bcda4b3f.jpg  サラリーマンの楽しみの一つは昼食である。
 まるで餌をついばむニワトリのようなあわただしい食べ方であっても、昼食は就業時間内で何にもまして充実した時間である。

 ときどき行く店で、新メニューとしてビーフカレーが登場した。

 ほほぅ。

 とりわけカレーライスが食べたいわけではなかったが、興味本位で頼んでみた。

 けっこう待たされた末に出てきたのは、マッシュルームも入ったカレーであった。なかなか手が込んでいる。

 一口食べてみる。

 うぅっ!な、なんと、こ、これはっ!

225d5a49.jpg  カレー・マルシェの味やないけ!
 ビーフとマッシュルームの……
 間違いない!

 いや、私はハウスのカレー・マルシェの味を否定するつもりはまったくない。
 レトルト・カレーとしては実によくできた商品だとさえ思っている。

 でもさぁ、こういう風に出されるとさぁ、なんかさぁ、騙された気になる。
 せめて、メニューに「ビーフカレー(マッシュルーム入り)」って書いてくれたなら、「おやっ?これはカレー・マルシェくさいぞ」と予感が働くし、それが当たったなら、むしろ満足感が得られる。

 あるいはウソでもいいから「あの名作、カレー・マルシェの味を追求し、ついに実現しました」とか能書きをたれてくれたなら、それは最高級のギャグとして受け入れられる。
 でも、これはいけない。

f6de91e9.jpg  たぶん、もうここではビーフカレーを食べない。仕事しながらどうしてもカレー・マルシェが食べたくてしょうがなくなったとき以外は……

 この体験談をナシニーニ氏に話すと、「カレーなら駅前通りのエッシャーという店が美味しいですよ。喫茶店なんですが、昼は客のみんながみんな、カレーを食べてます」と教えてくれた。
 そういえば、その名前の看板を見たことがあるような気がする。
 札幌駅前通りのビルの中にあったはずだ。

 でも、本当にみんながみんな、カレーを食べているのだろうか?コーヒーだけ飲んでいる人が1人でもいたら、ナシニーニ氏は嘘つきということになる。一方で、ナシニーニ氏が言うとおり、みんながみんな、カレーを食べていたなら、それはそれで、ある種不気味な喫茶店である。

 エッシャーといえば、絵の苦手な私が高校の芸術の授業でとち狂って美術を選択してしまい、その大失敗に苦悶しつつも、しかしながら美術室にあった本でエッシャーの版画を見たときには衝撃を受けた。
f1dfd8c8.jpg  すごいなぁと思った。

 では、喫茶店のエッシャーはどうなのだろうか?
 地下に向かって階段を下りて行くと、いつの間にか2階に出ていたってことがあるのだろうか?(写真上の「相対性」のように。ただし、その店が地下にあるのか1階なのか、私は知らないけど)
 水をいくらのんでも減らないのだろうか?(写真中の「滝」のように)
 あるいは柱がねじ曲がっているのだろうか?(写真下の「物見の塔」のように)

 そんなことはあるわけないが、喫茶店エッシャー、ちょいと興味深い。
 1人で行く勇気はないから、行くときにはナシニーニ氏に連れて行ってもらおう。

 エッシャー(1898-1792)の作品のなかで、私が最も好きなのは「物見の塔」である。
 
 上下で柱が入れ替わっていることに、初めて見たときには衝撃を受けた。下のベンチに座っている男が持っている立方体のようなものも、ありえない造りである。
 1階には王様がいるが、そういえば「トレヴィア~ン」と叫んでいた髭男爵はどこへ行ってしまったのだろう?

 マッシュルームといえばケージ(John Cage 1912-92 アメリカ)である。
 彼はキノコ・マニアだったんだそうだ。
 その理由は、辞書でmusicのすぐ前にある単語がmushroomだからだそうだ。
 やれやれ……

 そのケージのピアノ作品を。
 トイ・ピアノ、つまりおもちゃのピアノだが、その「おもちゃのピアノのための組曲(Suite for toy piano)」(1948)などの作品集がWergoから出ている。
 録音は1976~1989。
 どうお感じになるかは、あなた次第。
 少なくとも、レトルト感覚にはならないと思うが、満足するかどうかは微妙。