昨夜のことである。
外のボックスにゴミを捨てに出たら、アガァ~ッ、アガァ~ッという大きな声が上空から聞こえてきた。
なんだ?
見上げると、地上の明かりで鳥の群れの姿が見えた。
何の鳥か知らないが、そこそこ大きい。
そして、実に整然としたV字型で編隊を組んで南の方へ飛んで行った。
いったいどうしてあんな具合に編隊が組まれるのだろう。
どうやって先頭を決めるのだろう?
V字型の開く角度や、前後との間隔はどのような協議の場で決められるのだろう?
不思議である。
小学校低学年のマスゲームよりもはるかに芸術的だ。朝鮮のマスゲームにはまだまだ及ばないだろうが……
それを見て思い出した。
おぉ、パパ・ハイドン先生の交響曲に「V字」ってえのがあったな、と。
一般常識的に考えると(一般的常識とは、自己完結納得型でタクシー乗り場で横入りをするのはおかしい、といった感覚を言う)、「V字」って言うからには、オーケストラの並び方がVの字になっているんだろうな、とか、指揮者がブイブイしちゃうんだろうな、と思ってしまうが、これまた大違い。
もう、ハイドンが気の毒になってしまうくらいである。
というのも、ロンドンでこの曲の楽譜が出版されたとき、なぜか表紙にVの字が印刷されていたからだという。
やれやれ。
とはいえ、このハイドン(Franz Joseph Haydn 1732-1809)の交響曲第88番ト長調(1787)は、そのいい加減でありがたくないニックネームをつけられたことはともかくとして、大胆な書法によって成功した作品だという。
この曲は同じ年に書かれた第89番ヘ長調とともに、ハイドンが楽長を務めていたエステルハージ家の楽団のヴァイオリニスト、ヨハン・ペーター・トストのために書かれた。トストはこの楽団を去ってパリで活動することとなり、ハイドンに曲を依頼したのである。
パリの楽団ではオーケストラの編成上の制約が少なかったせいか、この曲ではオーケストラの扱いに変化が見られる。特に、トランペットとティンパニが用いられていることは当時としては異例である。
また、第1楽章では休止が多く、穏やかな音楽と激しい音楽が対象的に取り扱われており、ただ歌わせるだけが主流だったそれまでの交響曲とは異なった面を見せている。
とはいえ、演奏によっては退屈極まりなくなるのも事実。
そういう意味では、ハイドンの音楽の演奏というのは相当難しいのだろう。
交響曲第82番のときに私はクイケン指揮のCDを紹介したが、第88番でもクイケン盤を推したい。オーケストラはラ・プティット・バンド。
88番から92番までが収録された2枚組の輸入盤(ヴァージン・クラシックス)。録音は1989年。
