エニグマである。
ヒグマでもツキノワグマでもない。
エニグマである。 エルガー(Edward Elgar 1857-1934)の「創作主題による変奏曲『エニグマ(謎)』(Variations on an original theme 'Enigma')」Op.36(1898-99)。いわゆる「エニグマ変奏曲」。
この曲はすでにエルガーが有名な作曲家となっていた時期に発表され、その大成功によって彼の人気は不動のものとなった。
「エニグマ変奏曲」はエルガーの友人らを描いた作品。各変奏曲にはエルガーの妻や友人たちを暗示したイニシャルが書かれているために、「謎」の変奏曲と呼ばれる(譜例参照。このスコアはEulenburg社のもの)。
エルガーによると、この曲の主題そのものは「決して姿を現すことのない主題」に対して対位法的な役割を果たすのだという。つまり、全曲を通じて別の大きな主題があるが、それは演奏されず、姿を現さないというわけだ。
その聞こえざる「謎」のテーマの“謎”を解明した者は誰もいない。
わっかるわけないよなぁ。
曲の構成は次のとおり。
主題~2つの部分からなる。
第1変奏「C.A.E.」~このイニシャルはエルガーの妻、Caroline Alice Elgar のもの。
第2変奏「H.D.S.P.」~アマチュア・ピアニストのHew David Steuart-Powell。
第3変奏「R.B.T.」~Richard Baxter Townshendという人物。変った声の持ち主だったという。
第4変奏「W.M.B.」~活気ある精力的な学者William Meath Baker。
第5変奏「R.P.A.」~音楽好きの学者Richard Penrose Arnold。
第6変奏「Ysobel」~エルガーのヴァイオリンの弟子Miss Isabel Fitton。彼女はのちにヴィオラに転向。そのためヴィオラが活躍する。
第7変奏「Troyte」~エルガーの親友Arthur Troyte Griffith。
第8変奏「W.N.」~Miss Winifred Norbury。
第9変奏「Nimrod」~エルガーの友人のイェーガー。イェーガーはドイツ語で狩人の意味があるが、エルガーは旧約聖書の創世記に出て来る狩りの名人のニムロッドの名にかけた。
第10変奏「Dorabella」~Miss Dora Penny。エルガーはこの女性を、モーツァルトの「コシファントゥッテ」のドラベルラの名に似ているため、こう呼んでいたという。
第11変奏「G.R.S.」~ヘリフォード大聖堂のオルガニストGeorge Robertson Sinclair。彼の愛犬Danも描かれているという。
第12変奏「B.G.N.」~友人でチェロの名手Basil G.Nevinson。
第13変奏「★★★」~イニシャルはなく謎。この曲を作曲中に航海していたLady Mary Lygonの安全を祈ったものとされている。メンデルスゾーンの「静かな海と楽しい航海」が聴こえてくる。
第14変奏「E.D.U」~Eduはエルガーの愛称。つまりエルガーの自画像。
2001年10月に行なわれたテミルカーノフ指揮サンクトトペテルブルク・フィルの札幌公演。
メインプログラムはチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。
アンコールの曲が演奏されたが、その時私は「『悲愴』のあとに別な曲を聴かされるのかよぉ!」と思った。こういう曲のあとは、別な曲でその余韻を消されたくないものだ。
ところが、そこで始まったのは、「エニグマ変奏曲」の第9変奏であった。そのじつにしっくりいったこと。
アンコールの選曲のセンスの良さに感嘆したものだった。
ところで、いまこれを読んでいるあなたッ。
実は東京なんかにお住まいじゃありませんこと?良いお話があるんですよ、オ・ク・サ・マッ!
私がふだん感動したり文句をつけたりしている、でもすごく愛すべき札幌交響楽団の東京公演が11月17日19時から、初台の東京オペラシティコンサートホールで行なわれるって、もしかしてご存知でした?
指揮は尾高忠明、チェロ独奏がガイ・ジョンストン。
オール・エルガー・プログラムで、序曲「フロワッサール」、チェロ協奏曲、エニグマ変奏曲。
お値段はいちばん高いS席で6,000円。
ぜひ、北海道の響きを聴きにおいでください。自腹で。
全然どーでもいいことかも知れませんが、たまたまタイミング良く出張が重なれば、私も行っちゃうかも知れない……。その「たまたま重なる可能性」は、いまのところかなり現実味を帯びている。
なんだかいけそうな気がするぅぅぅ~っ。
新館入口(2014.6.22~)
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