【前回のあらすじ】
鹿児島に出張した私は、短い滞在時間にもかかわらず、“矢口るい”ちゃんなる見知らぬ女性から「エッチしたくならない?」などというメールを数多く送りつけられ、そのために“おろしにんにく”が大量に乗せられた黒豚串焼きを食べるのを遠慮した。
カノンである。
宮部みゆきの「人質カノン」に、なぜカノンがつけられているのかどうかは別として、カノンである。
「人質カノン」は7編の短編集だが、表題作の「人質カノン」はコンビニ強盗に遭遇する話。それが単純な強盗事件ではなく、殺人まで絡んでいたという話。都会の匿名的人間関係の怖さ……
それはさて、置いといて、
【カノン】
厳格な“模倣”による対位的書法、およびそれによる曲種をさす。カノンは、先行声部をある時間的間隔をおいて後続声部が追模倣することにより形成されるが、その模倣形態に各種のもの(平行カノン、反行カノン、逆行カノン、拡大・縮小カノンなど)があり、さらに模倣を開始する音程もさまざまでありうる。
バロック時代にはフーガの前身としての器楽曲にこの名があり、古くはフーガと呼ばれる。主題以外のメロディーに自由さが許されているフーガと異なり、カノンは旋律を厳密に模倣する。
カノンをわかりやすく言えば、「♪ 静かな湖畔の森のかげから~」という、あの輪唱である。ただし、輪唱の場合はまったく同じメロディーを追唱するのに対し、カノンの場合は上述にあるように、異なる音で始まるものが含まれる。
カノン、カノン、カノン、カノン、カノン……
カノン、カノン、カノン、カノン、カノン……
カノン、カノン、カノン、カノン、カノン……
ってわけだ。
マーラーの交響曲第1番の第3楽章はカノンが用いられてるし、バッハの「音楽の捧げ物」BWV.1079なんてカノンの宝庫だ。
カノンに似たようなものにリチェルカーレという、のちのフーガと関わりを持つものがあるが(バッハの「音楽の捧げ物」には2つの有名なリチェルカーレが含まれている)、リチェルカーレは目的や様式が明確ではない。後期のリチェルカーレはオルガン用のものから発達し、単一主題もしくは継次的複数主題が技巧的に処理される。
って、書いてる私が理解しきってないんだけどさ……
鹿児島の2日目は、10時前に先方(前日と同じ)に行って打ち合わせの続きをし、そのあとは空港連絡バスで鹿児島空港へ。
昼食は鹿児島空港の3階の“ふく福”という店で、黒豚うどん。それにオプションでいなり寿司を追加して食べた。私にとっては幸福モードになるメニューだ。福・福・福……
麺はさほど特徴的ではなかったが、汁は美味しかったし(北海道にはあまりない類の汁だった)、いなり寿司も大きめのサイズで満足。
そういえば、鹿児島空港って去年も利用したんだった。
そのときは南の島へ行く途中に乗り継ぎで使っただけだったが、確か3階のROYALで昼食を食べた(どこの空港にもROYALがある。全国統一的で安心感はあるけど)。館内の景色に見おぼえがあったのはそのためだ。
2階にある電飾広告(コルトン)、坂上二郎が写っている広告もひどく懐かしくて見入ってしまった。そのくせ、それが何の広告だったか覚えてないけど……
鹿児島といえば、いまから10年ほど前に取引先の方々と親睦旅行で来たことがある(私が鹿児島市内に行ったのはその時以来である)。
私はゴルフをしないので、たった1人別行動。
みんなは空港からゴルフ場の送迎バスで行ってしまい、私は1人、市内行きのバスに乗った。
その日の夜は霧島温泉に宿泊予定。
そのため、私は鹿児島からJRで霧島神宮駅まで旅した。
時間はたっぷりある。霧島神宮とやらを見に行こう。霧島神宮駅ってくらいだから、神宮に近いのだろう……
すいた列車で1人旅をしていると、桜島観光をレポートしに来た売れない芸能人のような気分になった。
霧島神宮駅に着く。
想像を絶するほど、私以外に降車する人が少ない。ほんとに観光地なのか?
