昨夜のことである。
私は自宅のキッチンの調理器(IHヒーター)の前でタバコを吸った。
家でタバコを吸える場所はここしかない。
なぜなら、レンジ用の換気扇が頭上にあるからだ。
それを“中”にして、それに向かって煙を吐くのだ。
吸い終わったあと、換気扇を“常時歓喜”、だったら嬉しいが、そうではなく“常時換気”モードに戻すのを忘れていた。
すると、妻が私に「換気扇、消して」と言った。
だから私は「いぃち、にぃぃ、さんっ!……おや、消えてしまわないですねぇ」と言ってみた。
ひどく不快かつ馬鹿にしたような顔をされた。怒りも混じっていたと思う。
わかってますよ、私だって。「消して」というのは「OFFにして」って意味だってことは。ったく、ユーモア(そして婉曲的な正しい日本語指導)がわからないやつなんだから……(「ちちんぷいぷい」とか「ブビデバビデブー」とか言えばよかったかなと反省している。意味はあってないけど)。
さて、とてもとても個人的な、そして針の穴ほどちっぽけでささやかな記念日ではあるが、今日のブログは第900話である。
これまで日記すら満足に書けたことがない私が、病に倒れることもなく、よくぞ900回まで書いたものだ。そのために過去に書いたことを、老人の回想のようにまた書いたりしているが、そこは大目に見てほしい。どうせ読者だって覚えていないんだから……
900にこだわって、1900年に作曲された作品を。
だって西暦900年の音楽(その頃の時代をロマネスクという)なんて知らないから……。ここはお客様に1000ポイントの大サービス!
シェーンベルク(Arnold Shonberg 1874-1951 オーストリア→アメリカ)の「グレの歌(Gurrelieder)」(1900-11)。
何?
着手したのが1900年であって、完成したのは1911年じゃないかって?
そんな文句を言われたら、ワタシ、グレちゃう……
あ~、つまんねぇ……
この曲、1900年から翌'01年にかけて大部分が作曲されたが、オーケストレーションを完成させるのに、その後10年を費やしたのだ。
1911年といえば、マーラーが亡くなった年だ。
それはおいといてぇ~……(←頭のおばかな人が書いてるみたい)。
シェーンベルクといえば12音音楽の創始者で、あたかもメガトン級爆弾を投げつけたかのように、20世紀音楽に多大なる影響を及ぼした人物。
しかし「グレの歌」は無調主義になる前の作品である。
「グレの歌」の歌詞は、デンマークのイェンズ・ペーター・ヤコプセンの未完の詩集「サボテンの花開く(En Cactus springer ud)」をローベルト・ペーター・アーノルドが独訳したものから採られている。作曲家自身が、この独訳詩に手を加えてもいる。
「サボテンの花開く」は、ヤコプセンがイプセンの「ペール・ギュント」に感動して書き始めたもの。また、以前に書いたディーリアスのオペラ「フェモニアとゲルダ」のストーリーもヤコプセンの作品による。
シェーンベルクは初期には後期ロマン派の色彩が濃い作品を書いた。
1908年に無調を試み、無調をさらに発展させた12音技法に到達したのは1923年と言われる。
「グレの歌」はシェーンベルクがワーグナーやマーラー、R.シュトラウスの影響をモロに受けていた時期に書かれている。実際、マーラーの「嘆きの歌」に似た形の曲である。
聴いていても、実にフツー。
冒頭の美しい響きで、じわっと音楽に引き込まれる。全曲を通してロマンティック(でも、ロマンティックって何だろう……)。
曲は3部から成る。
編成はオーケストラのほかに、ナレーターと3組の合唱。独唱にソプラノ、メゾ・ソプラノ(またはアルト)、テノール2、バス。
物語の筋は、《ヴァルデマール王は侍従の娘トーヴェを愛し、グレ城に住まわせていた。ところが、そのことが王妃ヘルヴィッヒの知られ、嫉妬に狂った王妃はトーヴェを毒殺する。悲しみにくれるヴァルデマール王は神を呪うが、そのせいで天罰を受け、死後は悪霊となってしまい国中をさまよう。しかし、死後もヴァルデマール王を愛し続けるトーヴェの魂によって、王は救われる》、というもの。
チャンチャンッ!
ここでは、シャイーの指揮ベルリン放送響他によるCDを紹介しておく。
1985年録音。デッカ(輸入盤。国内盤は廃盤)。
カップリングは室内交響曲第1番と浄夜。
シェーンベルクの弟子に、ウェーベルン(Anton von Webern 1883-1945 オーストリア)とベルク(Alban Berg 1885-1935 オーストリア)がいる。
3人とも名前のイニシャルがAだ。
だからこの3人は“3A”と呼ばれたこともある。
3A(スリーエー)といえば、昔“AAA”というタバコがあった。
父親が吸っていた。
そのあとハイライトに替えてたけど。
はい、この話、発展がないまま終息。
ところで私は、中学のときに多肉に目覚めた。
いや、決していやらしい意味ではない。
かといって、太った女性が好みになったのでもない。
多肉植物、そしてサボテンの栽培に目覚めたのだ。
水やりもしょっちゅうしなくてすむし、あのニクニクしたところが私の心をとらえた。
特に好きだったのは、多肉植物ではアロエ属のもの。お気に入りはアロエ・ケイティとアロエ・ディコトマという品種だった。ディコトマ(和名は皇滋錦)の方は、今でも育て続けている。
サボテンでは、珍しくもなんともない品種だが、短毛丸が好きだった。毛は短い方がいい(言ってることがわかりません)。あの白い大きな花がまた美しい(あぁ、「サボテンの花開く」!)。
ところで、サボテンに花を咲かせやすくするには、ふだんからかわいがり過ぎないこと。
かわいがり過ぎると、その快適な環境に居残ろうとして、花をつけずに株元から仔を出して繁栄しようとする。いじめて育てると、その環境から脱出しようとして花を咲かせる。つまり種を作ってよそへ移動しようとする。よく外にほったらかしのサボテン(たとえば干からびた昆布のようなクジャクサボテン)が突然のように見事な花を咲かせるのはそういう理由、らしい。これ、大学で習った話である(似たような話、前にも書いたけど)。
人間の♂の場合はストレスによってタネが減少するらしいけど、そうだとすると植物とは逆ってことか……。それともストレス社会に子孫を残さないようにする防衛反応か……?
ほかには、やっぱ金鯱が好きだった。大きな金鯱が欲しかったなぁ……。
そうそう、何かの品種(柱サボテンだったはず)の変異種の“珍宝閣”というのも育てたことがあった(ウソじゃないって!)。
こういう品種は街場の園芸店にはもちろん置いていない。卑猥だから、いや、珍種だからだ。だから私は名古屋と西宮のサボテン業者から通販で買っていた(堀田千草園と山城愛仙園という店だ)。
サボテンや多肉植物を料金先払いの通販で買って育てる中学生。しかも、その中学生はクラシック音楽好き。
この2つだけで条件としては十分だ。
周囲が私に一目置くには。もちろん悪い意味で。
でも、あぁ、クラシック音楽を聴きながら、届いた箱を開けるあの充実した瞬間!
ということで、第900話、おめでとう!
ありがとう!
独り掛け合いで終わる……
新館入口(2014.6.22~)
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