ブラームス(Johannes Brahms 1833-1897)の「ハイドンの主題による変奏曲(Variationen uber ein Thema von Joseph Haydn)」Op.56a(1873)。
 同じ1873年に書かれた2台のピアノのための同名の作品(Op.56b)の編曲で、主題はハイドンの「6曲のフェルト・パルティータ(6 Feldpartiten)」(1780頃作曲?)の第6曲変ロ長調(Hob.Ⅱ-46)の第2楽章に用いられた「聖アントニーのコラール(Corale St.Antoni)」である。この「フェルト・パルティータ(=野外のための組曲)」は、2ob,2cl,2fg,2hrn(または、2ob,2hrn,3fg,セルパン)という編成の曲である。

 ハイドンの主題を扱った作品としては、一昨年に、ゲンダイオンガクであるルジツカ(Peter Ruzicka 1948- )の「ハイドンの主題による交響的変容」(1990)を取り上げたが、当たり前のことながら、ブラームスの変奏曲はルジツカの作品のように恐ろしげな緊張感は漂っていない。むしろ、素朴でほっとする温かさがある。
 と同時に、ブラームスらしい骨太さもある。
 なんせ「ドイツ3大B」の一人なのだ。
 このような作品でも、きちんとドイツっぽい厚い響きがある。

 ところで、原曲となった主題だが、全音のオイレンブルク版スコアの解説によると、今日ではハイドンのものではないとされている、ということだ。
 ハイドン自身がこの曲を作品目録に書いておらず、自筆譜も発見されていない。
 また、3本のファゴットとセルパンという編成は、通常のハイドンのウィンド・アンサンブルには見られないものである。さらに、この曲が書かれたと推測される1780年頃、ハイドンはエステルハージ家に仕えていたが、ここのオーケストラにはクラリネットがなかったという。
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 こういったことから、ハイドンの作品目録からはずされたのであるが、ホーボーケンは偽作としながらもHob.Ⅱ-41~46の番号をつけている。
 ブラームスが使った主題にしても、「聖アントニーのコラール」という名がついていること自体、ハイドンのオリジナルではなく伝統曲であることを思わせる。

 そういう事情はともかく、この曲はややコンパクトながらも、ブラームスならではの音を楽しめる。
 冒頭の主題がフィナーレで輝かしく再び現れる部分は、なかなか感動的である。

 CDでは、カール・ベームがウィーン・フィルを振った1977年録音の演奏を、私は好んでいる。写真は旧盤のものだが、現在は別番号で販売されている。カップリングは交響曲第1番。名演と言われた録音である。