金曜日、私はアイゼンシュタイン氏に、2月に行われる札響定期演奏会のA日程(金曜日公演)のチケットをプレゼントした。
この日はショスタコーヴィチの交響曲第8番が演奏されるのだ(指揮は高関健)。札響がこの交響曲を取り上げるのは初めて。私はA日程、B日程の2日連続で聴きに行く。
アイゼンシュタイン氏は私のブログ記事を読んで、ショスタコのジャズ組曲のCDを買ったという、ふだんでは想像できないような機敏な反応をした。
別に氏がショスタコを好きなわけではないが(氏の上司のベリンスキー侯爵はショスタコが好きだと言うが、ショスタコ検定試験をまだ行なっていないのでどの程度なのかは現時点で不明である)、8番という名曲を生で聴いてもらいたいと思ったのだ。
「アイゼンシュタインさん、2月26日の夜は空いてますか?」
氏は手帳も何も確認せずに即レスで答えた。
「空いてます!」
「では、このチケットを差し上げます」
「なんですか?」
「札響定期のチケットです。ショスタコーヴィチの交響曲第8番が演奏されます。ぜひアイゼンシュタインさんにも聴いていただきたいのです」
「へぇ~、ショスタコーヴィチの交響曲第8番ですかぁ~っ、へぇ~、すっごぉ~い」
「聴いたことがおありなんですか?」
「ありませんっ!」、
ということである。
「でも、その、ありがたいんですが、私1人で行けと?」
「私も行きます」
「あぁ、よかった」
氏は、チベットの山奥への1人で出張せよ、と突然命じられたかのような不安にかられていたのだった。
あとは、演奏会の日にちが近づいたら、おやつは持って来ないこと、もちろんバナナもだめ、後ろの人に迷惑をかけるから下に載せたCDジャケットのサティがかぶっているような帽子はかぶって来ないこと、などの些細な注意を与えればよいだろう。
そのサティ。
音楽之友社の「大作曲家の肖像と生涯」では、サティのことをこう書いている。
《大手スーパーマーケット。前身はニチイ》
ウソですってばぁ、オクサン!
サティって作曲家のサティ(Erik Satie 1866-1925)のことである。
《芸術家のなかには変り者が少なくない。然し変り者であることにおいてフランス近代音楽家中でサティーの右にでる人物はいない。いやむしろ彼は全フランス音楽史を通じて最大の変り者であるかも知れない。
第一に彼は皮肉屋で冷笑を事とし孤高を好む。次に彼は常に満々たる反抗心といたずら気を持ち、わがまま者であり、その思想、言行には人の意表に出でた端倪すべからざるものがある。さらには彼は子供のように単純で、率直で無邪気で、そのためかえって事物の本質を掴み、感じ取る直観力と直覚力を持っている。……》
なんだかひどく昔の文書に出会った感じがする。
これが「クラシック音楽作品名辞典」(三省堂)になると、次のようになる。
《20世紀フランス音楽の出発点において特異な立場にある作曲家。その作品および行動は伝統から逸脱しており、反アカデミズム、反ロマン主義を貫いた。中心をなす作品はピアノ曲である。初期の作品では機能和声を無視する大胆な手法を試み、ドビュッシー、ラヴェルにも影響をあたえたが、その後の作品は、表題の風刺性とともに、何ものにもとらわれない純粋な音楽的感性の奔放な表現を追求し、ダダイズムに接近、第1次大戦後の「6人組」や、彼の信奉者の集まりである「アルクイユ派」に多大の影響を残した》
すっきりしますね。こちらの方が。
そのサティが再評価されるようになったのは、実はそれほど前のことではない。ここ20年ほどで急速に広く名が知られるようになったんじゃないだろうか?
おそらく彼の作品の中でも、特に知られているのが「3つのジムノペディ(3 Gymnopedies)」(1888)であろう。
ジムノペディというのは、古代スパルタのディオニュソス祭で、戦没した勇士を悼む時の裸の踊りのことである。
ドビュッシーはこの1番と3番を1895年頃に管弦楽編曲しており、そのせいもあって有名になった(管弦楽編曲版の第1番が原曲の第3番で、第3番が原曲の第1番である)。
ただ、ジムノペディに関してはピアノ原曲版を聴くことを私はお薦めしたい。
この曲、楽譜を見てもとてもシンプル。
しかし、出てくる和音は独特の美しさを持っている。
浮かんでは消えていくふんわりした音……
まさに独特の世界である。
私が好んで聴いている演奏はラインベルト・デ・レーウのピアノによるCD。1977年録音。フィリップス。
この演奏がまた独特。
気負いがないというよりも、気が入ってないんじゃないかという演奏。
本当にピアニストが弾いてるの?とさえ思ってしまうような、ゆったりとした進行。
要するに、一聴すると、「この人、下手なんじゃない?」っていう演奏なのだ。
ところが、何度か聴いているうちに病みつきになってしまう。
新館入口(2014.6.22~)
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