毎日シバレてる。

 それでも、天気予報によれば今週後半は少し暖かくなるらしい。少しってどれくらいかというと、最高気温が2℃とか3℃になるという程度。それでも、「おぉ、あったかくなるわい」と気持ちが前向きになる(ような気がする)。

 「しばれる」というのは、北海道人なら至極当然のように使うが方言であることは間違いないらしい。意味は「すっごく寒い」ということで、縄を結ぶそれなりの技術を有しているという意味ではない。

 その「しばれる」から語感からも曲調からも思いつくのがシベリウス(Jan Sibelius 1865-1957 フィンランド)の交響曲第1番ホ短調Op.39(1899)。

908aea1d.jpg  番号としてはシベリウス最初の交響曲であるが、第1交響曲作曲の前の1891~92年には「クレルヴォ交響曲」が書かれている。
 さらに、「クレルヴォ交響曲」のあと、第1交響曲が作曲されるまでに交響曲の作曲構想があったようだが破棄されている。

 第1交響曲の着手は、ベルリンでベルリオーズの幻想交響曲を聴いたことがきっかけとなっているという。幻想交響曲を聴いて感動したシベリウスは、すぐに交響曲の作曲にとりかかったのである。

 ところでこの曲に関しては印象的な出来事が、私にはある。
 1990年。
 この年、第1回目のPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)が開催された。

 そのなかの、ロンドン交響楽団の演奏会。指揮はバーンスタイン。
 メイン・プログラムであるシベリウスの交響曲第1番が始まった。
 クラリネットが最初の陰鬱ともいえるメロディーを吹き始める。
 そのときである。
 ステージ後列の最上段に並んで座っていたホルン奏者のうちの1人が、椅子から転げ落ちるように倒れたのである。
 演奏はストップ。
 バーンスタインがステージのそでに向かって「Docter!」と叫ぶ。へえ、けっこう低い声だ。そして落ち着いたもんだ。そう思った。

 楽団員はいったん引き揚げ、間もなく救急車のサイレンが聞こえ、そして止まった。
 外の音がこんなにホールの中まで聞こえるんだ(そのときの会場は北海道厚生年金会館)、と思ったが、考えてみれば、外から中までのドアが開放されていたのだろう。

 演奏再開となったとき、別なホルン奏者がいたのか、1人欠けたまま演奏されたのかは記憶が定かでない(でも代わりの奏者が加わったに違いない)。
 噂によると、倒れたホルン奏者、大事には至らなかったようである。

 交響曲第1番はチャイコフスキーやボロディンなどの影響がみられるというが、ここに流れ出てくる音楽は間違いなくシベリウスでなければ生み出せなかったと言えるものである。冷涼感、閑寂の雰囲気……こういうのが北欧的というのだろう。

 4つの楽章からなるが、特に終楽章はドラマティックで感動的である(と私は感じる)。ついでに言うと、第2楽章で弦による切ないメロディーに応えるクラリネットのメロディーを聴くと、私は「どこまーでも行こう」と歌われていた昔のタイヤのCMソングを思い出してしまう。

 今日紹介するのはザンデルリンク指揮ベルリン交響楽団による演奏のCD。
 危なげのない安定した演奏。しかし、けっして面白みにかけるというものではない。けっこうな名演。
 1976録音。ブリリアント・クラシックス。