5201d06b.jpg  私が住んでいる家の近くには大きな川と、そして小さな川がいくつかあって、そのため夏にはホタルが少しながら発生するというが(私は目撃したことがない)、冬になると少なからず霧が発生する(私は見たくはないが、見たくないどころが霧に包まれてしまう)。

 霧が発生するのは気温が急激に下がる時で、温かい水温の川から、オヤランモヤランと霧が立ち上ってくる。
 つい先日も、夜の9時過ぎから霧が立ち込めはじめ、朝になってもそのまま。ウルトラQの世界なら、その向こうからトドラが出てきそうな雰囲気であった。

 しかし、この霧は美しい霧氷を作り出す。
 見ている分にはきれいだが、こびりつかれた木にとってはいい迷惑だろうし、実際そんな朝に通勤に出陣するこちらとしても、精神的に迷惑である(肉体的には苦痛)。
 この日の朝は、それでも思ったほど冷え込まなかったために、霧氷も霧氷と呼ぶほどにはしゃきっとしていなかったが、それでも写真のような状態になった。桃色夏椿の枝と、その枝に雪対策のために巻いている縄についたものである。よく見ると、なかなか美しいではないか!
 周囲が暗いのは、まだ日の出前だから。たまたまゴミ出しに外に出たらこんな状態だったので撮ったのだ。それにしても日の出前にゴミを出すというのも、我ながら怪しいと思う。
 雪の結晶っぽい姿がわかるだろうか?
 でも、これって田舎の小さな商店の、アイスクリームの冷凍ケースを連想させる。霜で覆われた、いつから鎮座しているのか不明のアイスクリーム……

 おそらく日中の温度が上がらないまま、何夜もこれがくり返されると樹氷まで成長するのだろうが、さすがに私が住んでいるあたりはそこまで寒くはない。幸いなことに……

 こういうのを見ると、頭に浮かぶのがチャイコフスキーの交響曲第1番ト短調Op.13「冬の日の幻想」(1866/1874改訂)である。
 4つの楽章のうち、第1楽章には「冬の旅の夢想」、第2楽章には「陰気な土地、霧の土地」という名がついているが、あらまあ、私が住んでるところなんかは第2楽章そのものだわぁ。そして「幻想」じゃなくて「ゲンジツ」である。やれやれ……

 チャイコフスキーとロシア国民楽派の対比についてはこれまでも書いてきたが(たいしたことは書いてないけど)、チャイコフスキーの音楽が季節的に秋から冬のイメージを連想させることが多いのに対し、国民楽派の骨太の音楽は黒々とした土が見える夏を思い起こさせる。あるいは没季節的に聴こえる。

 交響曲第1番の冒頭は、いかにも「凍てつく冬」って感じだ。どういうわけか私は、寒さで力を発揮できなくなったウルトラセブンの話を思い出してしまう。温かい炎が恋しい……。弱ったウルトラセブンはこのときに幻覚を見ていたような記憶があるが、その記憶自体が私の幻覚だったりして……

 チャイコフスキーの番号付き交響曲6曲のうち、後期の3曲は圧倒的な人気があるが、前半の3曲は後期3曲に対し極端に過小評価されているように思われる。音楽の構成とか完成度とか、難しいことはわからないが、前期3曲もなかなか良い交響曲である。

 H.C.ショーンバーグだって、《チャイコフスキーの交響曲は、最初の3作でさえ、個性と旋律面の魅力に富んでおり、永遠の新鮮さを今日も保っている》と書いているではないか!(「大作曲家の生涯」:共同通信社刊)。この本は30年ほど前に刊行されたが、2009年になった現在では、すでにここに書かれている“今日”ではない、なんてことはないっすよね?

 後期の交響曲のなかで、私は第4番が最も交響曲らしくて好きなのだが(マーラーとかベルリオーズが好きなくせに、「何が交響曲らしく」だ、という文句には耳を貸したくない)、第1番は第4番のような曲運びである。メロディーもチャイコフスキーらしく病的に神経質で繊細。

 S.ヴォルコフの「ショスタコーヴィチの証言」(中央公論社)のなかには、チャイコフスキーの交響曲第1番について、R=コルサコフが語ったという話について書かれている。もちろん、この話の背景には、R=コルサコフがチャイコフスキーと敵対していたという事情がある。

 《しかしながら、敵意は残った。プロコフィエフが語ったところによると、彼はチャコフスキイの交響曲第1番の総譜にある誤りを発見したそうでf12c3eab.jpgある。総譜ではフルートが変ロ音に下がっていたからだ。彼はそれをリムスキイ=コルサコフに見せ た。リムスキイ=コルサコフはチャイコフスキイのこの失敗にたいそう満足し、ほくそ笑んで、このようなことを言った。「そうだ、チャイコフスキイはここでなにか間違いをしでかした……間違ったのだ……」》(104p)

 私がふだん聴いているCDはロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルの演奏(1964年録音)。ロシア陣でないのが不思議?いえいえ、このころのマゼールの勢いは、けっこう凄い。録音も良く、重低音もビンビン、ドンドンである。
 ロンドン・レーベルのPOCL3852(2枚組。掲載写真は輸入盤のもの。細かい話だが、雪をホウキで掃いている男性に、なぜか共感を覚える。さらにどうでもよい話だが、そりを引く馬が、さびれた遊園地のメリーゴーランドの人造馬に見えてしまう)。タワーレコードのネット通販に在庫あり↓。2,957円。このCDにはほかに、第2番と第3番の交響曲と幻想序曲「ロメオとジュリエット」が収められており、お買い得!チャイコフスキーの前期3交響曲を聴くにはもってこいである。

 ところで、朝青龍のガッツポーズに対し文句をつけている権威者がいるが、そんなに悪いことだろうか?谷亮子だってオリンピックで金を取った瞬間にガッツポーズをしたような気がするけど、誰も何も言わなかった……。相撲と柔道でそんなに厳粛度が違うのだろうか?