118abc85.jpg  日曜日のことである。

 私は10時に予約していた床屋へ行き、パーマをかけた。
 2~3カ月に一度は前髪にパーマをかけないと、サランラップでぴっちりと包まれたおにぎりの海苔のようにボリュームも腰も若々しさもないへばりついた髪になってしまうのだ。やれやれ。

 家に帰り、繁茂しているミントにどうしようもなく耐えられなくなって(生い茂っていることと自分の髪の毛を対比したわけではない)、クソ暑いにもかかわらずガーデニング作業を行うことにした。

d627479b.jpg  もちろん先日の所ジョージのようにならないように、半袖短パンでの作業だ。
 日に焼ける、虫に襲われるといった耐えがたいリスクはあるが、熱中症で倒れるよりはましだ。パーマをかけたその日に死んでしまうなんて、パーマ代がもったいないではないか!

 ということで、伸びきって、中には花を咲かせようとしているペパーミントとパイナップルミントをカットした。まさにミントは雑草である。でも、ミントが地面を覆うと他の雑草の生育を邪魔するという話だから、そこそこ大切にしてあげなくてはならない。

 そうそう、大学生のときに野幌原始林に植物写真を撮りに行ったときに、野生化したミント(ジャパニーズミント=ハッカ)を発見したことがある。発見というのはオーバーでけっこう自生していたのだが、私たちはそれが何かわからなかった。ちょうど花をつけていたのだが、それ103a242d.jpg が茎をくるむようについていたので、「エリマキ草」とその場で簡易的に命名した。まったくアホな大学生だった。

 それはよいとして、クソ暑くてもミントをカットしていると、その清涼感あふれる香りでちっとも暑く感じない。わけがない。倒れるかと思ったわい。
 私の存在をまったく恐れずに、トンボたちが舞っている。私を仲間だと思っているのなら心外だ。
 それにしてもトンボはあんな乾燥肌のくせして、よく暑くないものだ。しかも、こんなときに倒立みたいなカッコがよくできるものだなと、感心かつ呆れてしまった。

 薄れゆく意識の中、ミントをカットしながら思い出したことがある。

 もう10年以上前になるだろうか?
 “由仁ガーデン”に家族で行ったときのことだ。
 子供たちはまだ小学4年と1年と小さかった。

 こんな児童にとってガーデンなんておもしろいはずはないのだが、あの頃はソフトクリームが食べられるぞという誘拐犯の甘い声のような言葉をかけるだけで、魔術にささやかれたように簡単についてきてくれたものだ。
 今と比べると隔世の感がある。今ならソフトクリームの器械を買ってやるといってもついてこないだろう。

 子供たちにはテキトーに散歩してろと言い渡し、私は庭園内をブラブラしていたら、女性係員が「これからハーブの剪定体験をしま~す!ご希望の方はこちらまでどうぞ!」と手を振りながら、いかにもこれからワクワクできますよというように叫んでいた。

 そんな体験が楽しいのだろうか?
 そのころからすでに自分の庭で暴れまくるハーブたちに閉口していた私は、こういう体験に喜びを見いだす人々にある種の羨ましささえ感じたものだ。
 だいたいにして、これは体験と称した、剪定作業の効率化、人件費削減である。

 さて、約束のソフトを食べさせなくては。
 長男はすぐに発見できた。
 なぜ自分がこんなところにたたずんでいなければならないのだろうという表情で、広大な芝の中央にボーっと立っていた。
 ところが次男が見つからない。

 しばらく探しまわると、いた。
 なんと、ハーブの剪定体験のおばさんたちの一行に混じって、鋏を手にしてレモンタイムをカットしてるではないか!
 アホかっ!
 どこにハーブの剪定体験をして喜ぶ小1がいる?
 だいたい、そんなことしたいなら、家の庭の手伝いをしろ!
 私はやり切れない気持ちになった。
 実際、由仁町にはヤリキレナイ川というのが流れているし。

 話は変わる。
 日曜日の夜、テレビからワルトシュタインが流れてきた。
 何かと思ったら、「トイレット」という映画の宣伝だった。
 なんだか、このベートーヴェンがとっても新鮮に耳に響いた。
 映画には興味はないが、きっと「トイレット博士」とは関係ないと思う。

696052a5.jpg   ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827 ドイツ)のピアノ・ソナタ第21番ハ長調「ワルトシュタイン(Waldstein)」Op.57(1803-04)。

 F.v.ワルトシュタイン伯爵に捧げられたためにこの名前がある。
 曲の始めから激しい楽想が繰り広げられ、ベートーヴェンの中期の作風の到来を告げる曲とされている。
 そしてまた、おちゃめでウキウキするような開始の曲でもある。

 私が持っているのはハイドシェックの演奏によるCD。
 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集で1967年から73年にかけて収録されている。EMI。