74014cb9.jpg  ドヴォルザークの「スラヴ舞曲第1集」に続いて取り上げるのは、当然のこととして「スラヴ舞曲第2集」ってことになるのが自然だが、この作品、私はけっこう思い入れがあるのでまだ出し惜しみ。

 IND氏によるトンボの死骸のような疲労が残っているときに、甘美で切なく、といはいえどこか幸福感のある「スラヴ舞曲第2集」について、書きたい気分にならない。

 ところで、IND氏との会食は札幌ESTA10階の四川飯店で行なったが、ここの麻婆豆腐とタンタン麺は本当に美味しい(写真はイメージ。札幌ESTAの四川飯店のものではありません)。タンタン麺はここと江別駅横の“えべつみらいビル”にある「松の実」のものが最高だ(最高に私の口に合う。ただし、この両者の味は対極的とは言わないが、別なベクトルである)。
 ひとつだけ気がかりなのは、“みらいビル”というこの建物、あまり明るい未来を感じさせない点だ。
 麻婆豆腐については、ESTAの四川飯店のものが、私にはこれまで食べたあらゆるものよりも、ここのが好きである。

 で、土曜日の朝、クモの巣に絡まったトンボのような気分で目覚めると、台所に“エバラ担々ごま鍋の素”が置いてあった。
 やれやれ、今日の夜はタンタンか……
 昨日美味しいタンタン麺を食べたのに……
 やれやれ……

 ちなみに陳建民(陳建一の父)によると、タンタン麺というのは、四川省で夜鳴きそば屋がこれをかついで売り歩いたもので、担ぐ、つまり担々麺の表記が正しい。よくある坦々麺という字は誤り。
 エバラの素も、ちゃんと“担々”と書かれている。

e720f861.jpg  夜鳴きそばと言えば、みなさんすぐにこなきじじいを思い起こすだろうが、クラシック音楽にそのような曲はないので、「スラヴ舞曲第1集」のときにとても良い人として登場したブラームスの、これまた「スラヴ舞曲」つながりで「ハンガリー舞曲集(Ungarische Tanze)」を。

 ブラームス(Johannes Brahms 1833-97 ドイツ)は、ワーグナー(Richard Wagner 1813-83 ドイツ)と同時代の大作曲家だが、この2人は正反対に位置する存在だった。

 ワーグナーが革新的だったのに対し、ブラームスは古典派であり、抽象的な形式の作品を書いた。オペラも標題音楽も書かなかった。
 ブラームスは音楽の発展にはほとんど寄与することがなく、存命中も進歩的な人たちは彼を軽視した。ワーグナー派のウォルフ(Hugo Wolf 1860-0903 オーストリア)は、ブラームスの新曲が発表されるたびに躍り上がってこれに食らいつき、笑いのめしたという。
 マーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)は、ブラームスを「いささか狭量のマネキン人形」と読んだ(以上、H.C.ショーンバーグ「大作曲家の生涯」(共同通信社)による)。

 それが、今や“ドイツの3大B”の1人なんだから、歴史はわからないものだ。

 そのブラームスがまだ20歳の時の話。
 彼はハンガリーのヴァイオリニストのエドゥアルト・レメニーのピアノ伴奏者として約1年ほどの間、演奏旅行で各地を訪れた。
 この間、ブラームスはレメニーから多くのハンガリー・ジプシー音楽を教わった。

 それから16年後(ブラームスは何でも時間がかかるのだ)、1869年にそのときの資料をもとにしてピアノ連弾用の「ハンガリー舞曲集」をジムロック社から出版した。
 10曲から成るこの曲集は大ヒット。
 それから11年後(とにかく時間がかかるのだ)の1880年、11曲から成る第2集をジムロックから出版し、全21曲から成る「ハンガリー舞曲集」が完成した。

 出版されたとき、レメニーからこの曲集は著作権侵害だと訴えられたというが、結局はブラームスの“編曲”ということで落ち着いた。

 全21曲中、第11、第14、第16曲はブラームスの創作、つまりオリジナルと考えられている。
 またオーケストラ編曲は(現在ではピアノ連弾としてよりはオーケストラ編曲版で聴かれることの方が多い)、ブラームス自身が行なったのは第1、第3、第10番の3曲だけで、ほかはドヴォルザークなどが行なっている。

 ここで紹介するヴェラー指揮ロイヤル・フィルのCDでは、第2番がハレン、第4・8・9番がショルム、第5~7番がシュメリンク、第11~16番がバーロー、第17~21番がドヴォルザークの編曲による版が用いられている。
 録音は1982年。デッカ。
 でも、廃盤。ごめん。

9c274e62.jpg  「何々?ブラームスはジプシーの音楽を編曲しただけ?しかも、それをオーケストレーションしたのはたったの3曲?けしからん。じゃあ、管弦楽版なんて聴きたくない」という方には、連弾によるCDを。
 ベロフとコラールの連弾。1973~74年の録音。EMI。

 さっ、月曜日だ!
 楽しい仕事が始まる。