「ジャングル・ブック」という曲はとっても良い、という記事や投稿が「レコード芸術」誌にいくつも載ったことがあった。
 ジンマンの指揮によるこの交響詩集が世界初レコーディングされリリースされたときのことである。
 それなら、と私も飛びついた。1995年のことだ。

 作曲者はC.ケックラン(ケクラン)(1867-1950)。
 彼が、イギリスの作家J.R.キップリング(1865-1936)の「ジャングル・ブック」にインスピレーションを得て作曲したものである。

 期待に胸をふくらませて聴いてみたが、おやっ?、どうも私にはピンと来なかった。
 ちなみに、私は「ジャングル・ブック」なるものが、どのような内容の小説なのかは知らない。ただ、曲名が「ジャングル・ブック」というぐらいだから、きっとその音楽は民族色あふれるリズム、たとえばグァム島のディナーショーのときのような音楽を予想していたのだが、全然違った。飲み屋で天ぷらの盛り合わせを注文したら、揚げ天の盛り合わせだった、というくらいギャップを感じた(北海道では「ごぼう天」といった商品名で売られてはいるが、通常は「天ぷら」といえば、練り物の「天」シリーズを意味しないのだ)。

 ところで、三省堂の「クラシック音楽作品名辞典」のケックランの項では次のように書かれている。

 《C.フランク、フォーレ、ドビュッシーの影響を受け、フランス風エスプリ、平均値的作風の管弦楽曲、室内楽曲、ピアノ曲、歌曲を作曲。近代の和声学、対位法の教科書の著者としても知られる》

 たいして特記すべき点はないという感じだ。
 ちょっとかわいそうな感じもする。
 「平均値的作風」っていう言い方は、どうも褒めているようには受け取れないし……

 教科書を書いているように、彼は音楽教師でもあった。
 師はマスネやフォーレ。
 残した作品は200曲以上に及ぶ。
 また、フォーレの「ペレアスとメリザンド」のオーケストレーションも担当したという。
 私だってそのことを先に知っていれば、土着的なリズム、たとえば「キングコング対ゴジラ」のファロ島の原住民の音楽みたいなものを、イメージしたりはしなかったんだけど……。

 静かで上品な作風というわけだ。
 彼の弟子にはプーランクなどがいる。

 私にはいま一つピンとこなかった彼の代表作「ジャングル・ブック」(といっても、録音はずっとなかったということだが)だが、特にその中の1曲について、以下のように書いているものもある。
 
 《1930年代当時、ケックランは新ヴィーン楽派の技法に興味を示した数少ないフランスの作曲家のひとりであった。その影響は、彼のもっとも大がかりな、おそらく最も注目すべき作品『バンダール=ログ(猿のスケルツォ)』作品176にみることができる。1940年に完成されたこの作品は、キプリングの『ジャングル・ブック』にもとづくシリーズ中、7番めにして最後に位置afa80ed6.jpg する交響詩である。描写的な音楽としてのこの『猿のスケルツォ』は、両大戦間のどの作品にも劣らない華麗な効果をもち、輝くような複調和声、素晴らしいオーケストラの妙技(『猿たちの入場』)、アカデミックな対位法と十二音技法の正統的な所作に対する大胆なまでにコミカルなパロディをみせる》(ロバート・P・モーガン編/長木誠司監訳「音楽の新しい地平」:音楽之友社)

 なるほど、そういう思いを持って耳を傾けると、確かに「華麗」で「輝いている」ようにも聴こえてくる。「猿のスケルツォ」という曲名の割りに、あまりスケルツォに聴こえないのは、私の「猿といえば猿回しのジロー」という、実に広がりに欠けるイメージしかないせいなのだろう。

 交響詩集「ジャングル・ブック」は7曲からなるが、各曲のタイトルと作品番号は以下のとおりである。

 ・ 「3つの詩」Op.18
 ・ 「春に駆ける」Op.95
 ・ 「プールン・バガードの瞑想」Op.159
 ・ 「ジャングルの掟」Op.175
 ・ 「バンダール=ログ」Op.176

 ジンマン指揮ベルリン放送響による1993年録音のCDは現在廃盤のようであるが、これはRCAから出ていたものである。
 なお、「バンダール=ログ」の規模(曲の長さ)であるが、演奏に要する時間は17分ほどである。

 全然関係ない話だが、でも今日のブログのタイトルになっているのだが、先日の昼食で食べた幕の内弁当。メインは鶏の照り焼きだったが、ちょっとトリ臭さが強くて、噛み切りにくくもあった。
 最後の一切れになったとき、それが半焼け状態であることに気づいた。
 おいおい、勘弁してくれぇ~。
 新鮮鶏高級料理の店ではない。大衆食堂レベルの店だ。だから「鶏肉には自信あり。レアでどうぞ!」なんてありえないのだ。
 店にクレームをつけることはしなかったし、その後も腹痛は起こさなかったけど、気のせいか、何となく胃のあたりが不快。いや、どう考えても気のせいではない。胃の中でかすかな異変が起こっている感じである。
 寄生虫なんかいないだろうな……。ったく!

 調べてみると、ニワトリの寄生虫には鶏コクシジウム原虫、鶏ロイコチトゾーン原虫の2種類があるようだ。そして、どちらも「ヒトへの感染はない」という。
 ひとまず安心。それでも、もし私がシンビジウムだかコクシジウムだかに寄生されたり、あるいはロイコチトゾーンやら大損こいたら、私は「ヒト」でないということになるわけで、そうなると寄生虫だなんだと騒ぐレベルを超越してしまう。

 鶏肉の生食で問題なのは食中毒の方らしい。特にキャンピロバクター。幸い「超ビビビビッお通じ」に襲われなかったということは、もうその危険は去ったと思うが、胃部の不快感はかなり軽微な中毒反応のような気がしないでもない。

 私は大学生の時、キャンピロバクターによる食中毒に遭ったことがある。
 西友清田店がオープンした時の集団食中毒患者の1人となったのだ。
 あのときはウトウトと眠りかけただけで、肛門が緩み、ビチャァーっと出てしまうくらいひどい下痢だった。
 とにかく、鶏肉はちゃんと焼いて出してくれ!高級鶏料理店以外の飲食店なら特に徹底すべきだ!