11月17日19:00~。
 東京オペラシティコンサートホール。
 プログラムはすべてエルガー(Edward Elgar 1857-1934)の作品。

 1曲目は演奏会用序曲「フロワサール(Froissart)」Op.19(1890)。
 2曲目がチェロ協奏曲ホ短調Op.85(1919)。
 そして、メインは「エニグマ変奏曲(Enigma Variations)」Op.36(1898-99)。

 尾高/札響はかなり高レベルの演奏を聴かせてくれた。

 最初の「フロワサール」からオケ鳴っている。

 2曲目のチェロ協奏曲。
 一般的に耳にするよりも、さらに内向的な演奏。
 独奏のガイ・ジョンストンは、よく言えば繊細、悪く言えばひ弱な印象(音が、です)。
 その点が物足りなく感じた。

 エニグマは特に素晴らしい演奏。
 こういう演奏はなかなか聴けないだろう。

 でも、全体を通じて何かが物足りない。
 耳に、体に、音が響き伝わって来るか来ないかでのうちに、空中に散ってしまう感じだ。
 穴が開いてしまったスピーカーからの音を聴いてるかのように。

 そう、おそらくはホールのせいだろう。
 このホールだって音響は悪くはないはずだ。
 しかし、私たち(札幌の聴衆)は、あのすばらしいホール、Kitaraの音に慣れてしまっている。
 当夜のコンサートが、Kitaraやサントリーホールで行なわれていたのなら、この日の札響の演奏はかなりの名演。聴衆も鳥肌ものだったと思う。

 昔は、劣悪な音と言われていた北海道厚生年金会館で、定期演奏会を開いていた札響。そして、それを毎回耳にしていた私。
 それが、オペラシティというホールでも物足りないと思うなんて、なんと贅沢な。
 贅沢は敵だ[E:sign02]

 ただ、ホールのせいにしていては、Kitara以外じゃダメ・オケってことになる。
 尾高氏がこのホールの響きに応じたオーケストラの鳴らせ方をしていたかどうかということになるが、そこはちょいと甘く見ていたかも。Kitaraと同じように鳴らしたのではないか?
 全体的にもう少しオケを鳴らさせたなら、だいぶ違ったかも知れない。

 ところでこの日は、食事をとらないでコンサートに臨んだ。
 2曲目のチェロ協奏曲が始まったとき、私は余計なことに、「こういう静かめの曲のときにおなかが鳴ったらつらいな」と、ちょっとだけ考えてしまった。

 その直後である。

 いきなり、キュイッ、キュゥゥゥ~、キュルキュルキュゥゥゥ~、ゴブヴァッ、キュララゴロキュヴァ、グッッピィキュと、おなかの中心部から、凍結した水道管が通じ始めるときのような音がしはじめたのだ。
 こう見えても、私はメンタル的には弱いタイプなのだ。
 変なことを考えると、そのとおり悲惨な道へと導かれるのだ。
 不安は私をあざ笑うかのように現実化するのだ。

 腹のことを気にしていては事態は悪化するばかりだろう。
 「ミミズってこんな声で鳴くのかな」などと考えて、気を紛らわそうとしたが、一向に収まらない。

 これが発展し、ごっ、ごっ、ごろっ、ゴゴゴゴゴゴロゴログウゥゥゥ~となったらどうしよう。

 私はスーツを腹の前の方に引っ張って腹を覆い、さらにその上から腕を乗せ、強めに腹を押さえた。限られた条件のなかで遮音対策をしなければならない。
 でも、高周波ギュルギュル音は漏れてくる。

 やがて、オケの音量が上がるところにくると、腹は静まった。
 まったく、“病(じゃないけど)は気から”だ。

 それにしても、うかつだった。
 何か少しでも固形物を摂取すべきだった(あんまり食べ過ぎると、別な音、つまり腹が下る音が鳴り出す危険性がある)。
 私の隣に座った方、もしかしたら聞こえたでしょうか?
 すいません、腸が鼻歌を歌ってしまって……

 そうそう、チェロ協奏曲が始まってすぐに1階席で携帯電話の着信音が3コールほど鳴った。
 どうしてこういう失敗をしでかす人があとを絶たないのか、私にはまったく理解できない。

 それは別格として、あちこちでパンフを床に落とす音や、キャンディーの包装紙を破く音、カバンをごそごそする音、何か得体の知れない打撃音など、とにかく雑音が発生し続けた演奏会であった。

 アンコールは付随音楽「子供の魔法の杖(The wand of youth)」Op.1(1869頃)から、「野生の熊(The Wild Bears)」。
 「子供の魔法の杖」は児童劇のための音楽で、のちに2曲の組曲に編曲されている。
 第1組曲Op.1aは7曲から成り、1907年初演。第2組曲Op.1bは6曲から成り、1908年初演。
 この日アンコールで演奏された「ワイルド・ベア」は第2組曲の終曲である。
06d7cc86.jpg  ちょっとエルガーっぽくない、民族的で、細かい動きの躍動的な音楽。
 アンコールとしてはなかなか楽しい曲であった。

 ということで、先日の私のアンコール曲の予想はみごとにはずれ。
 これだもん、ロト6だって当たるわけがない。
 毎週芸術的に数字をはずしている。

 この日の演奏会、悪天候ながら8割ぐらいお客さんが入っていたと思う。東京はすごい。やっぱり人が多いのだ。

 アンコールで演奏した「子供の魔法の杖」は、ジャッド指揮ニュージランド響のナクソス盤のCDが入手しやすい。