7dae0200.jpg  アメリカの作曲家、ジョン.C.アダムズの「フリジアン・ゲート」(1977)。

彼は1947年にマサチューセッツ州のウォーセスターに生まれ、1971年にハーヴァード大学を出たあとカリフォルニア州に移り、1983年までサンフランシスコ音楽院で教鞭をとった。その後、サンフランシスコ交響楽団の専属作曲家を務めた。

 ジョン・アダムズはミニマル・ミュージックの後継者の一人と言われているが、自分自身のことを「ミニマリズムに飽きたミニマリスト」とか「ミニマリストというよりはポストモダニスト」などと呼んでいる。
 「過去をふりかえることなくして、創作のエネルギーを得ることはない」と自ら述べており、アダムズには伝統に対する強い意識がある。

 彼が広く注目されるようになるのは1970年代後半、ピアノ・ソロのための「フリジアン・ゲート」(フリギアの門)と、弦楽七重奏のための「シェーカー・ループス」(揺れる音型の環,1978)によってであった。
 これらの作品からアダムズは、ミニマル・ミュージックとロマン主義的要素を混合させたような「ポスト・ミニマル」のスタイルへと変化したのであった。
 「フリジアン・ゲート」の“ゲート”とは、旋法や調性の突然の転換のこと(という意味では、「フリギアの門」という邦題は誤解を招くかもしれない)。この“ゲート”が、聴き手に心理的、情動的な変化を呼び起こすことを作曲者は狙っているこの曲は、アダムズとしては既存の旋法性を扱っている唯一の作品ということで、タイトルのとおりフリギア旋法が使われている。。

 「フリジアン・ゲート」は、まるでムード・ミュージックのように始まる曲である。それは、ミニマル・ミュージックらしい特徴を備えているとも言えるが、そこは「ポスト・ミニマル」と呼ばれているように、ちょっと違うものがある。(ミニマル+ロマン)÷2ということが、よくわかる。
 そして、しばしば強烈なアタックによって、曲調が変化していくのである。
 これを退屈と受け止めるか、恍惚になるかは個々の好みの問題だが、私個人としては、ミニマル・ミュージック全般よりは恍惚感は少ないととらえている。そのかわり、ミニマル・ミュージックより現実感がある。つまり、全面的に白日夢に入り込めない、という感じである。

 私が持っているCDは、ヘルマン・クレッチュマーのピアノによる演奏(1997年録音)で、CDそのもののタイトルは「ジョン・アダムズ作品集」。ほかに「シャイカー・ループス」と「室内交響曲」が収録されている。RCAのBVCC789。

 J.アダムズについては、遅々として進んでいないものの、もう少しいろいろと作品を聴いてみたいと私が関心を持っている作曲家である。勝手にすれば、と言われりゃそれまでだけど……

 参考文献:E.ストリックランド/柿沼敏江・米田栄 訳
         「アメリカン・ニュー・ミュージック」(勁草書房)
        長木誠司監修 「作曲の20世紀Ⅱ」(音楽之友社)