ちょっとリラックスして、頭をバカにして(誰だ?おまえはいつもそうだろうと中傷する奴は?)音楽を流し聴きしたいというとき、ルロイ・アンダーソン(Leroy Anderson 1908-75)の曲はとっても良い。
誤解して欲しくないが、私はアンダーソンの作品を一段下に見ているわけではない。すごい作曲家だと思う。あの豊富なメロディーがどうして生まれてきたのかと感心もする。ただ、彼を古典派だのロマン派だのと並べること自体がナンセンスだ。クラシックの味わいをもったポピュラー楽曲なのである。日本人指揮者なら若杉弘は取り上げないが山本直純は喜々として振るようなジャンルの曲である(一応両方故人を例にして気を使ったつもり)。
アンダーソンの曲を初めてNHK-FMで耳にしたとき「ウァア~」と思った。これもクラシックなんだという喜び。自分が傾倒しはじめていた音楽ジャンルの幅の広さ。まるで全日本クラシック音楽愛好者連盟の理事長のように喜んだものだ。
そのときに聴いたなかでいちばん気に入ったのは「フィドル・ファドル(Fiddle-faddle)」(「おしゃべり」。1947)であったが、のちにあの有名な「タイプライター(Typewriter)」(1950)も彼の曲だと知った暁には、思わず暁の空に向かって叫んだくらいだ。「カタカタカタカタカタカタ、チ~ン、ジャッ!」(←こんなこと書いて、即時、本当にすまないと思っている) それにしても、ワープロ専用機の時代も終わり、今やパソコンで文書を作る時代。タイプライターなんて知らない人たちも増えているんだろうなぁ……。大学生の時、英語もできないくせにタイプライターが欲しかった。さらに英語ができないゆえに和文タイプが欲しいなとも思った。買わなくてよかったとつくづく思う。その数年後にはNECのPC98シリーズが出て、世の中パソコンブームになったのだ。誰が片手で持てない和文タイプを羨ましがるだろうか?(PC98も片手では持てないけど)。
アンダーソンはボストン・ポップス管弦楽団の指揮者だったアーサー・フィードラーに勧められ作曲の道に入った。1936年のことである。フィードラーは、自分がアンダーソンが書いた曲を気に入ればボストン・ポップスの演奏会で取り上げるという約束もし、この協力関係のおかげでアンダーソンの名曲が次々と生まれていった。
アンダーソンの曲は、もちろん直接使われていたわけではないが、「トムとジェリー」「じゃじゃ馬億万長者」「奥様は魔女」の画面から感じられるようなアメリカの雰囲気を備えている。
必ずどこかで耳にしたことがある作品群。
それはどこか懐かしくもある、なぜか……
私が持っているCDは2種類で、1つはピンカス・スタインバーグ指揮ケルン放送響のもの(デンオン-レーザーライト・レーベル)。ケルン放送響っていうのがなんともミスマッチな感じがするが、けっこうノリノリである。1988年の録音で19曲収録。
もう1つはフレデリック・フェネル指揮イーストマン=ロチェスター・ポップス管弦楽団(14曲)と「管弦楽団」(9曲)によるもの。出たぁ~。究極の秘儀、ただの「管弦楽団」!。いったいどこのオケが名を隠してこっそり録音したんでしょうね。
アンダーソンはフィードラーのほか、このフェネルにも曲を書いている。そのフェネルの演奏はうんとこさアメリカ的。スタインバーグの方が「音楽的」演奏であるが、アンダーソンならフェネルのような演奏の方が楽しいかも。録音は1956年、58年と古いが、ということは存命中の作曲者も聴いたということだろう(ユニヴァーサル・ミュージック-マーキュリー・レーベル)。そして、このCDジャケットの感じが素敵だ。
残念ながら現在はどちらも廃盤。両社になりかわってお詫び申し上げます。
新館入口(2014.6.22~)
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