54521868.jpg  皆さんは9歳のとき、何をしていただろうか?

 私は平凡な小学生だった。

 当時浦河町に住んでいた私は、のび太のようにやりたくもない草野球に駆り出され苦悩したり(なぜやりたくもないのに参加してやっているのに、エラーしたぐらいで罵られなきゃならないのか?)、学校の裏山に登ってウルシにかぶれたり、自転車に乗っていてドブに落ちたり、中田さんの座布団に怯えたりしていた。

 だがモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756-91 オーストリア)は違った。
 彼は1764年末、つまりまだ8歳か9歳のときに最初の交響曲を書いているのである。
 これはすごい。
 私は交響曲を書くどころか“薔薇”という漢字すら書けなかったのに、である(今でも書けない)。

 モーツァルトは家族とともに1763年の6月から3年半にもわたり、ドイツ各地、ベルギー、フランス、イギリス、オランダ、スイスを旅した。
 この旅行によってモーツァルト少年は各地のさまざまな音楽活動に触れ、大きく成長することになるが、交響曲が初めて書かれたのはロンドンにおいてであった。

 ここではヨハン・クリスティアン・バッハ、あのJ.S.バッハの末っ子が活躍していた。
 モーツァルトはこのJ.C.バッハから大きな影響を受けることとなる。そして、J.C.バッハの交響曲を手本にして自らも交響曲を作曲したのだった。

 J.C.バッハの交響曲(シンフォニア)は、イタリア式序曲から発展した形式に従っており、急-緩-急の3つの楽章から成る典型的なイタリア風交響曲。そして、このときにロンドンで作曲されたモーツァルトの交響曲には、この様式が反映されている。

 交響曲第1番変ホ長調K.16の、これからの輝かしい人生を予告するかのような明るく健康的な響き!(不健康で若死にしちゃうんだけどさ、結果的には)

 同じ年ごろのころ、ジャイアンもどき(中田さんの座布団で私を襲った奴だ)に怯えていた私とはえらい違いだ。
 私にはそのころの作文も残っていないし、「よげんのしょ」も書いた記憶がない。

 私が持っているCDはリンデン指揮アムステルダム・モーツァルト・アカデミーによる演奏のもの。
 2001年録音。ブリリアント・クラシックス。
 このCDは現在廃盤。

 なお、私がクラシック音楽を聴きはじめるきっかけとなった作品であるモーツァルトのK.107のクラヴィーア協奏曲は、J.C.バッハのクラヴィーア・ソナタを編曲したものである。

5c567d5c.jpg  昨日の土曜日は仕事でナシニーニ氏と岩見沢に行って来た。
 私の食に対する欲望(レーガーの100分の1くらいだが)を満たしてくれるべく、ナシニーニ氏は昼食をとる店を下調べしてくれていた。

 行ったのは酔月亭という割烹。
 いや厳密には割烹だったと言うべきなのかもしれない。現在は“食事処・酔月亭”となっている。

 御覧のようにかなり由緒ある建物。岩見沢消防署はかなり気にかけているかもしれない。もし燃えはじめたら、トムとジェリーの世界のように、あっというまに燃え尽きそうだもの。

 岩見沢市は周辺の炭坑によって、そしてそれらの輸送拠点としてかなり栄えた街である。国d284ae4e.jpg 鉄の駅はかなり大きかった(貨物(石炭)のターミナル駅で機関区もあった)。その当時、この割烹もすごくにぎわったのだろう。
 あっ、ほんのちょっと姿が写っているのがナシニーニ氏である。ナシニーニという名前だと、往々にして常に燕尾服を着ているような印象があるだろうが、このように庶民的な格好をすることもあるわけだ。

 この店のランチ・メニューは多岐にわたる。
 天丼、天そば、生姜焼きといった定番ものから、チャーハン、天津飯、中華丼といったチャイニーズ、寿司と私の純真無垢な子供心のようなランチ欲求をそそる(別紙で、AIR-G(FM北海道)とコラボしたという、スープカレーもあった)。チャーハンはなんと3種類の味がある。永谷園の素を超えるラインナップだ。

 しかしここの名物は「うなまぶし」だという。
084de760.jpg  「ひつまぶし」なのだが、北海道人になじみやすいよう「うなまぶし」にしたという。
 こういうところでウナギを頼むのはかなり勇気がいる。
 場合によっては(そうである場合が多いのだが)、クセがあってウェッっとなるような泥臭いウナギが出てくることがあるからだ。

 だが今の天皇陛下が皇太子だった頃にここでウナギを食べたという、由緒あるウナギらしい。“天皇が「おいしい」とおっしゃられた”とまでは書いていないところが、また正直で好感が持てる。そのウナギの貼り紙の上に無造作に貼られた「冷やしラーメン」のPOP(?)も素敵だ。

 注文する。
 「けっこうお時間をいただきます」という。
 「じっと待ちます」と答える。

 時間がかかるということは、ことウナギに関しては、絶対そうだとは言えないものの、きちんとさばくところから始めて調理しているという期待が持てる。
 すぐ出てくるようならスーパーで売っているパックか、紀文の冷凍食品である可能性がある。

 本当にけっこう待った。
d618fb0f.jpg  で、出てきた「うなまぶし」は想像以上に美味しかった。
 本当はおひつをかき混ぜる前に、店の人が去ってから写真をとりたかったんだけど、「ちゃんとかき混ぜて食べるってわかってるかしら」みたいな心配そうな目で私を見るので、かき混ぜてしまったのだ。ぐちゃぐちゃでごめん……

 岩見沢でこのように美味しいウナギにありつけるなんて思わなかった。
 もっともけっこう有名な店らしく、知らないのは私とナシニーニくらいだったのかもしれないけど。

 あぁ、チャーハンも食べてみたい。

 帰り際に聞いてみた。
 「夜はどのようなメニューなんですか?」
 「こちらのメニューのようになります」
 そこにはいわゆる居酒屋メニューが書かれていた。
 「夜にどうしてもチャーハンが食べたいって言ったらどうでしょうか?」
 「いいですよぉ!チャーハンでも中華丼でも、スープカレーでも、ウナギでも」
 「力強いお言葉ありがとうございます」
 「お待ちしてまぁ~す」

 私とナシニーニは今度は夜に来ようねって、あまり固くなく誓いあった。
 だって岩見沢まで飲みに行くのは……