駅前にはタクシーが3台。
さびついた看板が霧島神宮の方向を矢印で示している。ということは、近いはずだ。
私は歩いて行くことにした。
最初のうちは道もやや広く、歩道もあったが、やがて私を不安に陥れるには十分なほど道は狭くなり、歩道はなくなり、人家もなくなった。
秋だったが、スーツ姿では暑い。
やたらダンプカーの通行が多い。
スーツ姿で汗をかきながら、大きなカバンを肩から下げ、狭い道の端をダンプカーに遠慮するように歩いている私。すっごく悲しくなった。
歩いても歩いても着かない。
その上、途中、道端からカマキリが私の足に飛びついて来た。
カマキリは北海道にはいない(いるのかもしれないが、私は野生のカマキリを見たことはないほど、ほとんど生息していない)。
私はなぜこんな判断をしたのか?山で遭難する時ってこんな感じなのだろうか?
どれくらいの時間を歩いたかわからない。
道がちょっと広くなり、商店があり、バス停もあった。
あとどれくらいの距離があるのかわからないが、なんか恥ずかしくて店の人に聞く勇気がない。
バスの時刻表を見ると、なんと「霧島神宮行」とあり、あと8分で来ることがわかった。
私はバスに乗ることにした。100円玉4枚と50円玉1枚と10円玉が6枚ある。バス料金がいくらだろうと、これなら臨機応変にちょうどの料金を支払うことができる。
バスが来た。
乗った。
わずか4分で着いた。
あともう少しのところまで来ていたのだ、私は。
疲れ果てて、神宮をゆっくり見る気にもならず、無謀にも霧島温泉にまたまた歩いていこうと考えた私だが、そこはほれ、学習効果。
停まっていたタクシーに「どのくらい距離があるんですか?」と聞いたら、「すっごく」と言う。
結局、そのタクシーに乗って行くことにしたが、正解だった。
山の中のプチ峠道みたいなところは通るし、料金だって3,000円以上はかかったような記憶がある。
あのまま歩いていたら、道に迷わなくても宿に辿り着かなかったかもしれないし、実際には間違いなく迷っただろうから、消防団員の出動を要請するはめになった可能性が高い(ただし、私の安否を気遣ってくれた人がいたら、だが)。
私の悲劇を話すと、タクシーの運転手さんはとっても親切にその話を聞いてくれた。
鹿児島の人って良い人だ。
遠かった。神宮も、温泉も。
下調べしなかった私が愚かだった。
そんな思い出のある鹿児島……
さて、カノンとフーガの違いは何となくわかっていただけたかしらん?
モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756-91 オーストリア)の交響曲第41番ハ長調K.551(通称「ジュピター(Jupiter)」)(1788)の終楽章では、最初に現れる主題が、最後(コーダ)で二重フーガを展開する。
この曲はとっても有名だし(かといって、第40番の第1楽章ほどメロディーは広くに知られていないように思う)、感動的なフーガである(なお、この主題は「歴史的にみれば、古くから多くの作曲家が用いてきた主題」なんだそうだ)。
このフーガ、Wikipediaの「カノン」の項では、「(この部分で)カノンが効果的に取り入れられている」とある。カノンなの?フーガなの?と、私はまたまたよくわからなくなってしまう。
さて、この主題だが、モーツァルトは交響曲第33番変ロ長調K.319(1779)でも用いている。第1楽章の展開部に現われるのだが(掲載譜。このスコアは音楽之友社のベーレンライター版)、あのジュピター主題が出てくるとわかっていても、この部分にくると聴いていて「はっ!」とさせられる。
交響曲第33番は、はじめは3楽章構成の作品として書かれたが、1784-'85年に第3楽章のメヌエットを追加し、4楽章構成となった。
とても優しげな音楽で、モーツァルトの「田園交響曲」とも言われることがある作品である。
また、この曲の、メロディーが次々と登場する第4楽章は、ベートーヴェンが交響曲第8番の第4楽章のモデルにしたとも言われている。
私が聴いているCDは、コープマン指揮アムステルダム・バロック管弦楽団による演奏のもの(このCDは第25番のときにも取り上げている)。1987録音。エラート。
そうそう、冒頭に書いた“矢口るい”。
最初は「はぁじめまして~。矢口るいと言います☆」から始まり、「お返事くれませんね~サミシィ」、「おおぉぉい、返事して!もしかしてサイトが面倒とか?」などと続いた。なんでも彼女、本物のAV女優なんだそうだけど、本物のAV女優だから何だっていうんでしょうねぇ。
そして、「もしかして」じゃなくて、「サイトが面倒とか?」でもなくて、そもそもあなた誰?ってことなんですけど。
このメール、毎回アドレスが変わって送りつけられるため、拒否設定をどうしようかと思ったんだけど、ドメインで一部分共通するところがあって、携帯の設定案内を良く読むと、ドメインは部分一致で拒否できることがわかり、無事設定ができた。
なお、送って来ているのは、ラブマジック事務局なるところである。
恋魔術かい……
