今日も(そしておそらくしばらくは実況中継的に)、またまた村上春樹の「1Q84」に関する話。
まだ、Book 1(上巻)の300ページちょっとを読んだところだが、とてもおもしろい。
ただ残念なのは、先を読み進むために深酒を控えるとか、睡魔に負けずに読み続けるという根性が、私に備わっていないことだ。
天吾という男性と青豆という女性。
この2人の登場人物のストーリーが交互に語られる。すなわち、奇数番号の章では青豆にまつわる話が、偶数番号の章では天吾にまつわる話が書かれている。これは「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を思い起こさせる。そして、「世界の終わり……」と同じように、別々と思われていた世界が深い接点を持っていたことが判明してくる。
たとえばその一つが「シンフォニエッタ」。「シンフォニエッタ」は、意味なくタクシーの中で流れていたわけではなかったのだ……
まだ途中までしか読んでいない段階での感想だが、このようにストーリーはかなり緻密に計算されて書かれている(大作家に対して実に失礼で身の程知らずの言い分ですまん)。
「アフターダーク」では、村上春樹に対して「もうピークは過ぎちゃったんだろうか」と心配した私だが、いやいや、まだまだである(一小市民のくせして、生意気なこと言ってごめん)。
あまり書くと他の読者前駆体の方々に対してまずいのかも知れないが、氏の、特に初期の作品にあったような「学生運動時代」の退廃的な余韻を引きずった人間が、ここにも出てくる。そのかつての革命家たちは、この小説では自分たちの理想郷を作り、やがて新興宗教団体に変貌する。
この小説に書かれているように、学生運動の活動家がその後、自給自足生活を目指し、さらにはその理念を発展させ「自然農法」などと謳った農産物を販売し始めるグループを作ったという事例は実際に少なからずある。そういう組織は「〇〇会」などという名で、消費者のグループを募り、共同購入という形で販売網を拡大した。中には「この野菜を食べるとお子さんの病気が治る」などと言って、高価な品物を売りつけるケースもあったという。すべての共同購入主宰者が旧活動家というわけではないだろうし、そうだとしても今や世代交代も進んでいるのだろうが、「1Q84」に書かれているような誕生の仕方が一般的だったようだ。
「1Q84」ではこのような組織が宗教団体へ生まれ変わる、その場所が山梨。
また、当初の指導者的立場の夫婦が消息不明になるところなどは坂本弁護士殺害事件を連想させる。つまり、多くの、いや、ほとんどの人はオウム真理教を思い起こすはずだ。
あっ、これ以上書かない。
まだ、私も読み終わったわけじゃないから……
このBook 1の285p。
《天井の小さなスピーカーからは穏やかなバロック音楽が流れていた。ハープシコードの伴奏のついたリコーダー・ソナタだ》
さて、ここに書かれているリコーダー・ソナタは何の曲なのだろう?
作者は具体的なメロディーを思い浮かべながら書いたのだろうか? そんなことは知る由もないが、私は「ラ・フォリア」を連想した。
「ラ・フォリア(La Follia)」はA.コレルリ(Arcangelo Corelli 1653-1713)が1700年に出版した「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集Op.5」(全12曲)の第12曲目の作品(ト短調)。有名な曲で、リコーダー(ブロックフレーテ)用に編曲されて演奏されることもある。
“フォリア(folia)”というのはイベリア半島が起源とされる舞曲で、「常軌を逸した」という意味がある(ねっ?「1Q84」にふさわしい感じでしょ?)。
リコーダーによる演奏として、ブリュッヘンのCDをご紹介。
ブリュッヘンのリコーダー(ブロックフレーテ)、レオンハルトのチェンバロ(ハープシコード)、ビルスマのチェロによる演奏。録音は1960年代。テルデックのWPCS21090。
なお、このCDには、タイトルの語感からも有名な、エイク(Jacob van Eyck 1589/90-1657)の「涙のパヴァーヌ(Pavane Lachrymae)」(1654年出版。「笛の楽園」(全2巻、144曲)のなかの1曲)や、クープラン(Francois Couperin 1668-1733)の「恋のうぐいす(Le rossignol - en - amour)」(クラグサン曲集第3巻第14組曲の第1曲)など全部で7作品が収められている。
私はいま正直に言おう。
「1Q84」、やっぱ買ってよかった……
新館入口(2014.6.22~)
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