昨日の北海道新聞朝刊に、アメリカ映画「コーヴ」に登場している北海道医療大学の准教授が、映像を恣意的に編集され名誉を傷付けられたとして訴えを起こしたという記事が載っていた。
しかしねぇ。
いやだねぇ、相手(出演者)を騙して、実際のやりとりとは違う内容で映画を仕上げるなんて。
イルカがどうこういう前に、こういうウソの内容の映画を作ろうっていう姿勢が、きっと映画の中身すべてが信用できないものに思えてしまう。
制作サイドの人々の思想、信念が正しい正しくない以前の問題……。ウソだらけの三文映画と思われても仕方ないのではないか?
まっ、もっとも私は、はなから観に行く気なんてないけど……
准教授、かわいそう(ほぼ、間違いなく、この准教授の主張は事実なのだろう)。 それはともかくとして、ヴァイル(Kurt Weill 1900-50 ドイツ→アメリカ)の舞台音楽「三文オペラ(Die Dreigroschenoper)」(1928)。
ヴァイル(ワイルと表記される場合も多い。ワーグナーとヴァーグナーと同じだ)は、第1次大戦後の新即物主義を代表する作曲家で、現代社会批判と風刺を盛り込んだ俗うけする音楽で人気を博した。
ブゾーニに師事し、劇作家のG.カイザーと、そののちB.ブレヒトと組んで作品を発表し、とりわけ「三文オペラ」は大ヒットした。
その「三文オペラ」は、ペープシュが作曲した「乞食オペラ」の台本(J.ゲイによる)を、B.ブレヒトとE.ハウプトマンが改作、実質的には全面書き換えとなったその台本に、ヴァイルが新たな音楽をつけた。乞食、盗賊、娼婦などの“下層の人たち”と警察権力を対比させて、社会の矛盾をあばいた歌芝居である。
もとになったペープシュ(Johann Christoph Pepusch 1667-1752 ドイツ→イギリス)の「乞食オペラ(The beggar's opera)」は1728年に初演された3幕から成るバラッド・オペラ。
バラッド・オペラというのは18世紀にイギリスに興った通俗的な内容の劇で、歌は民謡や俗謡(バラッド)の編曲。「乞食オペラ」の登場人物は、乞食をはじめみな下層民である。
「三文オペラ」の編成はピアノと2本のクラリネット(またはサックス)、2本のトランペット、トロンボーン、リード・オルガン、打楽器、バンジョー(またはギター)という、ジャズ・バンドのようなもので、実際、ジャズの手法が多く盛り込まれている。
「三文オペラ」を書いたヴァイルに大きな影響を与えたのがストラヴィンスキーの「兵士の物語」であった。
1923年6月にフランクフルトで行なわれた「兵士の物語」のドイツ初演を観たヴァイルは、師・ブゾーニに宛てて、「一種の〈歌や踊りの付いた民衆劇〉というべき作品、パントマイムとメロドラマと道化芝居の中間にあるようなものでした。この種の劇が許容する枠内で、非常にみごとに構成されており、道行く人々への嗜好への目配せさえも、それが主題に適しているという点からすれば、がまんできるものです」という手紙を送っている。
その5年後、ヴァイルはブレヒトとともに、この手紙の内容に見合った「三文オペラ」を生み出す。
「三文オペラ」は、センセーションを巻き起こした舞台作品となったが、先に書いたように、これはちょうど200年前の、この作品の下敷きとなったジョン・ゲイの台本による「乞食オペラ」の成功の様子を再現したものである。
「三文オペラ」は驚異的な成功を収め、“三文フィーバー”という言葉が生まれ、また、“三文ケラー”というカフェまで開店したという(店内でかけられるレコードは「三文オペラ」からの選ばれた曲に限られた)。
さて、今日は「三文オペラ」そのものではなく、これから編曲した8曲からなる組曲を。曲名は「小さな三文音楽(Kleine Dreigroschenmusik)」(1929)。
私が持っているCDは、Gerd Muller-Lorenz指揮Munchner Rundfunkorchesterの演奏によるもの。
他の収録曲は、「ヴァイオリンと吹奏楽のための協奏曲」他。
2000録音。ORFEOレーベル。
参考:ロバート・P.モーガン編 長木誠司監訳 「音楽の新しい地平」:音楽之友社
(「西洋の音楽と社会」⑩ 現代Ⅰ)
コメント一覧 (2)
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- December 04, 2010 19:56
- 最近別の方のブログで十字軍に関する記事を読む機会があって、はたと気づいたのです。
The Coveも、イスラエルに行って宗教的目的の毛皮の使用をやめるように言ったパメラ・アンダーソンも、言ってみれば十字軍と同じじゃないかと。
自分たちの信念のためには長い伝統も他宗教も無視して信念を押しとおすところが。
よその国でどんぱち始める前に、自分の国のレクリエーショナル・ハンターたちに食って掛かればいいのに(その方が旅費も少なくてすむし)。どうせ仕返しが怖くて自分の国のことには手出し出来ないか、最悪、「かわいい鹿とかムースとか」ならどこにでもいるから「少しぐらい殺されて」「壁の飾りになって」も構わないと思っているのだろうとかんぐっちゃいますよね。
アメリカには中国で食卓に上る犬を助けようとする団体もあるけど、「だまし討ち」の映画は作ったことないですよね。もっと地道に活動しているみたいですね。NatGeoチャンネルで見ただけですが。
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© 2007 「読後充実度 84ppm のお話」
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私はこういう自己中な活動家に軽蔑の念を覚えちゃいます。きっと何か金儲けにつながるものもあるんでしょうね。