柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺
この有名な句。
誰も、柿を口にするたびにゴォ~ンと鐘が鳴るとは思っていない。
不思議だ。
中にはひねくれて考える人がいてもいいと思うんだけど、おそらくみんな、柿を口にしていたときにたまたまちょうど鐘の音が聞こえてくる、ってちゃんと解釈してるんだろうな。
私がふとそんなことを思ったのは、高校の時の現国の時間に、先生がこの句について、柿を食べるたびにゴォ~ン、ゴォ~ンと鐘が鳴るって意味じゃないぞ、と余計なことを言ったのを思い出したからだ。こういう表現の仕方を何とかだと説明していたが、その用法の名前はすっかり忘れてしまったわい。
ということで、ハチャトゥリアン(Aram Il'ich Khachaturian 1903-78 ソヴィエト)の交響曲第2番ホ短調「鐘」(1943/改訂'44)。
この曲は独ソ戦でのソヴィエト人民の悲哀と怒りを描いたもので、全曲にわたり鐘が効果的に使われているために「鐘」と呼ばれているが、命名は作曲家自身によるものではない。
1942年の夏にハチャトゥリアンは手紙にこう書いている。
《私は交響曲に賭けています。もし人々が公正に判断してくれれば、必ず話題になるでしょう。もし認めてくれなくても、結局は今の時代のある種の記念碑として残ることになるでしょう》
また、「10年前に作曲した交響曲第1番が私の創作の初期の段階の仕上げとするならば、新しい交響曲(第2番)は、ピアノ協奏曲で始まった創作活動の時期を総括するものといえるだろう」とも述べている。
このころ、同じソヴィエトのショスタコーヴィチはというと、1941年に第7交響曲、'43年に第8交響曲と、彼もやはり“戦争交響曲”と位置づけされる作品を作曲している。
ハチャトゥリアンの交響曲第2番は、破壊行為への恐れ、警告、対抗といったものが入り混じったような、衝撃的な音響で開始される。
それに続く哀愁がある民謡調のメロディーは心を打つ。疲れた民衆の平和への祈りか。
第2楽章はスケルツォ楽章で、民族舞踊のような音楽。
金管が執拗にファンファーレ風に主題の断片を繰り返し吹くあたりは、まるで悪夢をみるたびに象徴的に現れる悪魔の誘いのよう。
第3楽章についてハチャトゥリアンは、「レクイエムのつもりで書いた。これは怒りのレクイエムであり、戦争と暴圧に対する抗議のレクイエムである。作曲にさいしては、子どものころ母が私に歌ってくれたアルメニア民謡の中の哀歌のテーマを使った」と、述べている。
これにグレゴリオ聖歌の「怒りの日」のメロディが加わり、葬送行進曲となっていく。
最後の第4楽章は金管のファンファーレで始まる。それに続くメロディーは、落ち着きのある喜びを讃えた堂々とした音楽。風格さえ感じさせる。
しかし終りに近づくと第1楽章の第1主題が対位法で絡み合ってきて、幸福の雲行きは怪しいものとなる。最後に警告のように鐘も現われ曲は閉じられる。
決してCDジャケットの絵のように、さあさ楽しくやってこーぜ、みたいな雰囲気にはならないのである。
そのCDだが、ヤルヴィ指揮ロイヤル・スコティッシュによる演奏。1991年録音。シャンドス。ただし、現在は廃盤のよう。
ハチャトゥリアンの交響曲は、同じく3曲の交響曲を残したラフマニノフに比べ、まだまだ聴かれる頻度が少ないようだ。
これは不思議である。
確かに「ガイーヌ」ほどの親しみやすさはないかもしれないが、ハチャトゥリアンの交響曲はとてもすばらしい。もっと聴かれるべきだと思う。
なお、浅田真央が演技で使っていた「鐘」は、ラフマニノフの作品である。
参考文献) ヴィクトル・ユゼフォーヴィチ著「ハチャトゥリヤン―その生涯と芸術」
(寺原伸夫、小林久枝、阿蘇淳 共訳)/音楽之友社
新館入口(2014.6.22~)
御多分にもれず参加中・・・
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