37efd793.jpg  クラシック音楽を聴き始めて1年ほど経ったころのことだと思う。

 何のレコードを買ったときか覚えていないが、ショップの店員さんが大きなポスターをプレゼントしてくれた。
 そのモノクロのポスターは、テオドール・グシュルバウアーがレコーディングしているときの、ラフな格好での指揮姿であった。

 私が買ったのはどう逆立ちしようとも間違いなくグシュルバウアーのLPではない。廉価盤の何かだ。でも、店員さんが私にこのポスターをくれた理由として以下の2点が考えられる。

 ① 私があまりにも美しい少年だったので、店のお姉さんが私とお友達になりたいがために、気を引くことを目的としてくれた。
 ② その店では、クラシック音楽のレコードなんて1年に平均で2.3枚くらいしか売れなく、ポスターが余っていた。余っていただけではなく、邪魔だった。

 なかなか解答の選択が難しい問題だが、おそらく②が正解である可能性が高い。

 私はそのポスターを部屋の壁に張った。
 物心ついてからの私の癖は、右の人差し指を鼻の下に添えるものだが(もちろん手の指だ)、グシュルバウアーもそんなポーズをとっていた。

0057bcad.jpg  さて、それから1年も経たないうちに、なんとグシュルバウアーが札響の定期演奏会に登場した。第144回定期である(なぜかこのときだけ、会場は札幌市民会館ではなく北海道厚生年金会館だった)。

 そのときのプログラムに載っていたグシュルバウアーの写真とプロフィールが上に載せたもの。あのとき35歳だったんだ。若い指揮者だったんだ。でも、今なら71歳かぁ。

 プログラムはウェーバーの「オベロン」序曲、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」、そしてブラームスの交響曲第4番であった。

 この日のプログラムにはグシュルバウアーによるモーツァルトの交響曲第40&41番のLPの広告も載っているが、彼は最近録音したこともあって(宣伝もかねて)この日の演目に加えたのだろう。
 それにしても、CD-4レコードっていうのがすごく懐かしい。さらに、TDK-SDのカセットテープ。私はこのテープを使ってエアチェック・ライブラ85f25498.jpg リーを増やしていったが、当時このテープは高級品の部類に入っており(なんせ「お求めはデパート、有名電気店……」と謳われてるもんね)、もっと安いテープの数の方が多かったが……

 この日の演奏がどうだったかは覚えていないが、私にとってブラームスの第4交響曲を聴いたのはこの夜が初めて。第1楽章の終わりのティンパニにしびれちゃったりしたが、ただそれだけではなく、お気に召したのだろう。そのあとすぐに廉価盤ながらこの曲のLPを購入している。

 ブラームス(Johannes Brahms 1833-97 ドイツ)の交響曲第4番ホ短調Op.98(1884-85)のCDでいちばん評価(人気)が高いのは、現在のところC.クライバー指揮ウィーン・フィルの演奏(1980録音)のようだ。
 でも、最近聴きかえしてみて、「んっ、これもがっちりしてていいじゃん」と思ったものがあった。
 ザンデルリンク指揮ドレスデンン・シュターツカペレ(ドレスデン国立管弦楽団)の演奏である(1972録音。DENON)。

332ae728.jpg  ブラームスの第4番は私にとって、今までのところ彼の4曲の交響曲のうちでは、1番とともに聴く機会が多い(逆に言えば、第2番と第3番はあまり聴かない)。
 第4番はどの楽章も素敵だが、特に第1楽章が好きである、私は。

 それも、マーラーの交響曲第1番第3楽章のカノン主題(民謡「マルティン兄貴(フレール・ジャック)」に基づく)に似た、表立っては鳴り響きかないメロディーがやたら気になる(譜例下線部。掲載スコアは全音楽譜出版社のもの)。
 なお、マーラーの交響曲第1番が(ブタペストで交響詩として)初演されたのは1889年のことである。

 この裏メロディー(?)、最初に出てくるのは第1楽章が始まって1分過ぎちょっと、ヴァイオリンによる高い音の目立った下降メロディーの背景鳴っているが、ほんと、最近はこのメロディーばっかり気になる。
 個人的な話で申し訳ないけど……(いつも個人的な話ばっかりか……)

  昨日はナシニーニ氏たちとの打ち合わせが昼近くまでかかったので、一緒に昼食でもということになり、ESTAの四川飯店に行った。タンタンメン定食(タンタンメン+ライス)に加え、麻婆豆腐を4人でシェアした(つまりこれで4人で行ったことが判明した)。そのせいで、夕食時になっても、ちーっともおなかが空かなかった。
 明らかに食べすぎだ。
 でも、美味しかった。ゴマは体に良いというし……

 なお、ナシニーニ氏は汁なしタンタンメン+小ライス(そして、麻婆豆腐1/4人前)を食べていたが、汁なしタンタンメンは非常に辛く、つらそうに咳き込んでいた。
 私は優しい目でそれを黙って見守るしかなかった。