宮部みゆきの「鳩笛草(はとぶえそう)」(光文社文庫)。
表題作と「燔祭(はんさい)」、「朽ちてゆくまで」という3つの中編を収めたものである。
そのなかの「朽ちてゆくまで」
祖母の突然死をきっかけに、孫娘にあたる“自分”が持っていたある能力が明らかになる。そして、幼い頃に亡くした両親は果たして本当に事故死だったのか?
宮部作品、あいかわらず読み始めるとやめられない面白さだ。
この小説のなかで、“自分”は祖母がしまっていたベータのビデオテープが入った段ボール箱を発見する。
彼女の家では、いまやベータは再生できない。
そこで、近くのショッピングモールにあるビデオショップに持ち込み、VHSにダビングしてもらう。
私はここで現実的な問題を思い出してしまった。
VHSがかなり近い将来になくなってしまうのは間違いない。
わが家には永久保存版に匹敵するような貴重な映像を録画したビデオテープはそう多くはないが、それでも何本かはある。
将来的に見たくなったときのために(そんなに将来が残ってはいないけど)それをブルーレイにダビングしなきゃならない。
あぁ、面倒くさい。 それをさらに億劫にしているのは、もともと画像のよくない映像を(しかも3倍速で撮ったものの方が多い)、大量の時間をかけて、ずっと画像の良いブルーレイ、あるいはDVDにコピーするという逆転現象行為が、なんとも後ろ向きに思えるからだ。
あぁ、面倒くさい……
§
わが家の庭でバラが次々と咲きだした。
それにしても参ったというか、あるいは三文の得というべきなのか、今朝目覚めたのは3:40であった。
もっと眠っていたいと思ったが、我慢は20分が限界。2度寝に陥ることができず起きることにした。
なぜにそんな時間に目が覚めたか?
トイレに行きたくなった?
Non、である。
カッコウの声のせいである。
このところの暑さのため窓を開けて寝ているのだが、そのために外の音が部屋に飛び込んでくる。
かなり近くでカッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウという声が聞こえてきたのだ。
勤勉な小学生なら学校に行きたくなるだろう。
あまりにも近いため最初は、隣で寝ているはずの妻が托卵名人のカッコウにベッドから突き落とされ、私の隣でカッコウが鳴いてるのかと寝ぼけて思ったほどだ。
それにしてもカッコウ君、早起きだ。
先日、私と同年代の人と飲んでいたら、毎晩5時間くらいしか眠れず悩んだあげくに病院に行ったという。
そこの医者曰く、「あのね、それは歳のせいですよ。眠るということは体力を必要とするんです。歳をとって体力が衰えてくると続けて眠ってられなくなるのです。若い時はなんぼでも寝てられたでしょ?それは体力があったからなんですよ」
なるほど。
歳をとると眠ることさえ自由にできなくなるのか……
なにをやっても疲れるってことなのね……
さて、あのコンラッド・フェルディナント・マイヤーは、姿はトゲが荒々しい野性的なのに、花はとても美しく香りも良い。そのギャップがたまらない。毛深くて気性が荒いオランウータンの太郎が、実はメスだったって感じか。(← 全然違うな) うれしいから、また写真を2枚載せちゃおう。
バラの写真については、しばらくサボっていたけど、フォトアルバムの“My Roses”(左のサイドバー)で更新・掲載していく所存。
ということで、ディーリアス(Frederick Delius 1862-1934 イギリス)の幻想曲「夏の庭で(In a summer garden)」(1908)(「夏の庭園にて」という訳もよく使われる)。作曲者の妻の献呈された。
いかにもディーリアスという音楽。鳥たちの鳴き声を思わせる管楽器の音が、これから暑くなるぞと告げているかのように始まる。
そこから繰り広げられる自然賛美的音楽。あらゆるものが息づいているかのような世界!
このころディーリアスは健康を害していたが、そのような気配は音楽からは感じられない。
スコアには、以下のようなダンテ・ゲイブリエル・ロゼッティのソネットからの引用が記されている。
All are my blooms; and all sweet blooms of love.
To thee I gave while Spring and Summer sang.
《すべての花が真っ盛り。春と夏が歌っている間に、愛の甘い花のすべてをあなたに差し上げる》
頂戴、頂戴、くれくれたこら……
庭に椅子を置いて、バラたちを眺めながらかき氷を食べる。そういうときに聴くのにぴったりだ。
はい。
ウソです。
かき氷なんて食べたくありません。
良く冷えたサッポロ黒ラベルです。
CDは、マッケラス指揮ウェールズ国立歌劇場管弦楽団のものを。
以前にも紹介したディーリアスの管弦楽作品集である。
1989年録音。デッカ。
すまない。現在は廃盤だった……
さて、本日の記事は第974話目である。
なお、1000話目にあたっては、ご供花ご供物は固くご遠慮いたしますとともに、現金、商品券等の金券類についてはご遠慮しないことといたしますので、ご理解をお願い申し上げます。