ダーク・ダックス、ボニー・ジャックス、デューク・エイセス……。
ある世代以上の方なら良く知っているはずだが、これらはいずれも男性4名から成る“合唱隊”の名前である。似て非なるものに“玉川カルテット”がある。
今ではすっかりすたれてしまった感があるが、昔はこれらのグループがTVの歌謡番組やバラエティー番組によく出演していた。特にダーク・ダックスは有名で、彼らのレパートリーには多くのロシア民謡であった(なお、清水脩の合唱組曲「山に祈る」もダーク・ダックスのために書かれた)。
「一週間」という有名なロシア民謡があるが、おそらく私がこの曲を初めて耳にしたのも、ダーク・ダックスの歌によるもので、幼心にも変な歌だなぁと思ったものだ。
だって、こんな歌詞だ!(ご承知だと思うが)
日曜日に市場に出かけ 糸と麻を買って来た
月曜日はお風呂を焚いて 火曜日はお風呂に入り
水曜日はあなたと会って 木曜日は送っていった
金曜日は糸巻きもせず 土曜日はお喋りばかり
恋人よこれが私の 一週間の仕事です
このなかで、子供でもおかしいと思うのが2フレーズ目である。月曜日に風呂を焚いて、入るのが火曜日だって?
当時、私の家には風呂はなかった。銭湯に行っていた。それでも、前の日に風呂を焚くというのはおかしいと感じた。
その頃銭湯は15時オープンだった。しかし、その日のうちに風呂を沸かすだろう。
確か小学生低学年の頃に通っていた、浦河は堺町の”まさご湯”も、夜中から火を焚いてはいなかった。だとすれば、ロシアの風呂はそれよりもはるかに大きな、沸くまでに丸1日を要するようなものなのだろうか?そもそも、ロシア人は日本人のように湯につかる習慣があるのだろうか?
そして今、あらためてこの歌詞を読むと、さらなる謎が浮かび上がる。
まず、こいつは男か女か?
糸巻きをするということは女の可能性が高い。しかし広大なロシアのことだ。糸巻きが大好きな男がいてもおかしくない。だいいち、狭い日本においてだって、昨日の朝の電車では、私の向かいの席に糸巻きが好きそうなボーッとした顔の男が座っていた。
だが、ここでは歌詞の主人公は女であると考えるのが妥当だろう。
第2の疑問。日曜日丸一日かけて市場に出かけたというが、いったい何十キロメートル離れた市場に行ったのだろうか?しかも一日かけて買って来たのは糸と麻だけ。何と効率の悪い、やる気のない女だろう!“はじめてのおつかい”で重いダイコンを買って来る子供を見習ってほしい。
疑問その3。こいつは月曜日はずっと風呂釜に付きっ切りだったのだろうか?風呂に入るために、ほかのことをすべて犠牲にして。
この時点ですでに、この女はノイローゼなのではないかと思えてくる。
疑問その4。水曜日にこいつは男を泊めているが、独り暮らしなのだろうか?ならば、一晩かけなければ温まらないほど巨大な風呂がなぜ必要なのか?さらに、恋人を泊めるときには風呂には入らないのか?いやぁ~ん、不潔ぅ~!
疑問その5。金曜日は糸巻きもせずに、それじゃあ何をしていたのか?風呂掃除をするとしたら、この日しかないではないか!それなのに何もしないで、雪原にポツンと1本だけ生えているシラカバの木のように過ごしたのだろうか?
疑問その6。「土曜日はお喋りばかり」とあるが、こんな女に友達がいるのだろうか?誰と話したのか不明である。電話が備わっていたとは到底考えられない。糸と麻を相手に会話したのだろうか?
疑問その7。「これが一週間の仕事です」と自慢しているが、これのどこが仕事だと言うのか?糸と麻を買って風呂を焚き、風呂に入った翌日に恋人と一夜を過ごし、お喋りばかりしているのが、こいつの職業なのか?無理やりあてはめるなら、週に1度しか客が来ない、ソープランド嬢で、ボイラー係も兼任していて、客待ちの時間は縫物のバイトをしている女ということになる。 疑問その8。これと同じ一週間を延々と繰り返すのか?私だったら1ヶ月分くらいまとめて糸と麻を買っておくぞ。そしたら日曜日に時間が空くだろ。
ということで、ロシア民謡「一週間」に関する考察を終えることとする。
それよりも何よりも、広く普及してしまったこの歌詞の訳に大きな謎があるように思えてならない(この訳詞は“楽団カチューシャ”なるものによる)。当時の日本人の生活を歌詞にした可能性も捨てきれない。
ロシア民謡が日本で広く歌われたのは、“うたごえ運動”と大きく関係するのだろうが、そのメロディーが日本人好みでもあったと思われる。
このブログでも、何度かロシア民謡について書いたが(「赤いサラファン」を歌いながら現実的雪かき、“黒い瞳”の鈴木明子、など)、ロシア、ソヴィエトの多くのクラシック音楽作品にもいろいろな民謡が引用されている。何せソヴィエト時代にはロシア民謡に基づいていない曲を書いたら当局からガンガンいじめられたくらいだから。
そんななか、今日はアルメニアのアルチュニアン(Grigor'evich Arutyunyan 1920- )のトランペット協奏曲(1949)を。
トランペットの名人芸披露といった、いかにも派手でかっこいい曲である。
アルメニア民謡だと思うが、ハチャトゥリアンのピアノ協奏曲や、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番にも出てくるメロディーが現れる。
ここではモーリス・アンドレの独奏による演奏を。指揮はモーリス・スーザン、オーケストラはフランス国立放送フィル。1964年の録音。他に、私は名曲だと思っているジョリヴェのトランペット協奏曲第2番などが収められている。
それにしても、CDのライナーノーツにある写真のアンドレ(右側)の表情、ちょっと危ない人みたいである(このCDは現在廃盤)。
新館入口(2014.6.22~)
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