村上春樹の「1Q84」のBook 2。

 牛河利治という人物が、突然天吾を訪問してくる。
 牛河……

9c8f9769.jpg  そう。「ねじまき鳥クロニクル」の第3部でも、牛河という人物が登場した。

 「1Q84」の牛河は、《歯並びが悪く、背骨が妙な角度に曲がっていた。大きな頭頂部は不自然なほど扁平に禿げあがっており、まわりがいびつ》なのだが、「ねじまき鳥」の牛河は、《話すときに言葉によっては上唇がくるっとめくれて、煙草の色に染まった乱杭歯(らんぐいば)が見え》るような人物である。
 つまり、この2人の牛河は、ともに目の前にいるだけで嫌悪感を覚えずにはいられないような人物なのである。
 「1Q84」の牛河については、《彼が笑うとひどい歯並びがむきだしになった。数日前に大波に洗われた浜辺の杭のように、その歯はいろんな角度に曲がり、いろんな方向を模索し、いろんな種類の汚れ方をしていた》とも書かれている。どっちも見るに堪えないような汚い歯列ってことのようだ。

 作者には牛河のような人間がよほど嫌いで、あるいは牛河のモデルとなっている人物が実在するなら、よほど嫌な思いをしたに違いない。

 牛河の登場が、「ねじまき鳥」の世界と「1Q84」の世界が何らかの形で結びついているという暗示なのかどうかは、いまのところわからない。ただ、「1Q84」においても、この人物がうれしくない使者であることは感じ取ることができる。

 ところで、Book 2の114p。
 《FMラジオをつけると、ヴィヴァルディの木管楽器のための協奏曲が流れてきた。ピッコロが小鳥のさえずりのような軽快なトリルを演奏していた》という記述がある。

 ヴィヴァルディ(Antonio Vivaldi 1678-1741)は、600以上の協奏曲を書いた。
 私はあまりヴィヴァルディの曲に詳しくない。
 そんなに彼が好きなわけでもない。
 ダッラピッコラ(Luigi Dallapiccola 1904-75)が「ヴィヴァルディは600曲の協奏曲を作曲したのではなく、600の編曲をしたのだ」と言ったというが、私はその発言に喝采をおくりたい側の人間である。

 この小説に出てくる協奏曲はピッコロ協奏曲なのだろうか?
 おそらくそうだろう。他の木管楽器のための協奏曲にピッコロが加わるとは考えにくい。実際はそういう作品があるのかもしれないけど……

 ヴィヴァルディはピッコロ協奏曲を3曲書いている。
 ピッコロ協奏曲と言っても、当時はピッコロなる楽器はなかったから、正確にはフラウティーノのための協奏曲である。
 フラウティーノ(Flautino)は高音域のリコーダーのことである。
 3曲の協奏曲は、
 ハ長調P.78,RV.444
 ハ長調P.79,RV.443
 イ短調P.83,RV.445
 となっている。
 たぶん私はどれも耳にしたことがないと思う。

 どーでもいいけど、休み明けなのになぜこんなに体がだるいんだろう……