑念を抱くことも許さない妥協や妄想を排するネーミングである。どう考えてもこの名前から、ICチップの回路クリーニング専用品とは思う幼児はいないだろう。

 掃除機に負荷がかからないよう、空気抜きの穴もついているし、さらには連続して1分以上は使わないよう細かな指示がなされているのも、この殺伐とした世相には珍しい親切さだ(空気穴を開けておけば連続運転しても良いらしい)。
 ヘッド(というかチューブ)も3種類用意されていて、掃除したい場所に応じてちょっぴり悩めるのも楽しい。車の掃除にも便利そうだ。

 私は東急ハンズで購入したが、ファンケルのネット通販でも扱っているようだ。
 製造元は大阪の株式会社コジット。

 何?通販なら年末の大掃除に間に合わない?
 だめだめ。大掃除は年末にするという既成概念を打破しなくては!