ポツダムからベルリンに戻る。
 この日は世界陸上の男子マラソンがあったということで交通規制されており、バスはあっちこっち迂回するはめになった。でも、マラソンが終わって2時間以上も経っている。日本ならこんなにだらだらと規制解除に時間をかけてなんかいないだろう……

 ベルリンの壁を見る。
 壁は市内に何カ所か残っているそうだし、撤去したあとも道路わきに見ることができるのだが、見学したのは壁画が描かれているところ。
 壁と4fc18a20.jpgいっても、あら、案外と薄いし低いのね、って感じである。ハンマーで一生懸命叩き崩していたニュース映像のイメージでは、もっと分厚いものかと思っていた。写真上は壁画のある壁の裏側。

 表側にはいろいろな絵が描かれている。
 そのなかで「おっ、これは私も見たことがある」というのが、ソヴィエト書記長だったブレジネフと東ドイツの議長ホーネッカーのキス場面。う~ん、気持ち悪い……
 それよりも私は、そのすぐそばにあった得体の知れない奇妙な絵に惹かれた。

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 そんなこんなでホテルにいったん戻る。
 近くのスーパーマーケットに面白いものがないか出かけてみる。
 いやぁ、チョコレートだのお菓子だの、おみやげに向くものがたくさん。
 旅行前の「おみやげとりまとめギフト」のカタログに載っていたものと同じチョコレートもほとんどすべて揃っていた。価格はカタログの半値以下。まあ、便利さと引き換えだからカタログ販売が高いのは当然だろうけど、こんなに差があるa447464b.jpgのって感じだ。
 カタログで注文した同じものを店で買う必要はないから、悔しい思いをしながらも他のものを物色。意味のない焦りから、日本でも売っているようなポテトチップスなんかを買ってきましたです。はい。

 ホテルの部屋に戻り買い物品を置いたあと、コンツェルトハウスまで行ってみる。といっても、すぐ近く。途中で歩道の段差で転びそうになった。あぶねぇ~。
 全然コンサート・ホールという感じがしない。周囲も音楽的なものを感じさせる何ものもない。
485932bc.jpg  そういえば街の中を回っていても、音楽的な雰囲気ってまったくない。ウィーンならそうでもないのかも知れないが、ベルリンにはそういうところがまったくない。
 コンツェルト・ハウスにしても、前の広場に立っていたわけのわからない(ドイツ語がわからないという意味)手書きの看板がなければ、本当にここがコンツェルトハウスだとは私にはわからなかった。

 夕食はそのコンツェルト・ハウスの前にあるレス6d9ebfb4.jpg トランで。
 十分食べたと思った最後に、白身魚とサーモンとカジキマグロのグリルが大量に出てきて、それを見ただけでギブ・アップ!ギャル曽根ってすごい奴だなと、こんなところで妙な感心をしてしまった。

 ちょっぴり小馬鹿にされたような満腹感で部屋に戻る。
 音楽を聴いてみる。
 ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827)が書いた摩訶不思議な音楽、「合唱幻想曲(Chorfantasie)」ハ短調Op.80(1808)である。正式名称は「ピアノ、合唱、管弦楽のための幻想曲(Fantasie fur Klavier,Chor und Orchester)」である。
 聴いていてもどかしいというか、意味のない優越感に浸れるというか、聴かなきゃよかったというか、変な曲である。「第9交響曲」のコラールの前提をなす作品とされ、旋1699ff78.jpg 律面でも近いものもあるが、でもすっさまじく変な独特の曲である。
 なんで「こんな日にこんな曲を」と思うだろうが、深い決意はなかった。運命だ。怖いもの見たさ、ならぬ聴きたさ。環境の変化が私を変えてしまったのね……といいながら準備していたわけだけど。

 この曲はピアノがずっと弾き進みオーケストラはなかなか出てこない。オーケストラが必要だったのかとさえ思わせる。ピアノ協奏曲に合唱が加わったという見方も、合唱つきのオーケストラにピアノが加わったという見方もできるが、どっちにしろこういう編成の必然性があったのだろうかと感じずにはいられない。
 合唱が加わってからもノー天気なまま。全然、ドイツらしくというかベートーヴェンらしくない。何の目的で書かれたのだろう?
 ショスタコーヴィチのようにベートーヴェンが「肩透かしを食らわしたろう」と思ったとはとても思えない。らりピーになっていたとも思えない。いつもどおり「芸術は爆発だ!」的に真剣に書いたはずだ。一生懸命書いたんだと考えると、ちょっぴり痛々しい感じすらする。
62b75155.jpg  なんだか、知ってはいけない彼の別な姿を見てしまったような申し訳ない気分だ。飛行機のトイレに入ろうとドアを開けたら、鍵をかけることを知らない老婆が照明もつかない暗闇の中でこちら向きに便器に座っている姿に遭遇してしまった。そのときの気分と言えばわかりやすいだろうか?

 CDはかつて何度か紹介しているケーゲル盤(カプリッチョ)を。そう、東ドイツ崩壊の翌年の1990年にピストル自殺したケーゲルである。
 ケーゲルがこの曲を振ると、命かけてるんだか、テキトーに流しているんだが、ギャグっているのかわからなくなるのも、いとおかし。
 でも、現在は入手困難。すいません。