《……僕は首を振った。僕はまたよく首を振るんだ。「やれやれ!」と僕は言った。ついでに言うと、この「やれやれ!」ってのも口癖なんだ。ひとつには僕のボキャブラリーがお粗末だからだけど、あと、僕はときどき実際の年齢よりずっと子どもっぽく振る舞っちまうんだよ》
J.D.サリンジャー著、村上春樹訳の「The Catcher in the Rye」(白水社)。
野崎孝訳の同著のタイトルは「ライ麦畑でつかまえて」であり、こちらのタイトル訳はひじょうに有名である。
この小説、私は初めて読んだ。
タイトルは知っていたが、実際に読んでみてこういう内容だとはまったく思わなかった。
もっと「青春、青春」しているとか、ほろ苦い恋愛物語なのかと思ったが、まったく違った。同時に、なぜこの本がこんなに読まれているのか、また国によっては発禁となっているらしいがはたしてそこまでの内容だろうか、と正直なところ思った。
それでも確かに面白い。ただ、こんな数日間の話だったの?っていう思いも残った(私が理解していないだけで、ブラックホールのような深みがあるのかもしれないが)。村上春樹好みだなっっていうのも、強く感じた。
村上春樹はこの小説の主人公、16歳のホールデン・コールフィールドの口癖まで「やれやれ!」としている。ちなみに、野口訳の本を立ち読みしたら、この部分は「ちぇっ!」となっていた。
やれやれでもいいけど、どうもコールフィールドの性格からすれば「ちぇっ」の方がしっくりいく感じが私にはする。
ボキャブラリーがお粗末な人が「やれやれ」って言葉を使うかどうか疑問だし、年寄りくさくもある。
小説中に出てくる歌、「誰かさんが誰かさんとライ麦畑で出会ったら」(Comin' Through The Rye)は、もともとはスコットランド民謡で、詩はスコットランドの詩人ロバート・バーンズによる。
日本では「故郷の空」とか「ライ麦畑を通り抜け」などの名で知られる。
歌詞は、
If a body meet a body
Comin' thru the rye
If a body kiss a body
Need a body cry?
Ev'ry lassie has her laddie
None they say she
Yet all the lads they smile on her
When comin' thru the rye
She's a' comin' thru the rye
Ev'ry lassie has her laddie
None they say has Annie,
Sweet Annie,
The lads all smile,
She's a' comin' thru the rye
で、ライ麦畑で誰かと誰かが出会ったら、きっとキスをするだろうetc.etc.といった内容。
ライ麦は成長すると2m近くにまでなるので、その畑の中に入ってしまうと、周りからは見えなくなってしまう[E:heart04]。そういう、いわば非教育的な内容である。
ところが日本では、以下のように原詩とはまったく違う歌詞がつけられ、またヨナ抜き音階(第4音のファと第7音のシが使われない、演歌などにも多く使われる音階)で覚えやすいために、明治以降、「故郷の空」は唱歌として歌われてきた。
1.夕空晴れて秋風吹き
月影落ちて鈴虫鳴く
思へば遠し故郷の空
ああ、我が父母いかにおはす
2.澄行く水に秋萩たれ
玉なす露は、ススキに満つ
思へば似たり、故郷の野邊
ああわが弟妹(はらから)たれと遊ぶ 最近では絶滅しつつあるが、横断歩道で歩行者用信号が青になったときに、このメロディーが使われていた。
その後ドリフターズが「誰かさんと誰かさんが」で、この歌を別歌詞で歌った。教育上よろしくないと、批判もずいぶんあったらしいが、歌詞の内容としてはドリフターズのものが最も原詩に近い。
なお、原曲は日本の調子とはちょっと違う。
ロジェ・ワーグナー合唱団の演奏なんかを聴いてみるとその違いがわかる。
新館入口(2014.6.22~)
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