今日もまた雪が降ってきた。
 私は今日も仕事である。
 でも、通勤の電車はガラガラ。こういうのって、とってもいいなぁ。
 でも、雪はやんで欲しいなぁ。

 先週の金曜日はひどい天気で通勤電車が遅れ、通勤にちょっとした傷心旅行並みの時間がかかったことはすでに書いたが、土日も天気は開腹せず、ほとんど吹雪といった感じの状態が続いた。外で雪かきをしていても時折周囲が見えなくなるほどの降りと風。「やれやれ、やってらんねぇよ」とつぶやいている間にも、雪かきした場所にもう雪が積もっている。これだけからも、雪山の遭難の恐ろしさが察せられる。
 清水脩の合唱組曲「山に祈るの「お母さん、ごめんなさい」を頭の中で歌いながら、いやいや作業を終えた(「赤いサラファン」だの「山に祈る」だの、雪かきは私の「歌いたい」欲求を刺激するのだろうか?もう少し明るい歌、例えば「カリンカ」なんかが思い浮かべば、雪かき作業のスピード・アップにもつながるかもしれない。けど「カリンカ」も明るい曲とは言い切れないか……)。

 そんなわけで、土日は外で雪かきをし、それから家の中で大掃除の一端を担い(といっても、私以外の人物が本格的に掃除していた形跡はない。つまり一端ではなく、私が主役だ)、また外に出て雪かきをし、再び家の中に戻り換気扇の掃除をしていたら羽でグサッという音と怪音とともに指先を切り(本当に音がしたのだ。けど、幻聴だったかもしれない)、またまた外に出て、とはいえ深い傷を負ったのでもはや肉体労働はできず、ウチの裏の空き地に近所の住民が雪をどれぐらい捨てにきて、かつ押し付けてきているか確認し(空き地だから雪を捨てるのは自由なのだが、ウチにギリギリまで押し付けられると、これから先、雪がもっと積もると暖房機の排気口を塞いでしまう恐れがある)、「チクショー!ロシア軍はもうけっこう侵攻して来ている」と重い気分になりながら、やっぱり家に入り、という水族館のイルカショーの主役のドルフィンちゃん並みに、飽きもせずにリピーター的なあわただしい日々(土日だから「日々」)を過ごした(長いセンテンスで失礼!)。

 これで読者は推測できると思うが、結局、土曜日の札響の第9公演には行かなかった。私のように天候判断を誤らずに聴きに行くのを断念した人は少なくないと思う。実際、客の入りはどうだったのだろう?(なんて、心配していたら、札幌中心部はそんなにひどい天気ではなかったらしい)

 ♪

 話はがらっと変わるが、先日の忘年会で23時ころに帰宅したとき、家の近くでふと空を見上げると、それはそれは星がきれいであった。かすかに“すばる”も見えた。
 多趣味というか多方面に興味をもつ癖(へき)のある私は、小学6年のときに天体望遠鏡で“すばる”をこの目で実際に見たとき、その美しさにすっかりまいってしまった。
 何年か前に「あの感動をもう一度」と、天体望遠鏡を買ったのだが、すっかり目が弱くなったのと、空も光害で明るくなったために、目的の天体に望遠鏡を合わせられなくなってしまった(自動的に座標で目的の天体に照準を合わせられる機種もあるが、もう一つの重要な「寒さに耐えられない」という問題は解決しない)。

 “すばる”とはプレヤデス(プレイアデス)星団のことで、星団・星雲番号ではM45である(ウルトラマンたちの故郷はM78星雲)。太陽系からは415光年の距離にある、まだ若い星の集団。レガシーでおなじみのスバルのマークもこの星団がデザインされている。英語ではセブン・スターズというらしい。私がスバルの車に乗っていて、セブンスターを吸っているのは、まったくの偶然である。

b6e00d9b.jpg  掲載した写真は「県立ぐんま天文台」のサイトにあったものだが、小学生のとき安物の望遠鏡を覗いたときは、まさにこのような輝きが目に飛び込んできたのだ。感動しないほうが不思議じゃないだろうか?
 参考までにプレヤデスの位置だが、オリオン座の明るい3つの星を結んだ直線の延長上にある。細かな粒々がキラキラとにじむように光っているが、空がきれいで周囲も明るくない場合以外は、よく目をこらさないと見つけられない(昔、ある天体望遠鏡メーカーが天文雑誌の広告で「公害、光害で、郊外へ」というのを載せていたが、それがやけに印象に残っている)。

 この星団の名がついた作品に、吉松隆(1953- )の「プレイアデス舞曲集」というピアノ曲がある。第9集まであり、それぞれが7曲の魅力的な小曲からなる。

 作曲者はこう述べている。

 《「プレイアデス(Pleiades)」は、牡牛座の肩あたりに位置する7つほどの星からなる小さな星団で、和名は「すばる」。
 この星たちの名に因んだ「プレイアデス舞曲集」は、虹の7つの色、いろいろな旋法の7つの音、様々に変化する7色のリズム、を素材にした「現代ピアノのための新しい形をした前奏曲集」への試み。
 バッハのインヴェンションあたりを偏光プリズムを通して現代に投影した練習曲集でもあり、古代から未来に至る幻想四次空間の架空舞曲を採譜した楽曲集でもあり、点と線だけで出来た最小の舞踊組曲でもある。》

 それぞれの曲につけられたタイトルが、また素敵だ。
 「アップル・シード・ダンス」「図式的なインヴェンション」「聖歌の聞こえる間奏曲」「過去形のロマンス」「静かなる雨の雅歌」「傾いた哀歌」「静止した夢のパヴァーヌ」「水晶の小さなロマンス」「星降る夜の子守歌」etc.etc……(吉松さんはサティの音楽作品の変わったタイトルをちょっぴり意識したのかしらん?)
 もちろん曲のどれもがタイトルに負けないすばらしさ!

  作曲年は、
 第Ⅰ集Op.27  1986年
 第Ⅱ集Op.28  1987年
 第Ⅲ集Op.35  1988年
 第Ⅳ集Op.50  1992年
 第Ⅴ集Op.51  1992年
 第Ⅵ集Op.71  1998年
 第Ⅶ集Op.76  1999年
 第Ⅷ集Op.78a  2000年
 第Ⅸ集Op.85  2001年、である。

 CDは田部京子が弾いたものがある。
 
 なお、楽譜は音楽之友社から出版されている。

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 そうそう、今日、街なかのATMでお金をおろしてその場を去ろうとしたら、3台隣のATMがうめき声のような警告音を発していた。
 何かなと思ってみると、誰かがおろした現金が取り忘れられてそのまま残っているのだ。一瞬耳元で悪魔がささやいたが、いかんいかん。で、周りをみると、ちょっと離れたところで通帳の中身を目を凝らして読んでいる女性がいた。彼女が取り忘れたようだ。私の近くにいた世話好きそうな女性が「取り忘れてますよ!」と声をかけ、通帳愛読女性はわれに返った。
 こういうことってあるんだなぁ。
 通帳の記載内容をチェックする前に、まずは現金を取らにゃあ!
 危うく彼女は暗い正月を過ごすハメに、そして私は泥棒になるハメになるところだった。

 でも、ああいう警告音が出るなんて、はじめて知った。有意義だった。