入院中の父は、本院で病床の空きが出たため今日の午後、分院から本院の終末ケア病棟に転院する。イン、イン、くどく書いて申し訳ない。

 強い痛み止めのせいなのか、あるいは病気そのもののせいかわからないが、父は昨日からかなり「寝ぼけ」状態だという。
 病室で母親(つまり彼の妻)に向って「包丁を持ったまま歩くな」などと言っているらしい。
 ただ、母親の気性の激しさからすると、けっこう的を得た発言であるようにも思えるし、朦朧状態を演じて過去の恨みをこめて彼女を皮肉っている可能性も、わずかながら考えられる。

 さて、サン=サーンス(Camille Daint-Saens 1835-1921)の交響詩「死の舞踏(Danse macabre)」Op.40(1874)である(いったい何が「さて、」なんだろう?)。

 サン=サーンスはフランスの詩人アンリ・カザリスの詩を歌詞にした歌曲 「死の舞踏」を書いていたが、この交響詩はその歌曲をもとに作曲された。

 そのストーリーは、「夜中の12時に死神が墓場に現われ、ヴァイオリンを弾く。それに合わせて骸骨が踊る。雄鶏が朝を告げると骸骨たちは墓場に戻る」というもの。

 曲で中心的役割を担っているソロ・ヴァイオリンの調弦は変則で、本来は「G,D,A,E」のところを「G,D,A,Es」としている。そういえば、マーラーの交響曲第4番の第2楽章のコンマスも変則調弦である。死神には変則がふさわしい?

ccc84a03.jpg  曲はストーリーにそってわかりやすく進む。
 曲は夜中の12時を告げる、ハープの12回の音で始まり、「死神が弾く」ソロ・ヴァイオリンが現われる。グレゴリオ聖歌の「怒りの日(Dies Irae)」の旋律も現われる。骸骨の踊りはシロフォンで表される。オーボエが朝を告げる雄鶏の鳴き声を模すと曲は静かに終わる。

 なお、このシロフォンによる骸骨の踊りは、彼が生前には出版を許可しなかった組曲「動物の謝肉祭(Le carnaval des animaux)」(1886)の第12曲「化石(Fossiles)」で、パロディー的(自虐的?)に用いられている。

 CDは、イベールのディヴェルティメントのときにも紹介した、マルティノン/パリ音楽院管弦楽団のものを、私はぜひともお薦めする所存であります。
 録音は1958年・1960年と古いが、さすがのデッカ・サウンド!大太鼓の音なんか、ズシーンと最高!ただし、このすごいズシーンは歪んでいるせいもあるんだけど。この2曲のほか、サン=サーンスの「オンファールの糸車」、ビゼーの「子供の遊び」が収録されている。