冬の朝の通勤道では、いたるところで大胆に色づけされた雪を見かける。
 それは曲がり角に多いが、あらまぁ、歩道の中央の場合も稀にある。
 その色づいた雪を見ると(いやでも目に入ってくるのだけど)、私はそれを描いた主の健康状態が気になる。

 もうお解りだと思うが、何の話かというと、尿で色づいてしまった雪のことである(話の展開が私の妻が話してるかのようにまどろっこしくて、ふふ、イライラしたでしょ?)。
 その描き手(正確には汚し手)はお犬様である(と信じたい。中には夜中のうち、あるいは日の出前にヒトが立ちションで色づけしたものもあるだろう)

 それにしても、まさに至る所、である。
 こんなに朝のうちから大規模な散歩合戦が繰り広げられているのが、不思議であり、ある意味奇妙である。きっと自分のタバコを買いに行くのも億劫がるくせに、犬の散歩だけは強風波浪着雪警報が出ていてもやり遂げる飼い主が少なからずいるのだろう。

 そのオシッコの色であるが、とても一般的な水彩絵の具では再現できないくらいバリエーションに富んでいる。“尿色千差万別”である。
 まるでオロナミンを多めに飲まされたに違いないと思われるような、レモンシロップのかき氷のような、鮮明なレモン・イエローに染まった雪もあれば、お酒に酔った翌朝の中年オヤジのションベンみたいな色のものもある(ある意味では、これが一般的なのだろう)。
 心配になってしまうのは、日焼けしたラクダみたいな色の痕跡だ。
 大丈夫だろうか?ポチは腎盂炎になってしまったのではないだろうか、と見ず知らずの犬に仮名をつけて心配してしまう。飼い主は、かわいいペットが気の抜けたコーラのような色のお小水を出しているのを見て、何も感じないのだろうか?(注:下線部を「気が抜けていない新鮮なコーラ」と置き換えても問題は生じません)
 だとしたら、お犬様はかわいそう……
 それとも、体質的に酸化しやすい尿を出しやすくて、実は「したて」は美しい淡黄色を呈しているのだが、すぐに褐変してしまうのだろうか?

 時にはゲロもある。犬だって朝起きて急に散歩に連れ出されたらオエッってくることもあるんだろうなぁって、違う違う、明らかにゲロオヤジの仕業だ(過去に私も実行者になったことがある。すいません。でも、ちゃんと雪で覆い隠しましたけど……)

 こういう、多数点在する排尿マーカーを、今朝(投稿する今日から見れば昨日)はZEN-STONEボロディンの交響曲第1番を聴きながら、まるで地雷を遠巻きにして避けるように駅まで向ったのであった。
 ZEN-STONEって何かというのをもう一回説明すると、Made in Chinaのデジタル・オーディオ・プレーヤーで、Walk Manとか買えないところが悲しい。もっと悲しいのは、こいつは胸の内ポケットに入れて置かなくては、寒さで、かすかに「ひゅんっ」っていう、首をひねられたミミズのようなうめき声を上げて、完全停止してしまうのだ。やれやれ……
 こういうのって、1年間の保証期間が過ぎたとたんに、温めようが何しようが再起できない危篤状態に陥ってしまいような予感もする。

 こんなに排尿痕があるということは、雪のない季節は見過ごして踏んでることがけっこうあるのだろう。ウンチさえ見過ごして踏みそうになることがあるんだから、うん、間違いなく尿は踏んでいるな。

 それと、重要な教訓。
 「尿の後がある近辺ほどアイスバーンである」
 なぜかはわからないが、「おぉ、尿痕だ。気をつけなきゃ」と思った瞬間、滑って転びそうになることが多い。まるで、尿に引き寄せられるように……
 気をつけなきゃ。

 朝の通勤は(帰りもだが)、気を抜けない1日の試練の序奏なのだ。