昨日1月24日、15:00から行われた札幌交響楽団第515回定期演奏会。
指揮は飯守泰次郎。ピアノが横山幸雄で、ワーグナーの「さまよえるオランダ人」序曲、伊福部昭の「ピアノとオーケストラのための『リトミカ・オスティナータ』」、サン=サーンスの交響曲第3番というプログラム。
伊福部昭ファンの私としては、「リトミカ・オスティナータ」に期待して行ったわけだが、期待をはるかに上回る演奏だった。
すっかりお年を召してしまった飯守だが、最初のワーグナーから飛ばす。オーケストラもそれに応えた迫力ある演奏。後ろ姿の飯守は、かつての山田和男を思わせたりもする。
2曲目の「リトミカ・オスティナータ」は、私はこれまで数え切れないほどLPやCDを繰り返し聴いてきたが、生演奏は初めて。
実際に生で聴くと、それまで気づかなかった(あるいはCDでは再現できなかった)新鮮な音色や楽器の用法が分かる。期待して 行ったが、過度の期待は裏切られることが多いもの。しかし、この日は聴いていて久しぶりに完全集中させられたし、何度も背筋に寒気が走った(帰宅して測ったら微熱があったという事実もそれに加担しているだろう)。
中間部でピアノの背景でピッコロとトロンボーンが重なって吹かれている、あの不思議な音色(譜例1。掲載スコアは全音楽譜出版社のもの。以下同様)。これはCDでは分からなかった。「管絃楽法」の著者だけに、やっぱりオーケストレーションがすごいのは当たり前ってことか。
打楽器群の荒々しさもCDでは、これまで録音された演奏の問題もあるだろうが、ピアノをメインに録るとなかなか再現できない。そう、これなのだ。打楽器でピアノが聴こえない箇所があってもいいのだ。この曲がピアノに求めているのはメロディーではなく、リズムなのだから。
さらにはppも、繊細なppと力を秘めたppがあるということを、飯守は巧 みに表現していた。
最後のゲネラル・パウゼ(譜例2)で、誰かが飛び出ませんようにと祈ったが、ここも完璧。
ピアノもオーケストラも伊福部音楽の魅力を十分に表現した、見事な演奏だった。
これ、CD化してほしいなあ。
サン=サーンスの交響曲第3番は、過去にも何度か生で聴いたことがあるが、実際にパイプ・オルガンを用いた演奏を聴くのは初めて。
この交響曲は循環形式によって、最初のメロディーが全曲を通して現れ、統一感を図っているのだが、私は最初のムカデが忍び寄ってくるような不気味な旋律(譜例3)が、のちの第2楽章第2部(実質的な第4楽章)で現れる輝かしい旋律(譜例4)に化けているなんて、最初の20年間気づかなかっ た。しくしく……。皆さんは、そういうのすぐ分かります?しかも、これってかなりそっくりそのままの形で化けているんだよなぁ。一回気づくと、何で20年もの間気がつかなかったんだろうって、自分が情けなくなる。まっ、気づいたとしても儲け話にはつながらないけど。
肝心の演奏だが、この曲でも札響はほぼ完璧。ワーグナーとは異なる、フランスの世界を美しく響かせる。
ただ、交響曲自体が意外とつまらないかも、と思った。演奏が良いだけに、かえってそれが目立って感じた。パイプ・オルガンの響 きも「こんなもんか」という感じ(オルガンの演奏が悪いということではない)。かつて、電子オルガンを使って演奏された札響の響きとあまりスケール感は変わらない。
実は感動を与えるタイプの作品じゃないのかな、と思ってしまった。
それにしても、この日の札響の演奏はほぼ完璧!こう言っちゃ失礼だが、第一級指揮者とは言い難い飯守の棒で、このような演奏が聴けるとは!
客の入りはいま一つ。しかも年配者が多い。このままじゃ、次代の聴衆は育たないな、とちょっと心配する次第。
「リトミカ・オスティナータ」については、昨年11月25日にCD紹介を兼ねて投稿しているが、いまのところ、録音ではそのときに紹介した藤井一興の演奏がいちばんだと思う。管楽器の入りが1拍遅れていたり、藤井一興が弾くピアノで、指がこんがらかったりするところがあるけど、ビクター盤やナクソス盤よりは伊福部らしいバーバリックな響きが聴ける。
プロフィール
MUUSAN
クラシック音楽、バラ、そして60歳代の平凡ながらもちょっぴり刺激的な日々について、「読後充実度 84ppm のお話」と「新・読後充実度 84ppm のお話」の2つのサイトで北海道江別市から発信している日記的ブログ。どの記事も内容の薄さと乏しさという点ではひそかな自信あり。
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