初めてジョアを飲んだとき、なんて変わった味なんだろうと思った。
のちにあんな女になるなんて誰も想像できなかったと思うが、歌が上手い田舎出身の素朴で純情そうな(でも、その故郷でけっこう遊んでいたことが女性週刊誌に暴露されたらしい)小柳ルミ子が「幸せ感じる朝ぁ~」とか何とかとCMソングを歌っていたころの話だ。
あれっ?1977年?
もっと何年か前、小柳ルミ子がデビューしたてのころのことだと思っていたら、ありゃ、もうけっこう純情そうじゃないじゃん。
初めて飲んだ、その味はマンダリン。
マンダリンダマンダリンダ……。いえ、何でもないです。
私は、ミカンともヨーグルトともいえない、その子供には痛々しい酸味と、あのニュルメッチョとした感触で、全然美味しいと思わなかった。
それにしてもマンダリンという言葉自体、ジョアで初めて知った。
当時はマンダリンとプレーンぐらいしか味がなかったんじゃないかと思う。
マンダリン……
山本リンダが逆立ちして「困っちゃうなぁ~ぁはん」と歌ってるような語感だ。
マンダリンダマンダリンダ……
それまで私が知っていたミカン系果物といえば、ミカン、夏ミカン、イヨカン、ハッサクくらいしかなく、またオレンジというのはミカンと同一のものだと思っていた。
オレンジとミカンは違うと知ったのはもっとあとのことだ。
マンダリンもミカンとは違うらしい。
マンダリン(mandarim)は中国原産のミカンの1系統で、温州ミカン型の欧米系ミカンだという。なんかややこしい。
中国の官吏のこともマンダリン(Mandarin)ということを知ったのは、クラシック音楽を聴くようになってからだ(バルトークの「不思議なマンダリン」)。
さらに、ジョアがまあまあ美味しいと思うようになったのは、ずっとずっとあと、大人になってからだ。社会人になってからは職場に売りに来るヤクルトおばさんにすごまれて、イチゴ味のジョアを毎日取っていたくらいだ(マンダリンはトラウマになってしまっている)。
さて、オレンジである。
今ではエードと呼ばれていると思うが、果汁がほとんど入っていないオレンジ飲料を昔はオレンジジュース称していたし、本当にオレンジのジュースだと信じて疑わなかった(少なくとも私と私の周囲は)。
バヤリース・オレンジ、リボン・オレンジ、プラッシーetc.etc……
これら瓶入りの“ジュース”をよく飲んだものだ。
そこで、今日はプロコフィエフ(Sergei Sergeievich Prokofiev 1891-1953 ソヴィエト)の歌劇「3つのオレンジへの恋(L'amour des trois oranges(The Love for Three oranges))」Op.33(1919/'21初演)。
プロローグと4幕10場のオペラで、台本はK.ゴッツィの同名の児童劇によってプロコフィエフが書いた。
オペラの筋は、「うつ病にかかった王子が、病状が回復すると王位をとることができなくなってしまう王子の姪の策略によって、魔女の呪いにかかってしまう。それは3つのオレンジに恋をするというもので、王子は砂漠に3つのオレンジを求めに行き、オレンジの1つから出てきたニネッタと結婚する」というもので、井上和男編著の「クラシック音楽作品名辞典」(三省堂)には「古典的喜劇の形式による基地と風刺にあふれた傑作」と書かれている。
でもここでは、1924年に改編された6曲よりなる組曲(Op.33bis)の方を。
歌劇そのものではなく組曲を紹介するのは、次の理由による。
ワタシハ、歌劇全曲をシラナイ。
「3つのオレンジへの恋」は、プロコフィエフがロシア革命後に祖国を離れアメリカで活躍していた時期に書かれた作品で(初演はシカゴで行われた)、もうバリッバリのカチッカチやでぇ~のギスギス音楽である。
全曲中で最も有名なのはオーケストラによる「行進曲」だが、これだってちっともオレンジっぽくない(さわやかとか甘酸っぱいという印象がない)。
私が学生の頃にエアチェックした90分のカセットテープに、管弦楽小品を集めて録音したものがあったが、この行進曲のあとにアルフォードの「ボギー大佐」を録音したばっかりに、いまだに南海ラピート号のフェースのようなイメージがあるプロコフィエフの行進曲のあと、頭の中で勝手にボギー大佐が流れ始めてしまう。 これはフニャラとなる。
相当やれやれだ。
困ったインプリンティングだ。
さて、組曲を構成するのは次の6曲。
1. 変わり者たち
2. 地獄の場面
3. 行進曲
4. スケルツォ
5. 王子と王女
6. 逃亡
私が持っているCDはウェラー指揮ロンドン・フィルの演奏によるもの。
1977録音。デッカ。
ただし現在は廃盤である。
新館入口(2014.6.22~)
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